第十二話 ガイコツ
おねむ
ピタリと
音の動きが止まる
恐怖で目を瞑ったまま、手を前にかざしたまま
直立してカタカタと震えがっている自分を
闇と静寂だけが取り巻く
「キミ、誰だい?」
静寂を切り開くように 声が聞こえる
その声音から性別が判別できず 恐る恐る目を開ける
目の前にいたのは
学校などで見かける骨のみの人体模型そのものだった
「うぉっ!?」
思わず情けない声を上げて後ろに尻もちをつく
その場でたじろいでいると 『また』手に何か硬いものが当たる感触がある
「おいおい、、、まじかよ、、」
そこにもまた 同じようなガイコツが意志を持ったかのように その場に寝転んでいた
「汝は誰だ?」
ガイコツが起き上がる 背丈だけ見るならばかなり高めだ 180はあるだろう
話し方を変え また声が聞こえる
「こ、これは『聞こえる』というより、、」
「我が問うておるのだ、答えよ」
完全に ガイコツ自身が喋っていた
すると 最初に話しかけてきたガイコツが こちらにガシャンガシャンと近づき 馴れ馴れしい口調で話し始める
「正体不明の人を、放置することはできないんだ〜、もう1回聞くよ、君は誰だい?」
話し方には少しウリンと重なる所があったが その声音には多少の緊張感があり すぐに仲良くはなれそうになかった
ガイコツが話しているという驚きと恐怖 ようやく慣れてきた と思っていた異世界の常識の違いへの適応も
意識と共に 消え去ってしまった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あー、、、も、、し、、」
また 意識失ったのかよ
情けねぇな
2?3回目?分からないな
「おーい、もしもーし」
声がハッキリと聞こえる 負傷した訳ではないことが過去の経験から分かった
そうと分かれば先手必勝と思い 脳内で何か強いもののイメージを沸かせようとする
ベシン
「痛っ」
突然額に衝撃が走り 思わず飛び起きてしまう
「やっぱり起きてんじゃーん」
飛び起きた先のすぐそこに 先程のガイコツがいた その距離僅か10cm
当然ビビる
「ひぃっ!?」
「そんなに露骨にビクビクしないでよ、傷つくよ?まぁ傷つく体は骨しかないんだけどね〜」
なんとも反応しづらいジョークをかまされ 口をポカンと開いたまま ガイコツから視線が離れない
すると ガイコツは俺から視線(目はない)を外し 大きく息を吸い込んだ(肺もない)
「リサさーん、起きましたよー!」
誰かを呼ぶかのように ガイコツが大声をあげる
手をメガホンのような形にして口に当てる動作など 細かいところまで全て生きている人間の動作にしか見えなかった
「これは一体、、」
「驚いたかい?」
突如 どこか艶めかしい声が聞こえる 絡めつけるような声音の どこか寂しげな雰囲気の声だ
「ありがとうアンナ、大変だったでしょう?」
「いえいえ〜、リサさんのためなら私は何でもできますよぉ!」
「うふ、それは頼もしいわねぇ」
その会話だけ聞けば 人と人とのコミュニケーションであり 会話であり その内容に笑えるだろう
しかし目の前にいるのは
艶めかしい姿の女性と 一体のガイコツなのだ
「とりあえず、おはよう、かな?」
整えられた長い茶髪のストレート
天女の羽衣のような 薄いキャミソールらしき服
大きく空いた胸元に 目が行かない男性はいないだろう
足は長く 太すぎず細すぎず 男が求める理想のような大人の女性が 今俺に話しかけてくる
「反応しない、ってことは、私との会話を拒否する、ということかな?」
少し当たりが強いような発言を聞き 思わず発言をする 対話が始まった
「あ、あぁ、少し混乱していた、すまない」
無難な回答 少し頭が痛んだ
「それもそのはずだ、私としたことが、失言だったかな」
「いや、俺の方こそいきなりシカトかまして悪かったと思ってる、悪いな」
「しかと、、?まぁいい」
その話し方がまた艶めかしく 興奮を覚えるような より警戒してしまうような 複雑な気持ちが胸中で交差した
「俺は今、人を探しているんだ」
これが 俺と『女帝』との出会いだった
『女帝』で察したあなたはきっと占い好き
ご意見、ご感想はいつでも受け付けています!ぜひぜひよろしくお願いいたします!