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時計仕掛けのアクターズ  作者: 卯月兎夢
黄泉帰りの扉
20/26

夢のような扉、きっと悪魔が見せた夢

 昔々、まだ、世界が世界の全てを知らず、世界がまだ、宇宙の中心だと信じられていた頃。


 とある扉が作られた。



 戦や病気で愛する人を亡くした若き研究者が、当時にはもう蔓延っていたアンデッドたちから着想を得て、その扉は作られた。



 この世とあの世をつなぐ、死者を呼び戻す扉。

 愛したひとにもう一度会いたい。

 戦で亡くした息子と暮らしたい。

 もう、死など怖いものではない。


 だって、この扉は死んだものと会わせてくれるのだから。




 だが、そんな夢を叶えてくれる扉は、世間に公表されることはなかった。


 簡単な話だ。この扉は、誰だって生き返らせてくれる。

 国を救って死んだ英雄も、みんなに愛された歌姫も………。


 でも、それだけじゃない。

 この扉が、闇の手に落ちればどうなる。


 世を震撼させた大悪党や、国を苦しめた悪逆の主だって。そうしてまた、世間は混沌に飲み込まれるかもしれない。


 これを重んじた裏のもの───死神たちは、この扉の開発者、並びに扉の存在をひた隠しにした。


だが、彼らのなかにひとり、扉を試したいものがあった。


 彼は、死んだ友達に会いたかった。


 彼は、開発者の言うとおり、生と死の境目が朧気になるといわれる新月の夜に扉を開いた。


 だが、彼は友達に会うことができなかった。


 結局、扉を開いた本人、並びにそのとき近くにいた十一人が扉を閉じるまでに死亡。



 開発者は追求されたが、彼は死人が出たこと、長く軟禁状態にあったことから錯乱状態に陥る。


 死んだものにもう一度会いたいという純粋な願いが、悲劇を引き起こしてしまった。


 きっと、それが一番、彼は苦しかったのだろう。その三日後には舌を噛んで自害してしまった。


 重んじた死神たちは、扉の研究をすることにした。これから先、誰かが自分たちの目を掻い潜って開けてしまうかもしれない。そのとき、この扉に無知な自分達は、どう対応をとればいいか分からなかったからだ。


 そうして、決して人道的とは言えない実験が執り行われる。


 捕らえたアンデッドたちに研究の内容は伏せて、実験させた。


 世界のためにと正義のためにと。死神の特権【葬送】が使われずに人体実験を行ったとして、後に強く非難された、実験の結果はこうだ。


 まず、扉を開くには十二の魂を用意しなくてはならない。このとき魂は、肉体の生死を問わない。


 そして、呼び出した魂を受け入れる器。これは、吸血鬼でなくてはならない。理由は未だに解らず、人狼や魔女など、他のアンデッドや人間では、すぐに双方の魂が死んでしまう。


 吸血鬼の、元々入っていた魂は、十二の魂を引き連れて扉の向こう側へ連れ去られる。


 計十三の魂が向こう側へ入ったその瞬間に、扉は閉じられてしまう。



 死神たちの間では、勿論この扉を壊そうという意見も挙がった。だが、扉を破壊したことによるその代償。その被害が未知数だった。


 よって、扉は彼らの手によって地中深くに埋められた。なかなか攻め込まれることのない、遠い遠い島へ。


 こうして、扉は深い地中に埋められた。

 


 千年後、とある組織が扉を見つけるまでの時間。なんの解決策も見当たらなかった時間。開かれることのないその扉は、『黄泉帰りの扉』と呼ばれた。




 

 

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