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悪魔の林に眠るもの

お題「林」

「なぁ彰、『悪魔の書』って知ってるか?」

「何だそれ」

 補修仲間の浅間にそんな話を持ちかけられたのは、社会の補修終わりのことだった。定期テストの終わり、担当教師の古賀に頼まれてノートを運んで戻ってきた補修会場で、彰はそう首をかしげる。

 そういえば、今回浅間は補修メンバーに入っていなかった。彰と同じく補修常連の浅間が、今回会場にいなかったのは『悪魔の書』とやらが関係しているのだろうか。となると、興味がわくのは確かだ。

「それって今回の補修」

「お~。これさえあれば、テストもバッチリ!の優れモンだぜ」

「マジかよ!」

 『助かった!』とばかりに目を輝かせれば、浅間は口角を上げる。

「よっし、じゃあ行こうぜ」

「おう」

 浅間の誘いを断るという選択肢などは見つからず、意気揚々とその背に続いた。



 浅間の背を追ってたどり着いたのは、今はもう潰れている園芸部が部室にしていたというプレハブの倉庫だった。林の近くにある倉庫は、昼間でも薄暗い。

「え。鍵は?」

「いいから」

 そう言って浅間はスマホにつけてあった葉の形をしたストラップを鍵部分にかざす。浅間が扉をスライドすると、スムーズに扉が開いた。

「ほら、これ」

 浅間はそのまま倉庫の中に入り、本棚の中から一冊の本を取り出す。

 『The Book Of Devil』

 そのタイトルの本からは青臭い香りがした。浅間はその本を開くと、所々破られているそのページを自らもちぎった。

「ほらこれ」

「え。あ・・・」

 ちぎられたそのページを彰に渡すと、浅間はもう一枚ちぎってそのページをポケットに入れる。

「これ、どうするわけ?」

「それを勉強する前に部屋で燃やすんだよ。そうすると、集中力がアップするんだと」

「へぇ」

「だまされたと思ってやってみろよ。今回は俺、それでテストクリアしたから」

「ふーん」

 その言葉に曖昧に頷くと、彰もその葉をポケットに入れた。



「じゃあ俺、この後和田達とゲーセンだから」

「おー。行ってら~」

 そう言って、浅間は彰に背を向ける。

「うわ!」

 そんな悲鳴が上がったのは、浅間が歩き出したときだった。

「おい、どうした?」

 慌ててそちらに目を向けると、浅間の前には古賀と大型シャベルを掲げたねじりはちまき姿の男が憮然として立っている。

「古賀先生?」

 訳が分からず問うと、古賀は作り物めいた笑顔を浮かべて彰を見た。

「や。さっきぶりだね。本橋くん」

「あ。はぁ・・・」

「さっき、林にあるプレハブ小屋で何してたの?」

 そう聞かれても、彰は明白な答えを持っていない。

「浅間に誘われて、遊んでただけっす」

「へぇ」

 それだけ答えると、古賀に目線を向けられた浅間が「ひっ」と小さく息をのんだ。



つづく


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