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【ようこそ灰被姫さん】


【ようこそ灰被姫さん】


さて、あの角で逃げ切れば、撒ける筈 !


 絶賛交通事故に合いかけている私は、全速力で車から逃げていた。


(いや、これうっかりひいちゃったレベルじゃないよね!?)


角を何度も何度も曲がっても追い付いてくる青いトラック。

真後ろを走る車は、確実に私を殺りにきている。


「あー! 今日は運勢最下位の日だったんですかね!」


悪態をつきつつ、走る走る。目の前に自宅の門が見えた。

先へ手を伸ばそうとした時、私は足元の石ころに躓いてたせいで……トラックへ轢かれた。


「あー、社長? 目的の子を轢いたからね。後はよろしく」

『オーケイ。ナイス任務完了、清掃員くん』

「はいよ」


頭上で何かやり取りが交わされているが、生者の話など、私には関係ない。

 死んだのは運が悪かった、また来世に期待ってヤツだ。





 プツリと意識が途切れ…………た筈だった。


「う、うん? 私生きてるっぽい? 」


ベッドの上に寝ていた私は、ぐっと伸びをする。視界に映るのは、病院でもない部屋だ。

青を貴重とした部屋……これが病院だったら怖すぎるな。青って気分を落ち着かせる効果もあるが、落ち込む可能だってある色だった……筈。


「社長? 例の子。お目覚めみたいよ、早くどかして頂戴」

「あらま、れーちゃんは手厳しいね。おはようお姫様」


気づかなかったが、部屋の中には人が居たようで、いつの間にかベッドの横に一人立っている。扉の前にも一人。キザな事を言った人はベッドの横の人。


横に居る人の服装は……


薄緑のワンピース、真っ白のエプロン。

一番目立つのは、真っ赤なフード付きのケープ。


童話から出てきたような格好。そんな彼女は、くるりと回ると私にお辞儀をした。


「初めまして、フィン・スーです。私は、異世界運送屋の社長だよ」


君は私が呼んだんだ。あんな方法で呼んで悪いね、そう言うとフィンさんは、片手に持っているトランクケースからティーカップを取り出した。「病み上がりだもんね、まぁ飲んでみなよ」と勧められる。カップの中身は、見た目からして紅茶っぽいが。


「何の飲み物ですか」

「うーんとね、今日の紅茶はね」

「……アールグレイだったでしょ。初めまして、私は西園寺零歌。よろしく……はしたくないわね。まぁ、この会社で受付やってるわ。それじゃ」


青い部屋から秒で出ていった西園寺さんという人は、ピッチリとまとめた髪型に赤い口紅が特徴的だ。後、赤い服も。バスガイドみたいな服装をする受付ってちょっと派手な気もするが、仕事が出来そう。そんな感じの印象だ。

あ……この紅茶、美味しい。

ティータイムに浸っていたいが、この状況は、よく分からない。私はどうして呼ばれたのか聞こうとすると、横からノックの音が響いた。


「こんにちはー。せっかく立ち寄ったので挨拶でもと」

「スーちゃん、スーちゃん。四葉くん来タ?」


扉から、香ばしいパンの香りと共に二人の女の子達が入って来た。フィンさんが彼女達に声をかける。


「やぁ、シニ子とマッチちゃん。仲が良くて何よりだよ」

「な、なんというか……珍しい名前ですね」


シニ子? マッチ?

……最近話題のキラキラネームなのかもしれない。というか、マッチってどうやって漢字に書くんだろうか? なんとか珍しい名前という感想に留めれた私に、マッチさんは慌てた。


「えぇとですね、フィン様が付けたあだ名で、マッチという名前ではないのです」

「スーちゃん、特殊なあだ名付けるから、参考にしちゃダメだよっ!」

「えー、普通だと思うけど……」


異世界運送屋社長(仮)を気安く呼ぶこの人もとても気になるが、まずはマッチさん(仮)の名前を聞かなくては


「マッチさんの名前は?」

「町ひつじです。初めまして」

うん、これはわからない。


「呆れちゃうくらいデショ?でもそこがスーちゃんの面白い所だよネ」

「私もそう思いますよ。ところで、よかったらこれをどうぞ。元気になりますよ」


香ばしい香りは、町さんの籠からだったみたたいで、籠から一つパンを取り出すと、私にくれた。

ソーセージパン、中々食べる機会はないが、私が好きなパンだ。はむはむと楽しんでいると、唐突にシニ子ちゃん(語尾カタカナさん)からビシッと指を突きつけられる。いや、私、何かしたか?あ、頂きます言ってなかった。成る程、それか。


「明日の天気予報は、50%で死です!みたいな生き方してるネ!貴方が死んだら、私に教えてよ、視てあげるからっ!」


どうやら、頂きますの言葉ではなかったようだが、うん? なんで初対面の人に、私は死を望まれているのかな……聞かなかった事にしよう……


「シニーちゃん、その言い方はビックリしちゃうよ。この子、シニーちゃんの世界は知らなそうだよ?」


違うんですよぉー、と町さんが私に謝った。シニーちゃん(仮)もごめんネ、と素直に謝ってくれた。じゃあ今度、貴方のセカイ? ってやつ教えて下さい、と返すといいヨー、と元気に返事をしてくれた。

