第十話 いい人
300pv、、、!感謝感激雨あられ!
「ウリン、、、?」
ベッドから起き上がり ウリンに手を伸ばそうとする
その手から逃げるかのように ウリンは椅子から立ち上がり 隣にいた医者らしき人に
「私はこれで」
と呟き 部屋を出ていってしまった
その姿を追おうとして立ち上がる
『立ち上がる?』
足が あった あの時 確かに失い 歩けなくなっていた自分の足が しっかりと2本 地に着いていた
「病み上がりなのですから、あまり無理はなさらないでください、まだ完治した訳ではないですし」
医者はそう俺を諭し ベッドへと座らせた
医者が 看護婦らしき人から何かの紙を受け取った
「ええと、、まずあなたの病状をですね、」
「そんなことはいい!まず、ウリンも無事だったのか!?」
迫るような勢いで聞く 医者が仰け反るようにして驚いた表情になる
「え、えぇ、瀕死だったあなたを、この医務室まで連れて来てくれたのは、他の誰でもないウリン様ですから」
おどつきながらも 医者は大体の状況を話してくれた
まず 城下町に獣人がたくさん攻めてきた 衛兵や町の魔術師などが貢献し 負傷者は出たものの 死者が出ることは無かったらしい
なぜ獣人が攻めてきたかは 誰も聞き出せなかったそうだ
それについては 俺にだけ心当たりがあった
そして ついに獣人たちは城の中まで攻め込んできたが 城内から獣人のボスらしき者が落下し 獣人達に撤退の流れができた
これは恐らく ベルクのことだろう
城内の獣人はウリンが1匹残らず追い払い 怪我人を魔力で治療し あなたが負傷者の最後の1人だ
と言われた
「なるほど、、でも、、なんであんな逃げるように、、」
俺が最後 ということは 別の負傷者を治療しに行った訳でもないのだろう
「あんなに苦しんでいたのに、無事な訳があるか、、?」
考えれば考えるほど 疑問が浮かび上がってくる
「とりあえず、まずは会って話さないと、、」
もう一度ベッドから立ち上がろうとする
ズキン と鋭い痛みが走った
「っっつ、、」
「だから言ったでしょう、あなたは見つかった時点で足がちぎれてたんですよ、正直、ウリン様がいなかったら、今頃どうなっていたか、、」
やはりあの時足は無くなっていて 夢うつつだった時に聞こえた声も 俺を治療してくれているウリンの声だったのだろう
「お礼も言えてねぇのに、、」
「大丈夫ですよ、会う機会はまたあります、なんせこの城下町に共に暮らしているのですから」
あぁ、と返事をしたが その返事が声になったかは分からない
何か もっと大事なことが隠れている そんな予感がした
ベルクやウリンの苦しんでいる顔が脳裏をよぎる
「やっぱり、もう1回会ってみないと、、」
「ところで、あなたは一体どこの出身ですか?この城下町内に家族や友人はいますか?」
「あぁ、いや、いない、俺はその、旅人だ、この町に立ち寄った時に、運悪く獣人に絡まれてしまったんだ」
とりあえず嘘をついて誤魔化そうとした
いきなり異世界から来た とか言って警戒され ウリンと会う機会を剥奪されたくなかった
異世界について無知なのに『旅人』とかいうワードを咄嗟に使ってしまった こんな嘘が通じるだろうか
「そうでしたか、、それはお気の毒に、、」
全然通じた
「でも、それにしてはウリン様と仲が良かったような、、」
「あ、あぁ、彼女とは、、その、旧友というか、、」
「ウリン様と旧友、、、?」
医者に加えて 周りにいた看護師までが神妙な顔をする まずい 嘘がバレてしまっただろうか
すると 怪しむような表情から その顔は 心から安堵したような表情へと変わった
「おぉぉ、、ウリン様に、旧友とはいえ友達が、、、」
思っていた反応とは違う反応が返ってきた 訝しげな反応というより 感動しているような 咽び泣くような声すら聞こえた
「あのウリン様に、ちゃんとした友達がいたんだわ!!」
聞く人によっては悪口にも聞こえるワードが看護婦から飛びだしたが その声音に悪意はなく やはり感動している という感情の方が多く感じた
「是非とも、、是非とももう一度ウリン様と会ってください、、会って話をしてあげてください、、」
涙を目に浮かばせた医者から懇願される
なんだか大変なことになってしまった
なぜこんなにもウリンに友達がいることに感動しているのだろうか 分からなかった
だがウリンと話をしたい自分としては好都合だ 支援をもらいながら ウリンに会いに行ける
でも なんだか
この人たちは いい人なんだろうな
そう思った
優しい人とか心情って 書いてて安らぐので楽しいです
ご意見 ご感想はいつでもどこでも受けつています!是非ともご意見を寄せて頂けると嬉しいです!