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機械ストリートへようこそ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 目の前には、乱雑に積み上げられた死体の山がある。彼らには、「弔う」といった感情が無いのだろう。後でTO DOリストに付け加えとかなければ……

作業中の研究員一人に順調か? と問いかけてみれば「順調です。やはり難しいですけどね」と返ってきた。


 その言葉を聞いた私は、彼らに任せても大丈夫だろうと判断し、早めに研究所から出かける事にする。

D庁のマスコットキャラクター【雲D】。これからの、この社会において重要な存在になる筈だ。

 私は、先ほど出来上がったSDカードをポケットにしまい、これからの未来に心をときめかせた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それではっ!境ちゃんのお仕事発表です!」


と私を指差した社長は「人探しを頼んだよ!」と言いながら、私のフードを引っ張る。一つ、二つ物を手渡されたり、行き先について教えて貰う。


「境ちゃんが探して欲しいのはこの人ね」


引っ張られながら、何もない所から現れた扉をくぐり、見知らぬ地に立つ私は、社長から一枚の紙を渡された。

渡された紙には【ソイ・ポリス】という名前の少年が描かれていた。小学校三年生くらいの歳だろうか、まぁ私より若いって事だ。


「ざっくりと経緯を話すと、【ソイ・ポリス】は死亡したんだけど、見てくれの通りで、まだ若いでしょ? だから転生させたんだけど、なんだかんだで本体は生きてたっぽくてね。魂抜いちゃったから、本来の【ソイ・ポリス】の代わりに別の転生予定の人の魂を押し込んだってワケ」


「なるほど、第一任務は転生失敗した後処理って事ですか」と返すと、社長は手厳しいね、まぁそうだけど、と苦笑いをした。


「一応、追跡は埋め込んで、監視しているんだけど。転生して、今のソイを名乗る子、色んなとこを行ったり来たりしてるんだよねぇ」


考えるポーズの社長は、くるりと回ると「私はこれでも多忙だからね、境ちゃんよろしく頼むよ」と言った。

 どう考えても昨日入ったばかりの新入社員に押し付けるべきではないような仕事を押し付けた。

彼女は深碧のトランクケースから、便利ロボットかのように、扉を取り出すと、「では、宜しく頼む! 境ちゃんがするべき事を終えたら、自然と帰り方が分かるよ」と消えてしまった。


 という訳で、機械たっぷりの都市に一人取り残された私は、いま、何が出来るかを考える。

この都市……レディ・メトロに来る前に社長から手渡された物があったことを思い出した。


>フォチャを取り出した。


変形型スマートフォンであるフォチャは、フリック操作をすれば、銃だとかに変形させられる……らしい。

試しに、ホーム画像にある銃アイコンをフリックしてみる。


ガッシャン


フォチャは無事に銃に変形できたようだ。取り敢えず使い方は大丈夫そうだ。

社長から手渡された時に、おっちゃんさんが「操作方法説明しなくて大丈夫かぁ? 」と心配してくれたが、現代っ子は環境の変化に強いのである。

銃は物騒なので、形態を解除し、次は電話マークをフリックした。

電話リストには、社長、西園寺さん、おっちゃんさんが載っている。多分私の世界のスマートフォンと同じで、ボタンを押せばいいのだろう。


 さて、誰に掛けようか? 社長は掛けて答えてくれるくらいなら、置いてかないしと却下。西園寺さん……よりおっちゃんさんにしてみよう。そうしよう。


プルルル


「もしもし。昨日入りました、新入社員の灰被です」

『あー、嬢ちゃんか。元気か? 』

「一応元気ですけど……」


おっちゃんさんの方から、慌ただしい声が聞こえる

『ミスター、任せましたよっ』『生きてダリーン! 私、貴方、まだ生きる』


「そちら側の方が大丈夫じゃなくないですか、なんかすみませんでした。西園寺さんに掛けます」


人命がかっているところの邪魔をしたか? と思い、西園寺さんの所をタップしようとしたが、おっちゃんさんは「いや、大丈夫だ。おい、右に曲がるぞ。戸鍵っ、俺達は先に行ってるからな。取り敢えず、話してみな。俺先に事務所出ただろ? 社長あんま説明せずに放り出した気がして心配してたんだよ」と電話を切らずにいてくれた。

それでは遠慮なく。社長に人探しをいきなり頼まれ、見知らぬ町に居ることを伝える。異世界の異世界なんて、私、死んだりしません?とも。


「嬢ちゃんが死んでも、また転生させるだけになるんじゃねぇの? 今の体がいいなら、俺が行くしか……おい、アンタ扉閉めろ!来てるぞ 」

「いや、死んでも転生させてくれるならいいです」

「なら問題はねぇか。社長の能力はチートって話は今日しただろ? 」


welcome to your world……でしたよね、と返すと合っとるよ、と返ってくる。


「嬢ちゃん世代だとこの表現の方が分かるかな。その中に未来視ってヤツも入ってる。お嬢ちゃんに出来ねぇ事はウチの社長は任せない。あと、あの能力にはちょっと制約があってな、これは帰ったら、西園寺から聞けばいい」

「制約? 」

「あぁ、ざっくりな所だけ、話しとくか。社長が関与する事で、不都合が起きる場合は、社長のタイトルの効果が弱まるんだ。旦那さん、あとちょっとだ。頑張れよ。だから、社長が放り出すような形になったんじゃねぇかな」

「なるほど。取り敢えず、私なりに頑張れば良いと」

「そういうことだな」

「おっちゃんさんありがとうございます。ご武運を祈ります」

「おうよ」


切るまでの間も、向こうの慌ただしそうだった。「ダリーン頑張る」「ダーリンって呼んだげな、そっちが正しいぜ」と聞こえてきた。再度、彼らのご武運を祈っておこう。


ガチャリ


戦力を得られた訳ではないが、今の状況を把握できただけでありがたい。

普通の異世界転生ならここで慌てるのかなぁ、異世界転生物は一個しか読んだことないけど、とぼんやりと思った。

取り敢えず、死なないらしいし、冒険みたいな形で楽しみつつ、任された事、私に出来ることをやろう。


「その為に、取り敢えず歩こう! 問題解決には足で稼がなきゃ」

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