シニ子さん(仮)の長い金髪の髪の毛から、小さな幽霊のなりそこないみたいなのも『ソウダナ』と返してくれたが、この人はペット扱いでいいのだろうか? そう聞く前に、フィン社長(仮)が「もぉー」と彼女達に仁王立ちをする。


「そうそう、この子は、今ココに来たばかりで、自分の世界の事しか知らないんだ。まだまだ勉強する事、山盛り大盛なんだからね、帰った帰った」


しっしっと彼女達を扉へと追いやったフィンさんは、あぁそう、と何かを思い出したようだった。「しばしば くん。また天使にヒットしたって落ち込んでたよ」と付け足すと、二人を扉へと押しやっていった。

お勉強中に失礼しました。またお時間がある時に改めて挨拶させてくださいね、と町さん。

死に時は教えるんだゾ!と……正式名称を聞き忘れてしまっていたシニ子さん(仮)は扉から帰っていった。


社長(仮)のフィンさんは、彼女達をやっと追いやった、やれやれ、と肩をすくめた。

くるりと私に向き合う。


「さて、説明をしなくちゃね。


Q:ここはどこだろうか?

A:ここは、異世界です。キミが生きてた世界ではないよ。でもこの世界はちょっと特殊。他の異世界へと渡り歩けるんだよね。


Q:私が、キミに頼みたい事は?

A:一つ、君自身が体験したように、異世界から異世界へ人を放り込んで欲しい。もしくは、異世界へ転生した人のその後を見守って欲しいんだ」


二つの説明をしてくれた彼女は、そういえば、異世界転生って分かる? 私は、しばしばに教えて貰ったんだけどさ、と私に聞いた。

自身は人が死ぬミステリーが好きなので、異世界転生やチート系の小説はあまり読まないのだが、言葉の意味や最近流行りの無痛転生などは知っている。

……私も無痛転生が良かった。取り敢えず、知っています、と返した。

異世界転生、なるほど。町さんの「シニーちゃんの世界」というのは、そういう事か。どうやら、この場所はイマ流行りの異世界と繋がっているようだ。まぁ、女の子の頼みは聞くもので、


「私でよければ、喜んで」


答えを聞いたフィンさんは、トランクケースから万年筆を取り出す。


「その答えを待っていたよ」


ウィンクを決めた社長さんは、彼女が持つ、ピンク色の万年筆をくるりと回す、高級そうなソレには、ハートの宝石がついており、先から光が溢れした。


私の身体が淡い光へと包まれる。大昔に見た戦闘系ヒロインの変身シーンみたい。

光が解けた後、



 私は、灰色のワンピースと社長と色違いのような、灰色のフード付きのケープに真っ白のエプロン。灰被り姫……シンデレラを模したであろう服を纏っていた。


>これからの着るべき服を手に入れた!


灰被 境、死因:衝突事故、異世界運送屋職員 へとジョブチェンジした瞬間である。

似合うねーと言った社長さんは、ふと考える仕草をした。


「誘っといて、『その答えを待っていたよ』って言う私が言うのもなんだけどさー、こういう異世界転生って『転生ビックリしました!』っていうのがセオリーなんじゃないの? 境ちゃんは、落ち着きすぎでは。まぁ異世界転生物とか、職業的にリアルすぎる! とか、こんな異世界転生ありえない! ってツッコんじゃうから、私は、読まないんだけどね。でも、境ちゃんが、混乱してたらさ、私は『この物語はフィクションです。君との出会いも嘘なんです。だからキミが布団から起きたらこの夢も覚めるかもしれないし、覚めないもしれないよ』って宥めるつもりだったんだよ」


あとねー、あとねー、と更に話し続けようとする社長を止める。


「私も異世界転生物は読まないので、何がセオリーかは知りませんってのと、布団から覚めるかもしれないし、覚めないかもってどっちなんですか」

「それはどっちかってことだよ。シュレディンガーキャットってヤツなんだよね」


一ミリだけ合ってる単語に、はぁ、と思わず溜め息を返すと、社長さんは、一ミリも気にしない様子で「じゃあおやすみー、境ちゃんの部屋はこっちね」と私の部屋を指差して出ていった。この部屋の上の階の部屋らしい。


 私が轢かれた15時から1時間も立っていないんですが……まぁ、大変な事があったから早く休みなよね! という気遣いかもしれないと思い、素直に従う事にする。

私は環境に、どんどん適応していくタイプなのだ。高校生の時に勤めていたアルバイト先の最後の出勤日もシフトが終わると、いつも通り、すぐに帰った。去る者は追わずなのだ。


まぁ、異世界転生(仮)をして、出会った社長さんといい、シニ子さん(仮)といい、個性が強い人が多そうだ。

つまり……


この物語は、様々な異世界の人たちと会う。


そんな感じの物語である。

書きたい時に書いたら七万字程増えたが、好きな話しか書いてないから一話だけ投稿することにしました。

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