51.コーヒー買うのも一苦労
突然ですが、みなさんはコーヒー派ですか? それとも紅茶派ですか?
私はリプトンのティーバッグでもインスタントコーヒーでも、何でも美味しく飲めるので特にこだわりはありません。どうせどちらにも牛乳ぶちこむし。けれど、中国在住時代は当時の上司のために、コーヒー豆を買いに行っておりました。(下っ端は会社の仕事だけでなく、上司の日常用品の買い物までこなすのです。っていうか、ぶっちゃけただのパシリ)こだわりがあるなら、会社にコーヒーメーカー置いてくれよ〜。
さて、中国語で豆を挽くというのは、「磨珈琲豆/mo kafeidou」と言います。コーヒーにまったく興味がない私は、とりあえず酸味と苦味が偏っていない無難な豆を選ぶことにしていました。ドラマに出てくる秘書じゃあるまいし、上司のコーヒーの好みなんぞ知らないのです。その時も、レジにテキトーに選んだ豆を持って行き、「この豆、挽いてください」と伝えたのですが、スタバの店員さんの返事は、「怎么样?(どんな風に?)」でした。えっと、どんな風にってどんな風に?(きょとん)
固まった私に、「いかがなさいますか?」って再度「英語」で話しかけて来てくれましたが、言語が問題なわけではないからね? いや、中国語もわかんないけど、英語の方がもっとわからないから。(中国全体を見るとあまり英語は通じないのですが、都会のお店や、西洋人客が多いお店は英語が話せる店員さんがいます)そしてこれ以降のやり取りは、店員さん英語、私は中国語というよくあるパターンに。スタバ店員さんのホスピタリティが憎い(八つ当たり)
店員さんが、「紙」だとか「布」だとか「金属」だとか、いろいろと言ってくれるのですが、なぜフィルターの種類を聞かれているのかがわからないのです。「ホットコーヒーを入れたいだけです」と伝えると、さらに残念そうな顔をされる私。途中で、「何番にします?」とも言われたのですが、「番号? 何それ?!」とさらに私の脳内は混乱。ええ、そうです。日本でもろくにスタバでコーヒーを買うことのなかった私は知らなかったのです。スタバの豆の挽き方は、挽き具合と淹れ方に合わせて番号で伝えることができることを。
ご存知の方にとっては当たり前のことなのでしょうが、知らない人間には「10番にしとく?」とか言われても謎なのです。(例えば、極細挽き(エスプレッソマシン 使用)なら、3〜4番ですし、中挽き(平底ペーパーフィルター使用)なら、10番とかになります)ちなみに日本語と同様に、中国語でもコーヒーの挽き方は「極細」「細」「中」「粗」。万歳、漢字語圏。(なお、中国で購入したコーヒーメーカーの説明書がアラビア語だった時には、絶望で死ぬかと思いました)
そういえば、私が上海にいた頃は、あの世界最大級と言われるスタバのロースト工房とかはまだなかったんですよ。コーヒー豆の焙煎工場とカフェが一体化しているあの店舗が当時あったなら、私でもきっともっと簡単に理解できたはずと、責任転嫁しておくことにします。(だってあの店舗内には、豆の挽き方のサンプルとかが置いてあったから)
まあすったもんだの末、私が買いたいコーヒー豆の挽き方は「9番」らしいということを学んで、無事にお買い上げです。さて1ヶ月後。前回のおつかいの教訓を活かし、意気揚々と商品片手にレジで「豆を挽いてください。9番で!」とドヤ顔でお願いした私に向かって、店員さんはこう言いました。
「ごめんね。今、コーヒーの機械が壊れちゃってて、豆を挽けないのよ。修理の人がいつ来るかもわからないから、いつ治るかもわからないの。でも豆を買って袋を開封さえしなければ、別のお店でも無料で挽くことができるから、豆だけ買って帰る?」
スターバックスなのに、豆のドリップの機械が故障とか仕事になるの?! それにさ、ここで豆だけ買ってその後わざわざ別の店舗に挽いてもらいに行くなら、最初から別の店で豆も買うわ。
あんなに驚いたのは、学生時代に近所の吉野家で起きた、「白ご飯炊き忘れ事件(しかも店長判断で店を閉めて、めっちゃ怒られたらしい)」以来ですよ。豆を挽けないコーヒー屋さんに、米のない牛丼屋さん。パニックになったであろう牛丼屋さんとは対照的に、のほほんとしているスタバの店員さんたちに、中国らしいおおらかさを感じたのでした。