54.夏祭りとはどんなもの?
この作品は、遥彼方様主催による「夏祭りと君」参加作品です。
さて海の日も迎え、世は夏祭りですよ、夏祭り。みなさんは、夏祭りにはどんな思い出がありますか? 私はラムネの早飲みで1位になり、優勝賞品の文房具セットをもらったことがおります。学生時代とはいえ、本当に女を捨てているゲームですね。一体どうしてあんなに必死でラムネを飲む羽目になったのか、さっぱり思い出せません。たぶんそこら辺でぼーっと立っていたら、人数あわせのために強制的に参加させられたはずなのですが。
さてそんな夏祭り、中国語では「夏日祭(xia ri ji/シャーリージー)」と言います。中国語の言い方もそのまんまですね。対応する単語があることだし、中国にも夏祭りがあるのかと思うところですが、実は中国には日本の夏祭りに対応するお祭りというのはありません。(断言していますが、あくまで私の住んでいた時の肌感覚です。何かあればご指摘をよろしくお願いします)
もちろん中国にも季節ごとに色々なイベントはあります。例えば春のさくら祭りに、初夏のさくらんぼ祭り。夏のビール祭りに、冬の氷祭り。その他にも端午節やら七夕やら、クリスマスやらバレンタインデーなど、日本人にも馴染みの深いものが盛りだくさん。でも夏祭りはないなんて、面白いですよね。
それというのも日本の夏祭りって、結構独特なんです。運営自体も神社がやっていたり、はたまた町内会が自発的に行っていたり。目的も、奉納だったり納涼だったり。由来や成り立ちも様々です。ここで夏祭りとはなんぞやと語りだすと、論文が書けるような議論になってしまうので、とりあえず中国には日本の夏祭りに対応するような祭りはないということで、さらっと流してください。
じゃあさっきの「夏日祭」という言葉はいつ使うのかと思われるでしょうが、これはまさに「夏祭り」を行う時に使います。そう中国では、日本風の「夏祭り」が開催されているんです。これまた個人的な感覚ですが、上海のような大都市や、日本人が多く住む地方都市で開催されているような気がします。企業が後援していることも多く、時々お祭りの背景を考えさせられるのもある意味ご愛敬でしょう。場所によっては和太鼓の演奏や、盆踊り、子ども向けの屋台が出ており、かなりの入場者数を誇っています。
ちなみにどこの夏祭りでもメインイベントに据えられているのが、浴衣コンテスト。これを楽しみに訪れるひともいるようです。参加者(多くの場合中国人)もかなり気合を入れて、このコンテストに臨んでいます。もちろん、ぼんやり待っているだけは票は集まりません。それじゃあ何が行われるのか。はい、みなさんも御察しの通りの「ロビー活動」です。会場に着いた途端に、浴衣姿の女性に呼び止められます。あれ、このひと知り合いだっけ……という勢いです。しかも日本語だから、つい立ち止まっちゃうんですよね。
「私、浴衣コンテストに出る◯番の◯◯です! 投票してくださいね」
お、おう、知り合いじゃないんかい。あまりの従来っぷりに、「君~、困るじゃないか」と言いたくなる勢いです。とりあえず、「はあ」と気のない返事を返すと、浴衣の女性はすぐに立ち去ります。これの繰り返しです。浴衣コンテストの主催者さんよ、参加者がこんな風に少ないパイを取り合っていてそれで良いのでしょうか。大体この手のコンテストは結果発表まで見たことがありません。自分の清き1票が活かされているのかが気になるところです。
そういえば何年かまえに浴衣コンテストがあったときは、「浴衣を着用していて何らかの被害を被った場合、自己責任となります」みたいな文言が案内か何かに書いてありましたっけ……。(うろ覚え)当時はぞわっとしましたけれど、今思うと懐かしい……わけあるかい!(海外で浴衣や着物を着る場合には、情勢にご注意ください)
さて、「の」という文字が入っていると「日本風」として見なされている傾向のある中国ですが、この「夏祭り」「夏日祭」という単語も、「日本的」なものとして受け止められているように思われます。
その中の祭たるものとして私の印象に残っているものが、上海で行われている「魔都夏祭り」というものです。こちらは上海魔都夏日祭というのが正式名称で、何と今年で10周年です。(2019年のお祭りは、6月29日、30日に既に実施済みのようです)夏祭りに「魔都」ってつくの、なんかちょっと違和感ありません? そう、言うなれば厨二病的な何か。
その違和感は間違いありません。これは、中国語で「漫展」と呼ばれるイベント。日本の夏祭りとアニメをテーマにしているのです。私が上海にいた時にもこの夏祭りは実施されていたのですが、実は1度も参加したことがありません。
だってね、日本人社会ってめっちゃ狭いのですよ。知り合いの知り合いはみんな知り合い。友達の友達はみんな友達なのです。興味本位でお祭に参加しているところを見られたら最後、「石河がコスプレしていた」くらいの尾ひれがついて、会社中を情報が駆け巡ることでしょう。(でも今思えば、ネタ収集のために見に行っておくべきだったなあと反省。もし今上海に住むことがあれば、見に行くだろうなあ)
まあこの会場に行ったことはありませんが、日本のレイヤーさんと違って、中国のレイヤーさんたちは街中をその格好でうろうろしているため、「ああ、今日はどこかでイベントやっているのだなあ」とわかります。でも何のキャラなのかわからないのが辛いけれど!(ぱっと見てキレイな人ばかりの印象でした。すごいなあ)
話に聞く限り、イベント会場には神社の鳥居が設置されていたり、水着コンテストやら水鉄砲大会があったり、わたあめやりんご飴などの縁日の屋台があるようです。興味がある方はググってみてくださいね。(ちなみにこの手のイベントは上海以外にも行われていて、やっぱり「夏祭り」とか「夏日祭」という単語が入っているのですよ。すごいよ、クールジャパン)
中国には夏祭りはありませんと書きましたが、夏になるととある名物を見ることができます。それは公園で集団でダンスを踊るおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんたち。時々公園の近隣に住む人たちと騒音問題で揉めるほど賑わっています。どでかいスピーカーを持ち込んで、数十人から100人近い人で踊り狂うんです。まさに盆踊りレベル。近くに住んでいると、苦笑いするしかありません(昔、住んでいた経験あり)
そして、中国でも馴染みの深い「夜市(ye shi/イェシー)」文化。昼間の暑い時間帯は人の少なかった大通りに、日が落ちてから屋台が立ち並び、多くの人が行き交います。夏祭りが受け入れられる背景には、もともとの中国の習慣も関係しているのかもしれません。(そういえば、中国では今年の6月から「千と千尋の神隠し」が映画館で上映されています。映画の舞台のモデルは、夜市でも有名な台湾の九份だと言われています。18年越しの公開ですし、これによって日本や台湾への観光客がますます増えるかもしれませんね)
というわけで、中国での夏祭りのお話でした。