駆逐コンビの戦闘③
全て作戦通り。
とまでは事が運ばなかったが、大凡予想していた通りの結果である。
ジェネシスを囲むプレイヤーの大半は混乱しているか、戦闘不能に陥っている。それが何を意味するかと言えば、混乱に乗じてキルを重ねていくと言う事だろう。
となれば話は簡単だ。この場にいるプレイヤー全員を虐殺する。それも完全無欠の勝利と言う形で、だ。
全プレイヤーとかち合うよりも、遥かに簡単で簡略的な状況へのシフトに、ジェネシスは思わず喜びの声をあげる。
「ッシャア! ナイスだァ、くノ一!」
「それほどでもありません。それよりもそちらは大丈夫なんですか!?」
「ハッ! 天下のジェネシス様を舐めてもらっちゃ困るなぁ! こちとら日頃からあの最凶とやりあったンだ! この程度の雑魚如きで手間取るようなタマじゃねェさ!」
「随分と言ってくれるじゃないか……」
ジェネシスの大声に反応したのは、やはり先ほどまでジェネシス殺り合っていた金髪の剣士だ。
彼は憤怒を表情に滲ませて、先ほどよりも剣を持つ手が力強く感じるのは、おそらく勘違いではないだろう。
それを視界に入れたジェネシスは、彼の怒りを嘲笑うかのようにゲラゲラと笑い惚ける。
「ガハハハッ! 悪ぃな名前も知らない金髪剣士! こちとら2人で手一杯なんだわァ! おちおちテメェの相手なんてしてらんねえんだよ。わかれバカがよォ!」
「キサマ……! キサマには拳闘士のプライドはないのか!?」
「ないね」
怒りの言葉を口にする金髪剣士に一言だけ。
中指を立てて言い放った。
「俺は勝つために此処に来たんだ。味方が俺含む2人だけってのは、あまりにも少ねェだろうがよォ。なら、プライドなんてのに構ってる暇なんざねェだろォ?」
「…………」
かつて最強と呼ばれたプレイヤーの、悪童のような言葉とは思えない悪戯な発言に、金髪の剣士は唖然と口を開ける。
すぐに我に返ったかと思うと、金髪剣士は剣を構え直す。ジェネシスとの対話は無用と踏んだのだろう。口を一文字に引き絞る。
それを見たジェネシスは、ニヤリと唇を釣り、ニヒルに、そして不敵に笑う。
「皆殺しだ。弱ったまんまかかって来いよ、クソ雑魚共ォ!」
大叫声。あるいは大強制だ。
アヤメが落とした岩によって、かなり減らされたHPのままジェネシスに挑む他なく、しかし敵方のジェネシスは岩落としを予想していたためHPがほぼ満タンに近い。
PSの高いジェネシスに挑めば、完封されて終わることはほぼ間違いないだろう。
クソゲーここに極まれり、である。
「――う、うァああああああ!?」
プレッシャーに耐えかねて、一人のプレイヤーがジェネシスへと斬りかかる。
しかし力任せに振り下ろすのではなく、一切の無駄も隙もない姿勢だ。
しかし、だ。
ザシュッ、と生々しい音がプレイヤーの背中を貫き、HPゲージを濃い赤で染め上げ減らす。
急に力が入らなくなったのか、ジェネシスへと斬りかかったプレイヤーは地面に倒れ、背中に刺さったクナイに目を向け、やがてそのクナイを投げた犯人に目星を付ける。
「――私、忘れられてます?」
頬をぽりぽりと掻いてアヤメが首を傾げる。
そうだった。
ジェネシスの迫力に隠れていたが、彼女も敵方のプレイヤーだった。
「カーバック。ジェネシスは任せます」
「御意に!」
修道女はカーバックに指示を振ると、自分は背後の絶壁の上に立つプレイヤーに視線を配る。
その視線に気付いたのか、アヤメは自分と目を合わせようとする修道女に目を向けて、にこりと無駄にイケメンな爽やか笑顔を返した。
「おや。私の相手は貴女ですか?」
「ええ。お待たせさせてしまったようで、申し訳御座いません。では――殺し合いましょう」
慈悲深い笑顔を浮かべ、修道女は笑った。




