3話 ドゲドー初のヒャッハーを試みる。
さぁて自由だっ!
背中に羽が生えたような気分だ!
風呂に入って新しいパンツを履いた時のように清清しいなぁっ!
……うわぁ。なんだろう。
この『なにやってもいい』っていう解放感。
そして、何でもできるって自信からくる開放感。
正直ちょっと盗賊になるヤツラの気持ちが分かるわ。
ん~~……。
分かったついでに……ヒャッハーでも……してみようかな?
ド外道だったら、ヒャッハーはつきものだよね?
……よしっ!
悩んでても仕方ない! やっちゃえやっちゃ! とりあえずヒャッハーしてみようっ!
でも……まぁ…あれだ。
顔見知りはいない所の方がいいよな。うん。なんかアレだし。
う~ん……適当に温かい方に向かって飛んで、村か町が目についたら、そこでやってみよう。
よしっ! 行くぞっ!
魔力を巡らせ空中浮遊の術を使い、30mほど上空に浮き上がる。
「ィイヒャァッハーーーー!!」
景気づけとばかりに叫びながら両手を前に突き出し高速で移動を始めるのだった。
***
10~20分もしない内に、小さな村が見えてくる。
建物が100程しか無さそうな小さな村だ。
その上空で止まる。
……『ヒャッハー』するって言っても、具体的には何しよう?
正直、金はもう余ってるし……
…………女か。
……うん。
やっぱ女だよなっ!
うんうん!
この際、妙齢はもちろんのこと、ロリータにまで手をだしちまおうか! なんせド外道だしなっ!
でも……どうやったらいいんだ?
………………
…………
……
ま。いっか。
難しく考えねぇで、広場で騒ぎを起こして
『女を差し出さね~と皆殺しにすんぞ?』
的に脅せばOKだろ。うん。きっと
よし。
……やってみるか。
…………
……
しかし、なんていうか……
これ、魔物に向かう時とかとまったく違う勇気がいるな。
……お、落ちつかねぇ。
いやっ!
男は度胸っ!!
一歩を踏み出す勇気だっ!
俺なら出来るっ! やれるっ!
行くぞっ!! イったれぇっ!!
心を決め、村の広場の中央に向けて急降下すると同時に、魔力の固まりを誰もいない広場の地面にぶち当てる。
ドガァアアアンっ!!
大きな衝撃音と共にクレーターができ周囲に砂煙が巻き起こった。
砂煙で見えなくなったクレーターの中央に降り立ち、衝撃音で村人が集まり出すのを待つ。
やがてガヤガヤと人の気配が多くなり、何事が起きたのかと問う声で騒がしくなってきた。
十分に人が集まった事を確認し、魔力を込めた右手を突き上げて突風を起こし、村に舞う砂煙を全て吹き飛ばす。
突然の豪風に目を閉じていた村人たちはやがて、クレーター中心部の見慣れない姿に注目し始め、視線が集まっているのを感じる。
これだけ力を見せつければ、誰一人逆らう人間はいないだろう。
そう心の中で3回復唱してから口を開く。
「……ぉ…俺の名は『ドゲドー』っ!
何にも縛られない男だっ!!
お前らの家をこのクレーターのようにされたくなければ、俺に……ぉ…女をさしだせぇぇえええっ!!」
後半に進むにつれ、心の叫びが混じったのか大声になっていた。
だが、まぁ、あれだ。
村人達には十分に要求は伝わっただろう。
騒然とする村人たち。
うんうん。
ヒャッハー成功だ。
うん。やったった!
一人の老人が静々と前に進み出てきた。
「…………」
きこえねーよ。
老人の前に転移する。
また周囲が騒然とした。
「なんて言った?」
「……女達は…みな……奴隷商人に連れて行かれました。」
「…………はぁ??」
思わず周囲を見渡す。
男とババァばっかりじゃねーか。
「ちょっ、ふざけんなよっ!
