真夏の雪
またこの小説を開いて頂きありがとうございます。
突然だが、皆は寝るときにもしくは寝る前に絶対にしていることはあるだろうか?
音楽を聴く。アイマスクを着ける。特になにもしない。
結構結構。人それぞれで違うよな。
そんな俺の場合は『神様にお祈り』だ。
おぉっと、勘違いするなよ。
別に俺は何かの宗教に入っている訳じゃない。
ただ自分の夢が叶うように願ってるだけだ。
幼い頃からの夢で、いつかは俺も! と思っているのだが、これがなかなか実現しない。
え? 夢は自分で叶えるものだって?
そりゃ確かにそうだ。でも俺の場合はそれが出来ない。
いや、『出来るわけがない』と言った方が良いか。
とにかく、俺は今日も今日とて神様に祈る。
「俺を異世界に連れていってくれ!!!!」
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いつも通り家のベッドで目覚めた俺は、まずはカーテンを開ける。
外の景色はいつも通りの見慣れたもので、夏の日差しがただただ不快で、すぐに閉め直した。
「今日も駄目か……」
自分が異世界に転移していないことを確認。神様に嫌われているのか、俺は一度たりとも異世界に行ったことがない。
「いや、まだだ!」
前に読んだライトノベルには、家の景色は変化がなく、外に出たときに異世界だと気づく。というものもあったので、きっとそれだろう。
手早く制服を着て、朝食のトーストを囓りながら玄関のドアを開ける。
「あらー、恭嗣くん! おはようございますぅー」
「あっ、おはようございます」
昔からお世話になっている、近所のおばさんからの挨拶に応える。
「異世界じゃないじゃん! 普通に近所のおばさんいるじゃん!」
だがこれはいつもの事。まだチャンスはいくらでもある! そう己を奮い立たせて、家を後にした。
すでに冷たくなったトーストを食べながらしばらく歩いていると、俺と同じ入間高校の制服を着た学生が多く見えるようになる。
なるべく歩調を合わせるように歩くと、俺の前のJK2人組と後ろの男子3人組の会話が聴こえてきた。
「ねえねぇ。昨日また異世界に呼ばれちゃってさ~」
「マジで!? アタシもだよ~」
俺は1回も呼ばれたことないですけど?
「俺、異世界転移したの今週だけで5回なんだけど」
「あー、俺もたまにあるわ。マジでブラックバイトかよって感じだよな」
「ほんとそれ! なんなら給料貰っても良いぐらいじゃね!?」
給料なんていらないから、俺を異世界に呼んでくれ! なんなら週8でも構わないぞ!
今の会話でお分かりいただけだろう。
そう。何を隠そう入間高校に通う俺以外の在校生全員が異世界を経験しているのだ。
ではなぜ俺だけ異世界に行けないのか?
自分でもいくつか調べてみたが、さっぱり分からない。
だが決して諦めたりしない! いつかは必ず異世界へ行くんだ!
そうやって毎日異世界を夢見ては、玉砕する日々。
かれこれもう1年、俺の日常はこれの繰り返しだ。
……と思っていたんだが、
「冷てッ!?」
不意に鼻先にヒヤッとした感覚。
雨でも降ってきたか? と空を見上げると、
「……なんだ、これ」
自分の目を疑った。
この目で見たものは信じて疑わない俺だが、この時は流石に無理だった。
手を広げて、ふわふわと落ちてくるモノを受け止める。
それは手の平の温度で溶けてなくなった。
この異常事態に周りは気づいていないのか、全くの無反応。
だが、今はそれを気にすることは出来なかった。
「嘘だろ……」
今の季節とは全く無関係で、真夏には絶対にあり得ない、
純白の雪が降っていた。
まだ学校に着いてないの!?って思った方いますよね笑笑
次回は学校に着いてますし、他のキャラクターも出てきます笑笑