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7 断章



 ―――――――演習が始まった同時刻、相手校クロウサ丸ブリッジにて。

 

「…………ふむ、相手はF-4が2機か。どうやら報告にあった例の実験機の姿が見えないようだが?」

「あっちにトラブルがあって2機しか用意出来なかったらしい。――――なんだ? あれに興味があったのか?」


 ブリッジに設置された大型モニターでシロウサ丸から出撃した2機の姿を伺っている2人の少女の姿があった。

 1人は制服の上からこの船の艦長の証明である肩章のついたコートを着て、ショートボブに切り揃えた髪の上に船長キャップを被っている。

 つまり、どこからどう見てもこの船の艦長にしか見えない服装をしているこの少女は本艦クロウサ丸艦長、秋月 陽子である。


「少しな。あまり見る機会の無い機体だ、今後対戦するかもしれないし一度くらいは機動を確認しておくのも悪くないと思ったのでね」


 陽子の隣にいて、実験機に興味のあるこの少女は長嶺 久遠。

 龍の炎のように真っ赤に燃える赤を基調とした龍星座高校の制服に、銀色の長髪がなびいていた。


「そんなに気になるならお前が出撃しても良かったんじゃないのか?」

 

 陽子のからかうような言動に久遠は少し笑みを浮かべながら答える。

 

「相手は大会出場経験の無い同好会だろう? 私が出ていったら相手にならんよ。それに新入生の実力も見ておきたいからな」

「――――ほう。つまり今日の相手は新入生の実力を測る当て馬と言う訳か?」

「そうは言っていない。それに航空部隊はともかく戦艦を動かしてるのは去年の大会で優勝したまりん艦長が率いているのだろう?」

「…………チッ。嫌な事を思い出させるな。あれはこっちが勝ってもおかしくなかった」


 陽子は少しふてくされたような感情を出した後、帽子を深く被り直して前大会の記憶をかき消そうとする。


「だが結果は君が負けた。これはどう足掻いても変える事は出来んよ」

「それは解っている。…………わざわざ誰かに言われなくてもな」

「そうスネないでくれ。君の実力はじゅうぶんに評価している。おそらく今の高校生で君より優れた艦長は何人もいないだろう」

「…………そいつはありがたい評価だ」

「だから君を破ったまりん艦長を見下したりなどしないさ。それに新入生と言っても優秀な人物を連れてきている」

「――――ほう? そいつらはお前より強いのか?」


 陽子の言った事がツボにハマったようで久遠は少し笑いながら答える。


「――――くっ、フハハハハ。まさか? 私と対当に飛べるのは風森天空かぜもりそらだけだよ」

「自信を持つのもいいが過信はするなよ? 油断してると突然出てきたエースに撃墜されかねんからな」

「わかってるさ。――――エースと言えば風森天空には妹がいたな」

「ほう? そいつは強いのか?」

「なかなかやるとは聞いていたが、前大会では結局対戦出来ずに終わってしまった」

「それは残念だったな」


 久遠はそのまま艦長席の横にある椅子へと歩いていき、何かを期待するかのようにモニターに映る2機のF-4をじっと見つめながら呟いた。


「そう残念でもない。空にいる限りいつかは会えるだろうからな」

「また例の未来予知か?」

「何度も言っているが、私はそんな芸当など出来んさ。ただ感覚で何となくそう感じる事が出来るだけ」

「――――よくわからんな」

「すまないが私自身も上手く説明が出来ない。ただ今日の演習は実りあるものであって欲しい」

「それも感じた事か?」

「…………いや。ただの願望だよ」


 それから2人の少女は会話を止め、静かに開戦の時を待つのであった。




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