57.りんご論争
こんにちは。
急に冷え込みがきつくなって来ましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
1日1個のりんごは医者知らずなどと言いますが、実際にりんごは体にとってバランスの良い果物のようです。風邪予防にりんごをどうぞ! 台風の被害が大きい中、出荷されてきた貴重なりんごです。ぜひ食べていただきたい。ところでみなさんは、どんなりんごがお好きですか?
パリパリ、シャキシャキのフジ系のりんご?
それとも、ふんわりジューシーなジョナゴールド系のりんご?
ええ、答えは聞かずともわかっております。
ほとんどの場合、皆さんはパリパリ系のりんごがお好きなのですよね。私は人生の折々で、りんごの好みについて質問をして来ましたが、どうもジョナゴールド系を愛おしむ人間は少数派だということに気がつきました。
ひとたび、柔らかい系のりんごが好きだと言えば、帰ってくるのはディスりの嵐。ジョナゴールドは親の仇か。
「……ああ、ジョナゴールドねえ。そういう人もいるよね」
ディスらないでくれてありがとう。
「あの古くなったやつ?」
ジョナゴールドは新しくてもそういう食感なんだよ。
「えー、ぼけてるりんごが好きなの?」
ねえ、それより「りんごがぼける」って方言なの知ってる?
あと、ジョナゴールドは新(以下略)
「ぼけぼけのりんごとか、ないわあ」
だから、「ぼけぼけのりんご」って方言(以下略)
あと、ジョナ(以下略)
チックショー!!!
いいんです。ジョナゴールド系のりんごの良さは知っている人だけが知っていればそれで良いんです。そうさ、彼女の良さは俺だけが知っていれば良いんだ。(この後、ポッと出のヒーローにヒロインをかっさらわれる当て馬系のセリフ)
まあこんな感じでりんごについてはジョナゴールド系という強い信念を持っている私なのですが、このりんごの食感は中国でりんごを選ぶ際にも大事なポイントになってきます。
フジという銘柄のりんごは中国にもあり(日本のフジと同じなのかしら、富士という名前です……)、やはりパリパリ系の食感です。それ以外にもたくさん覚えられないほどのりんごが置いてあり、置かれている種類も週ごとに変わったりするため、好みのりんごを買う場合には、店員さんに確認をする必要があります。
フジのようなパリパリ、シャキシャキ系のりんごの食感は、「脆(cui/ツイ)」となります。ですので、「脆(cui/ツイ)」なりんごが好きだと言えば、お店のひとがフジ系のものを選んでくれます。
ちなみにこの「脆(cui/ツイ)」という食感、パイ、ポテトチップス、唐揚げ、春巻き、きゅうり、りんご、梨など様々なものに使います。要は、「パリパリ」「サクサク」ということですね。個人的には、揚げ物と生野菜が同じ擬音語なのは微妙な気持ち……。まあね、銃を撃つ音の擬音語が、中国では「バンバン」じゃなくって、「ピュンピュン」なわけだし、国によって違うのはわかるんですけどね。
じゃあジョナゴールド系の場合はどうなるか。「柔らかいりんごが好きなんですけれど……」と声をかけると、いつも「ああ、面(mian/ミエン)なりんごでいいのね」と言われていました。具体的には、古くなって水分が抜けた、歯ごたえのない、ぐにゃっとした……みたいな感じ。中国よ、お前もか。(でもある程度の支持層があったみたいで、フジよりもグラム当たりの値段が高い場合もありました)
ちなみに、この「面(mian/ミエン)」という単語、最初は「蔫(nian/ニエン)」かと思ったんですけれど、どうも違うらしいのです。(声調も「蔫(nian/ニエン)」だと2声、「面(mian/ミエン)」だと3声なので全然違う音だったりします)
八百屋や市場のおばちゃんたち曰く、「蔫(nian/ニエン)」は「花がしおれる」とは使えるけれど、「果物がしなびる」には使わないのだとか。辞書で調べると、「蔫(nian/ニエン)」には、「花がしおれる、果物がしなびる」どちらの意味もあるのですけれどね。あくまで、りんごや梨は「面(mian/ミエン)」なのだそうです。方言だったのかもしれませんね。
そういうわけで、りんごを買おうとすると日本でも、中国でも「古い」「ぼけた」りんごが好きだと言われるお話でした。求む、ジョナゴールド系好きの同志!