第十一話 ガシャンガシャン
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まだ少し痛む足を動かし 城内を散策する
『この魔法と薬があれば、足の痛みは一時的に結構治まるはずさ』
そう言われ 足に謎の魔法らしきものと 数種類の木の実のようなものをすり潰したスライム状の液体を塗られた
前の世界とは治療法の違いが大きく 少し困惑したが もう慣れたのか 効き目がかなりあったからか 理解するのにさほど時間はかからなかった
『私どもはまだ負傷者の手当がありますので、一緒には行けませんが、また体調が悪くなればいつでもお越しください』
去り際に医者にそう言われ 胸が熱くなった 人の優しさが 胸に響いた
『お前なんか、いらねーよ』
前の世界の記憶が蘇る こちらへ来てから意識することが無くなっていた
忘れようと していたのかもしれない
「、、あれ、ここどこだ」
いい記憶と悪い記憶を交互に反芻している間に 俺は見知らぬ扉の前にいた
というか付き添いもいないのにこんなだだっ広い城下町の中で1人の少女を見つけるなど かなり骨が折れるだろう
一手遅い後悔を噛み締め とりあえず俺はそのドアをあけた
「おーい、誰かいるか?」
ドアの先に灯りはなく ただ闇が広がっていた 次第に目が慣れてきたので 俺はその部屋へと足を踏み入れた
「おーい、誰でもいい、いたら返事をくれ」
部屋全体に呼びかける しかし応答はない
しばらく部屋を進んでみると 部屋自体がかなり広いことが分かった 本棚のようなものもあり 咄嗟に白衣の少女が思い出される 本が好きそうだな と勝手な想像をする
すると 部屋の先に 僅かではあるが灯りがあった ロウソクか何かに火がついているのだろうか 灯り自体はかなり小さく 今にも消えそうだ
「やっぱり、誰かいるんじゃねぇか、、」
安堵したような落胆したような気持ちになり 灯り目指して前進する
ゴツン
ふいに 足に何か硬いものが当たった
思わず躓いてしまうが なんとか転倒せずにすんだ
だが元々足が痛いため かなりのダメージを受け しばらくそこからは動けなかった
「っつ〜!、危ないな、一体なん、、」
自分が躓いたものを拾おうとする
そして後悔する
そこにあったのは他でもない
頭蓋骨に似た いや 『似た』ではない
頭蓋骨 そのものだった
「うぉっ!!?」
突如 身体中に寒気が走る
ここにいてはいけない
身体の細胞一つ一つがそう喚いていた
来た道を戻り 入り口のドアへと全力疾走する 足の痛みなどお構いなしだ
すると 後ろから ガシャンガシャンと 何か硬いものが動く音が聞こえた 本能で
「追いかけてきている、、?」
そう分かった
「はっ、、はっ、、」
気にならないとはいえ 足のダメージはまだまだ健在
「ドアまでたどり着ければ、、、」
あと10メートル
5メートル
3メートル
後ろからガシャンガシャンという音が確実に迫ってくる
「ちくしょう、、何でったって俺がこんな目に、、」
ガシャン
ガシャンガシャン
2メートル
1メートル
手が ドアのノブへと触れた
「やった、、!」
ドアを開けようと ノブを回す
ガチ
ガチガチ
「回らない、、?」
何かで固定されているかのように
ドアの向こうで誰かが抑えてるかのように
ドアノブが回ることは無かった
その絶望を追うように 後ろからガシャンガシャンと絶望が迫ってくる
開かないと分かった以上 次の行動に移るしかない
ベルク戦を終えて その判断ができるようになった
「つっても、ヤケクソしかねぇ!」
手を前に差し出す 頭をフル回転させる
魔法しか ない!
何を出す?
強いもの?
強いものってなんだ?
意思?そんな感情的なものではない
武器?仮に出たとして使えない
また魔術?金平糖なんて役に立たない!
「ああああああ!!」
恐怖や混乱 その全てを払い除けるかのような雄叫びをあげる
ただ天に全てを任せる判断だ
当たるがどうかさえ分からない
ガシャンガシャンと言う音は
すぐ目の前まで来ている
勉強シマース