55.夏の匂いと言ったなら(1)プール編
こちらは、銘尾 友朗様主催の夏の匂い企画参加作品です。
夏の匂いと言えば、みなさんは何を思い出しますか? スイカ? 海? 花火? イカ焼き? 萌えないニオイとして、エアコンのカビ臭いニオイとかもありますよね。さて私は夏の匂いというと、プールと蚊取り線香の香りを思い出します。というわけで、今回はプールのお話です。
実は私の中では、中国では夏といえば海ではなくプールの季節というイメージが強いのです。それというのも、おそらくたいていの都市から海が劇的に遠いから。上海などの大都市には人工のビーチも作られていますが、これはあくまで例外だったりします。
周囲を海に囲まれた日本からすれば、海ってとても身近な存在ですよね。いくつかの海なし県は存在しますが、海に出かけることはそこまで難しいことではありません。けれど、中国では海までが信じられないくらいに遠いのです。ちなみに海岸線の長さも、日本の方が中国よりも2倍以上長いんですよ。(さらに言うなら、アメリカよりも長い)国土の大きさから考えると、すごい話ですよね。(そりゃあ、中国人観光客の人気スポットに沖縄が選ばれるわけだ)
「上海には大きな海があるでしょう?」
そう思う方も多いかもしれません。字面かな。「上の海」って書きますしね。それとも外灘の風景のイメージもあるかもしれませんね。(外灘は、バンドとも呼ばれるかつての租界地区。西洋式の高層建築物が立っていることで有名な場所。よく絵葉書とか映画、ドラマに使われている)
でもちょっと待ってください、あれは川です。黄浦江と呼ばれる、長江(揚子江)の支流です。そう、あんなにどデカくても川なのですよ。(長江は黄河よりも長い、アジア最長の川です)ですから上海でお魚料理をオーダーすると、基本的に川魚となります。川魚はちょっとクセが強いので、かなり濃い目の味付けを施されているため、好き嫌いが分かれるのですが。
中国で海が有名なのは、青島(チンタオビールで有名な場所)、大連、海南島(中国のハワイと呼ばれるリゾート地)でしょうか。ちなみに青島があるのは山東半島で、大連があるのは遼東半島です。歴史の授業で習ったあそこですよ! あの辺りに夏に行くと、水着にサンダル、浮き輪というザ・夏という格好の子どもたちにそこらへんで会えます。海産物だって有名です。例えば干しなまことか干しあわび、そして真珠屋さんが大量に軒を連ねています。(そして真珠屋さんには、「真珠の粉あります。目の前で挽きます」という看板がよく置いてあるのですが、クレオパトラのように飲むんでしょうかね?)
それでですね、一般的な地方都市は海が近くにないため人工のビーチや、ホテルのプール、ジムのプールが夏場大賑わいなのです。中国在住時に、ジムの年間会員になろうか悩んで、一度お試しで行ったことがあるのですが、プールが全レーンで人で埋まっているのです。すごいなあ。結構大人も練習していて、それは別に良いのですが、飛び込み禁止のところで飛び込むので、とても濡れます。いや、まあ中に入るからどうせ濡れるんですけどね、気分的にちょっと。
そして面白いことに、みなさんなぜか平泳ぎばかり。クロールをしているのは、外国人かコーチだけです。なんと、中国では平泳ぎからまず習うのだとか。しっかり平泳ぎができて、体が浮くようにならないとクロールには進めないそう。ちなみに平泳ぎの中国語は、「蛙泳(wayong/ワーヨン)」です。まさに文字通りのカエル泳ぎ!そしてさらに砕けた形ですと、平泳ぎは「青蛙(qingwa/チンワー)」、クロールは「大腿(datui/ダートゥイ)と言います。最初、水泳の受講生と間違われて(大人もたくさんレッスンを受けるから)、「カエル?太もも?」と聞かれた時は、「はあ?(;´д`)?」とすごく間抜け面になった記憶があります。
なおすごくきちんとしたジムに行ったのですが、みんなプールに入る前にシャワーを浴びないんですよねえ(遠い目)そして、トイレに案の定紙がありません。ねえ、今入った人、トイレットペーパーとか持たずに入ったけど、どうなの? プールに入る前にシャワー浴びるからいいじゃんって感覚なの? ……でもさっきも見たように、みんなシャワー浴びずに行ってるよね……? おええええええええ。だからなのでしょうか、プールの塩素のニオイがキツイのは。薬剤でがっつり消毒しているの?(確実に日本よりキツかった記憶があります)
ちなみに、「汚くないの?」と思ったみなさん、あなたの感覚は正しいです。尿素や大腸菌が基準を上回った施設は、毎年結構な数、報告されています。(そしてニュースで話題になる)お腹が弱いひとは、中国観光でプールに入るのは遠慮しておいたほうが安心かもしれません。
じゃあ、ジムのシャワーは何のためにあるのか。それはみなさんがプールから出た時のためにあります。プールから出ると、みなさんシャワー室でおもむろに全裸に。(もちろんシャワー室は個室ではありません)そして、シャンプー、ボディソープをもっこもこに泡だててお風呂に入るのです。日本だと、ジムのシャワーでボディソープとかはご遠慮くださいって書いてありますよね。でも、中国ではそれが普通みたいです。何と言っても携帯用サイズじゃなくって、自宅用の置き型サイズを持ってくるくらいですしね。おばちゃんたちなんか、専用の道具で垢擦りとか始めてるし。しかも体験を申し込んだときに、ジムのスタッフに持ってくるように言われましたからね。家に帰ってお風呂に入らなくて済むと言われましたけど、帰る途中で汗はかかないのでしょうか……。
ここまででだいぶ、このジムに通うか悩んでいた私。その私の心を完全に折ったのは、とある可愛らしい少女でした。なんかちょっと変なニオイがするなと思っていたら、私の目の前、そうシャワーブースじゃない排水用の溝部分で、いきなり彼女がおしっこを始めていたんですよ……。まさに和式トイレスタイルで。いやああああ、私の方向におしっこが流れてくる!!!……まあそういうわけで、私の心はばっきり折れて、ジムの会員になることはありませんでした。日本に帰国してからも、プールというとあのカオスなイメージがありすぎてジムに通えないままです。まあ何年か前のお話ですし、プール事情ももう少し改善されてい……たらいいなあ(願望)
そういうわけで、今回はプールのお話でした。次回は蚊取り線香のお話で会いましょう〜。(きっとまたロクな話ではありません)