魔法という概念
現代社会、異能系の世界です。まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします。
現代社会において、魔法という概念は一億年前に滅びたと言われている。
一億年前までは、魔術士が人口の八割を占め、世界は魔法によって繁栄し統治されたと言われている。
しかしこれらは一般的に知られている、単なる昔ばなしだ。事実はこれとは何もかもが違っている。
それでは俺が知る限りで本当の話をしよう。
現在、2050年の段階では、魔術に関する研究が功績を挙げたという話は聞かない。だが現実では、すでに研究は最終段階へと差し掛かっている。
それではなぜ、公の場でこのことが公表されていないのだろうか。
理由は二つあった。
一つは研究の際に人体実験を複数行った為だ。二つ目は魔法を利用して戦争にて先手を打つ為だ。
この計画は決してバレてはいけない訳だ。
もし外部に知られればこのデータの為に各国が集中し、確実に争いが起きてしまうからだ。
それにこの研究が原因で出た死者は500人を上回る。研究員、実験体、侵入者までもが殺されていた。
スラムに住む人間や、重症患者は実験体として利用され、劣悪環境での生活を強いられている。
そして今までの研究で出た人体実験の成功例は、一度だけで、その実験にて生き残ったのはたったの二人だけだった。
実験に成功した二人はすぐさま能力検査を始められた。本当に魔術が完成したかを、確かめる為であった。
しかしその二人から出た結果は研究者達を失望させた。どうやら成功というのは、なんらかのエラーであり、機械の不具合が原因で誤った結果が出たようだ。
そしてついに、二日後には二人の処分が決まった。
検査の結果、体内には実験による影響が出ており、とうてい実験に使い回せる状態ではなかったのだ。
あと二日で人生が終わる。
絶望の淵に立たされる幼い二人の姿を、一人の研究者は見ていた。
彼はそんな、二人の途方に暮れる姿を、見兼ねたのだ。
そして彼は二人を連れて逃亡を図ることに成功し、無事地上へと逃げ、生き延びた。
それから彼は、二人の子供を研究者に見つからないように、それぞれ別々の場所へと逃がした。その後、男の行方は不明となった。
今もこの悲惨な研究は続けられている。もし実験が成功すれば、全世界との全面戦争による大量の死者が出る。
現に、この実験を止めるべく、今も尚活動を続けている団体もあるが、それは極わずかで、その上彼らの活動は決してバレてはいけない。バレてしまえば最後、彼らは研究所の連中によって抹殺されてしまう。
これが現代社会の真実である。確かに魔法はまだ完成していない。しかしそれも時間の問題だ。
あと数年、いやあと数か月かもしれない。
あの研究を止めないと、人類は確実に地獄を見る事になる。
しかしあの実験を止められる人間は限られている。急がなければ人の愚かな欲によって、人類は滅びてしまう。
計画を止められるのは生き残った生存者で、あの幼い二人だけであった。
「ならば、宣戦布告といこうじゃないか」
そう呟く男こそ実験体の1人、谷田涼斗であった。




