運気0のレアスキル
アヤメを落ち着かせるためにフレンド申請とついでにパーティ申請をして、妙に高い忠誠心のせいで荒ぶった心を落ち着けてもらった後。
「それで我が主はなんの話をしていたんですか?」
「いや主って……」
「もういいじゃんジゼル。諦めなよ」
「何で私なの……はぁ、もういいや」
アヤメからの呼び名が『主』で固定してしまったことに諦めて投げ槍になりながらも、アヤメの質問にジゼルは答える。
「運営からもらえるスキルを何にしようか考えてたんだよ。魔法使いの使えるスキルが無くってさ……」
「ほう……」
ジゼルが見せる紙切れを覗き込んで、何と言えばいいのかわからないのか苦笑いを浮かべる。
「これは……」
「うん。何も言わなくてもいいよ。言いたいことはわかってるから」
「私が欲しいと思ってしまうスキルばかりですね……取らないのですか?」
「取れないよ。魔法使いだもん私」
「……魔法使い?」
「こう見えてこの子、魔法使いなんだよ。どう見ても剣士っぽいけどね」
ジゼルのことを剣士職だと思っていたのだろう。一瞬の間の後――
「――剣士ではなかったのですか!?」
「……私が剣を使うのが上手いのは認めるよ。面倒くさいし。でも使うのは、いざという時だけだから」
「イベントの時は『いざ』だったと?」
「うん。あのまま疲弊していったらカナデの精神が保たなかっただろうし。なによりカマキリ気持ち悪いし……」
「ありがとうね〜ジゼル〜」
肩に引っ付いてくるカナデと、辟易しながらもカナデの頭を撫でてやるジゼルの姿はさながら姉妹のようだ。
仲の良い二人を少しだけ羨ましそうに見ながら、アヤメは諦観の込めたため息を吐き出す。
「……はぁ。まさか魔法使いだったとは思いませんでした……いえ、魔法を使ってらっしゃったのは身に覚えがあるのですが……」
「……魔法の行使に才能がないことは認めるよ」
「いえ、決してそういうことではありません! 例え子供の悪戯程度の魔法であろうと、剣戟の最中に使われる厄介さは証明されております故!」
「褒めてるんだよね……?」
『子供の悪戯程度』だの『厄介』だの言っているけど、ジゼルが使いたいのは『派手でカッコいい魔法』だと言うことを常々忘れないで欲しい。
「……で、結局何を選べはいいかな?」
「この『銀剣士』っていうのが気にならんだけど……魔法使い向きって言ったら『スイーパー』なんだよね」
「いや、どっちかと言うと盾役向きではないだろうか」
「魔法使いのHPとVITって、他の職業よりもダントツで低いからね……」
他の『凶戦思考』や『東龍剣術』、『料理』と言ったスキルでは、ジゼルの魔法使いとしての質は上げられない。ここまで来たら、もう『剣士職』になっても良いと思うカナデであったが……
「とりあえず保留で」
当のジゼルは、やはり魔法使いという夢を捨てきれないようで、苦渋の決断として『保留』を選択した。




