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元最強プレイヤーは【魔法】を使いたいそうです。  作者: 光合セイ
第二幕 虚数の先に待つのは何か
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運気0の虚数魔導書庫⑤

 燃え盛る炎によってボスゾンビは焼かれ苦しんでいる。見ていて可哀想な光景なのだが、どこまで行ってもゾンビはゾンビだ。同情の余地無し。即刻駆逐せよ。

 とはいえジゼルではチビチビダメージを与えていくのが関の山だ。だから与えられた役割は囮。【スピーダー】をバフしまくった脚に、さらに【スピーダー】をバフって駆け回り、剣でチクチクと刺してダメージを与えていく。

 ダメージ自体は少ないが、それでも前衛という役職がいるからか、釣られて目が動くボスゾンビのヘイトは自然とジゼルへ集まり、魔法を行使する魔女への警戒心が薄くなる。


「すごいわね……」


 さながら蝶のように舞い、蜂のように刺すジゼルの姿は、魔法使いというよりも、手練れの魔法剣士のようだ。『水瓶の鍵杖』を持っているけど、実は魔法剣士が本業なんじゃない? と魔女が疑問に思うのもやむなしだった。

 しかし会って間もないというのに、ジゼルと魔女のコンビネーションは完璧だ。完璧すぎるほどに完璧だ。

 魔女にヘイトが向きそうになったらジゼルがボスゾンビの垂れている目を突き刺して行動不能にし、ジゼルが溶解液に当たりそうになったらすかさず魔女が魔法を放って守る。


 ヒット&アウェイが得意なジゼルと、ジゼルよりも火力の高い魔法を使える魔女がいるからこそ出来る連携を、二人は瞬時に脳内で割り出して行動に移す。

 ――つまるところ、二人はどちらも適応能力がずば抜けているのだ。

 片や【魔法】を選んだ剣闘士。片や魔法を使い分ける魔法使い。凹と凸が揃っているからこそ為せる業。才能と技能が合わさるからこそ舞える演舞。

 意識内で脳髄のうずいを刺激するほど興奮する、型がはまった闘いに魔女は気分を高めていく。


「ふふ……少し、本領を発揮してみようかしら……」


 その一言が引鉄トリガーとなった。


「『ロックオン』」


 DEX補正スキル。すなわち命中精度を高めるだけの――ただの照準器(サイト)

 ――けれど、追尾する魔法を使えば、その力は天元突破てんげんとっぱを成し遂げる。


「――その炎は永遠トワに連なり

 その羽は自由を示す。

 ソラに瞬く炎の鳥は

 神鳥となって平和を救済す。

 幾星霜での蘇生を遂げ

 その真体しんたいの片鱗を我が前に現せ」


 小声で紡がれるは魔法の呪文スペル。高等魔法を使う時にのみ用いられる魔法の詠唱。システムが魔女の言霊を汲み取り、炎を生み出して神鳥の形を模す。


「【フェニクス】」


 スキル『高等魔法(火)』を習得したら使えるようになる火属性の高等魔法。使用者の指先から発せられる火の塊が、火の鳥となって自ら敵に突貫する追尾魔法。

 本来なら避けられて壁が天井、もしくは地面に当たって霧散するのが常だが、追尾する魔法には裏効果があり、DEXが高ければ一度や二度、霧散しても霧散した火の粉が集まって形を取り戻し、再度追尾を始めるのだ。

 【フェニクス】が形を取り戻すその姿は、まさしく不死鳥。死んでも死なず、再び甦る『再生』の象徴となる。

 【フェニクス】が当たった部分から倒れていき、ボスゾンビは地面へと堕ちる。



 ――逃してはならない。



 ジゼルは直感で感じ取った意志を頼りに、倒れたボスゾンビへとオレンジの魔力光オーラを纏った右手をかざす。


「【アースウォール】!」


 地面から盛り上がる土塊が円蓋(ドーム)となってボスゾンビを囲う。本来であれば『味方の被ダメージを半減させる』効果を持つだけの防御魔法なのだが、【アースウォール】には『閉じ込める』能力もあるのだ。

 起き上がろうとするボスゾンビを、頭から押さえ込み立ち上がらなくする。


「今です!」

「【インフェルノ】」


 地獄の底から這い出てきた地獄の業火が、ボスゾンビを地から焼き貫いた。炎柱が突き抜ける円蓋の中で苦しむボスゾンビのHPゲージは、だんだんと次第に削れていき……ついに空っぽになった。


「ゥ……ア゛アアアアア!」


 呪いと怨恨が込められていそうな雄叫びとともに、ボスゾンビは光の粒子(ポリゴン)となる。

 吐き出される安堵の息とともに、事態は展開は収束を迎えた。



《『機動行動』を獲得可能になりました》

《『中級魔法(炎)』を獲得可能になりました》



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