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【完結】元最強プレイヤーは【魔法】を使いたいそうです。  作者: 光合セイ
第二幕 虚数の先に待つのは何か
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運気0の虚数魔導書庫③

 ハムスターのように頬を膨らませ、空洞のように大きな口から放たれる異色の溶解液。ジゼルは横へと回避するも、溶解液が当たった場所は、ジュワァ……と妙にリアルな音を立てて溶けている。

 溶解液には『腐食化』のデバフが付与されていた。

 『腐食化』というのは、その名の通り腐らせるデバフのことで、顔に当たれば即死。胴体に当たれば毒のようにじわじわとダメージを与え、脚に当たればAGI値ダウンの効果が付与される厄介なものだ。


 ジゼルのVITならばどこに当たっても即死。そもそも攻撃を受けてはいけないという鬼畜ゲーが繰り広げられていた。


「【スピーダー】! 【スピーダー】! 【スピーダー】!」


 アバターを一時的に敏捷値極振り状態にする。魔法の照準は定め難くなるが、今回ばかりは仕方ない。止まっていたらゲームオーバーに等しいのだから。

 しかし逃げているだけでは終われない。このボスを倒さなければボス戦は終わらないのだから。


「……ここだ!」


 跳びながら左手をボスに向けて【ファイアボール】を放つ。ボスのHPゲージがほんの少しだけ赤く変わって4ミリほど削れる。


「たったそれだけ……っ!?」


 即死とは行かないまでも、良いダメージは入ると予想していた攻撃が、まったくダメージが通らなかったことに動揺する。

 ジゼルの使える魔法の中で最高火力の魔法で、しかも相性が良い属性の魔法だったはずなのだが、削れたのがたったの数ミリだったのだ。

 となると、やはり火力が圧倒的に足りない。


 飛来する溶解液をすんでのところで横へと転がって躱す。


「【ファイアボール】! ……【ファイアボール】!」


 ただでさえ少ないMPを絞って、2発の火球を生み出して放つ。火球はボスゾンビの眼球へと突き刺さるが、減っているゲージは見た目通りの火力ではない。

 制限時間はない。頼れる【ファイアボール】の消費MPが10で、ジゼルの現在のMPは102。50回復するポーションの数は6本。MPが1回復するに必要な時間は1分。放った回数は3回。頼れる【ファイアボール】の最大装弾数はおよそ40発。

 ボスゾンビのHPを削りきるには、ギリギリどころか全然足りない。2割削れるくらいだ。


「クッ……!」


 1発。また1発と着実に火球を当てていく。しかし削れていくのは少しずつ。


「ダメ、か……」


 MPを尽くしても勝てない。だったら、あとはもう諦めるしかないじゃないか。ジゼルが目を閉じようとした。――その時だった。



 教会内に豪雷が轟き、ボスゾンビを押し戻(ノックバック)した。


「大丈夫?」


 扉の方から声をかけられた。


「は、はい……。あ、貴女は……!」

「あら、あの時の子じゃない」


 魔法かスキルかわからないが、漆黒の球体をふわふわと浮かせたとんがり帽子の魔女だった。



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