人がせっかく気合入れてきたってーのによっ!」
「……申し訳ございません。」
「おい、それ何時の話だ?」
「一昨日の話です……村まるまる騙されまして。
……もう…この村は終わりです。 うぅ……」
「で、どっちに行った??」
「……あの街道を進んでいきました。うっ、うっ、ううぅっ!」
老人はとうとう堪えきれなくなったのか泣き崩れた。
俺はわなわなと震える。
怒りだった。
「俺のしょっぱなの夢をぶっ壊しやがってーーっ!!」
頑張って恥ずかしいのを我慢したのに、それを台無しにしてくれた事に対する怒りだった。
空中へ勢いよく飛び出し街道へ向かって高速移動する。
女達を大勢連れているのであれば移動は早くないはずだ。
すぐ追いつけるだろう。
***
小一時間も飛ばないうちに馬車6台の団体を見つけ集団の前に降り立つ。
集団はその足を止め一気に騒がしくなった。
「なんだチミは」
とか言ってやがるので、無視して荷を覗く。
ビンゴ。
イェーイっ!
俺の女候補達を発見したー!!
「オイてめぇなにしてやギャアアーー!!」
なんかうるさいゴミが剣先突きつけて邪魔しようとしてきたので、とりあえず凍らせてみた。
お? なんだ?
7人くらい男が馬車から出てきているぞ?
まぁ武装してるし、全員敵ってことでいいだろう。
「よし。死ね。」
「「「「 ギャアアアーっ! 」」」」
電撃を落としておいた。
焦げたヤツらは気にせず、邪魔者もいなくなったし各馬車の荷を確認。
どれどれ?
お~♪ ……妙齢から、ロリータ。それに熟女まで幅広いじゃないですか。
ナイスです。
ナイスですよ名も無き村っ!
おっ? なんだ??
奥にブルブル震えてるオヤジが居るぞ?
「わ、私を殺せば……ここに居る奴隷全員死ぬぞっ!!
この奴隷の首輪がある限りなっ!」
おいばかやめろ、ロリータを乱暴に扱うな。
乱暴にロリータの手を引っ張るな! Noタッチを知らんのか!?
「こんなもん大した呪いじゃねぇよ」
すぐ近くにいた赤毛のショートカットの女の首輪に触れ解除する。
「おい、オマエ、自由になったろ?
他の馬車の女をここに連れて来い。順番に解除してやる。」
「は、はいっ!」
男の居る馬車に乗り込み、移動ついでに周りの女の首輪を壊して外に出させる。
「ひ、ヒィ!」
悲鳴を上げながら、奥で幼女を抱える男
オイバカヤメロ。
ょぅじょがギュってされて苦しそうだろっ!
Noタッチだって言ってんだろがっ!
男を軽く殴ってふらふら状態にして幼女を奪還。首輪を壊す。
お~よちよち怖かったな~。だがギュッとしてもらっても幼女だから嬉しくないぞ~。
男を残して馬車を出ると赤毛の女が、俺が解除をしやすいように首輪のついてる女達を整列させていた。
気の利く子だなぁ。
入れ替わり立ち代りに俺の前に立つ女達の首輪を「はいはいは~い」と解除していくと、すぐに最後っぽい首輪の解除が終わる。
「お~い赤毛ちゃん。これで全員か?」
「はいっ! 有難うございます!」
「おっけ~。じゃ。」
震える男を馬車から蹴りだし、そのまま雷撃を打ち込んで始末した。
「さ。ゴミ掃除も終わったし、え~っと、じゃあ、みんな手をつないで。村まで転移して帰るから。
あ~。その馬車も村に持って帰りたかったら誰か触ってれば持って帰れるよ。」
俺の言葉に女達は頭に疑問符を浮かべながらも手を繋ぎはじめ、途中から枝が分かれるようにして全部の馬車に触っている。
「ほいじゃあ、行くよ……大転移っ!!」
一瞬で村のクレーター前まで全員が戻る。
女達は突然の景色の変化に騒ぎ始め、女達の声を聞きつけた村人達は家から出て集まりだし、そして女達が無事に戻った事に歓声が沸きあがる。
俺はうんうんと満足げに頷きながら。
「有難う有難う!」
と礼を言ってくるヤツラを
「まぁまぁ。」
と両手で抑えるジェスチャーを返す。
そして軽く咳払いをし、嬉しそうにしている老人のところへ向かって一言告げる。
「じゃあ、もっかいやり直すからね。」
颯爽とクレーターの中央まで戻り右手を突き上げる。
村人達はその様に何が起こるのか思案顔になり静かになっていく。
よしっ! 俺ならできるっ!!
やってやるぞっ!!
「……ぉ…俺の名は『ドゲドー』っ!
何にも縛られない男だっ!! お前らの家をこのクレーターのようにされたくなければ、俺に……ぉ…女をさしだせぇぇえええっ!!」