第十八話 幻覚じゃない
急に闇深い回
ガクガク震えていた膝が地面に着く
景色は変わることなく 楽しそうな人たちが往来し続けていた
「嘘だろ、、、、」
魔法の影響による苦しさと無力感に抱かれ 地面に四つん這いになる
足に力が入らない 入れようとすることができない
赤いカーペットがクシャッと歪む 動悸が激しく 意識を失いそうだ
「幻覚じゃ、、ないのかよ、、」
呼吸を整えようとする 身体が思うように動かず 脂汗が額を濡らす
どこかで味わったことがある感覚だ
こちらの世界に来てからではない もっと日常的な事象
『幻覚じゃないとしたら』
幻覚に似ていて
身体が思うように動かず
空間が歪むもの
頭に電流が走る
1つ 思いついた
「もし、、そうだとしたら、、」
次の瞬間には 打開策が頭に浮かんでいた
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「、、、明らかにおかしい」
「、、、?どうしました?エルさん?」
どこか不安げな声で 隣の骨人が話しかけてくる
「宰相の様子が、先程からおかしいんだ」
先程まで『疾走』や『加速』のようなワードが多く読み取れたのにも関わらず 今は『繰り返し』や『ループ』の頻度が多くなってきた
「しかも外、、さっきから静かじゃないですか?」
アンナの言う通り 獣人が攻めて来た時の砲撃音や爆発音 けたたましい足音はいつの間にか聞こえなくなっており 耳をすましても 静寂だけが空間を埋めていた
「『繰り返し』、『ループ』、、、?」
しばらく頭を抱えるが なんの事だかさっぱり分からない
「私も、外へ行きましょうか」
アンナのその声には普段に似つかない真剣さがあり 本気なのだという覚悟が伝わってきた
「いや、まだ危ない、しばらく様子を見よう」
私はそれを行かせようと思えず 抑制した 抑制された本人は少し寂しそうな顔をしていた
「もう危険な目には、、遭わせたくないんだ、、」
ボソッと呟く
その声が届くことはないだろう
「今は、あの青年に任せるとしよう」
アンナが腰に手を当て 理解出来ないというように話し出す その声には明るみが戻っていた
「エルさんは、どうしてあのコにそんなに目をかけているんですか?確かにあのコの『器』は凄まじいけれど、当の本人はエルさんの胸の中で泣き出すくらいですし」
少し嫉妬を混じえた声だったところに 少し魅力を感じたが 表情には出さず会話を続ける
「確かに、彼の性格は少しアブナイところがあるが、彼には可能性を感じるんだ、この世界全体を揺るがすような、そんな可能性がね」
椅子に腰掛け直し 宰相とのテレパシーを挟む 依然届いてくるイメージに変化はない
「それに、母性をくすぐられて少し楽しかったよ、たまにはああいうのもいいものだね」
「そういう所はエルさんの方がアブナイと思います、、」
どこか呆れたような そんな声での返答だったが その声に悪意がないことを知っているので 優しく微笑んで返した
「まぁ、エルさんがそう言うってことは、可能性があるってのは確かってことなんでしょうね」
「まぁ信用に足る人間かは、これから見極めるさ、あくまで『期待している』だけだからね」
アンナはほっと胸を撫で下ろし
「それを聞いて安心しましたよ、、」
「それに、、彼なら、、、」
そう言いかけて口をつぐんだ
アンナがどこか悲しげな雰囲気になったのが 横目で分かった
「私たちには、私たちの『夢』があるんだ。そのためなら、彼を、、、」
殺す
と
その感情を押し殺すように
再び宰相とのテレパシーに戻る
彼なら 彼ならば
この闇を 打ち払ってくれるだろうか
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凄く 凄く嬉しいです、、、、これからもどうぞよろしくお願いいたします!更新頻度は考えさせて下さい()