46.初恋はどんな味?
第47話は武 頼庵(藤谷 K介)様主催による「初恋」企画参加作品です。
初恋といえば、一体どんな味を思い浮かべるでしょうか。
ほんのり甘いイチゴ味、あるいはほのかに酸っぱいレモン味。どこか苦い思い出をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。
私は初恋といえば、「カルピス」を思い浮かべます。ええ、私の初恋の記憶とは、当然何の関係もありません。(というか、初恋とか忘れちまったよ)その昔のテレビCMで、「カルピスは初恋の味」というキャッチコピーを見たせいでしょう、すっかり私の脳内は感化されてしまったわけです。最近でも時々このキャッチフレーズは使われていますので、定期的に刷り込まれているものと思われます。マスメディア恐るべし。
さてこのカルピスですが、諸外国では名前を変えて販売されていることでも有名ですよね。英語圏では「カウピス(牛のおしっこ)」に聞こえてしまうとかなんとかで、「カルピコ」という名前になっています。いくら何でも牛のおしっこなんか飲み物として売るわけないじゃんとか思ってしまう私は、たぶん心が狭いのでしょう。同じような理由で「ポカリスウェット」は英語圏では「ポカリ」として販売されていますよね。汗なんか売るわけないじゃんとか以下同文。
ちなみにアジア圏ではどちらも名前を変えずに売られていることが多い様子。中国でもカルピスは、「可尔必思(ke er bi si/クアルビス)」として販売されています。さてカルピスが初恋の味かどうかについてですが、台湾版では、「難忘清純的初戀滋味(忘れがたい初恋の味)」と記載されているようです。とはいえ、中国版ではその記載を見た記憶がありません。中国語と日本語で、「初恋」のニュアンスが違うせいかしら? それともいつも業務用の1.5Lタイプを買っていたせいかな? 中国版の缶ジュースタイプには何と記載されていたのでしょうね。
ところでこのカルピスの中国名、とってもよくできているんです。音をあてただけだろうって? いえいえ、この国の漢字文化を舐めてはいけません。単純に音をあてるだけでなく、意味が通じるものになっているのです。耳で聞いた英語をカタカナにそのまま直すのとはわけが違うのですよ。「可尔必思」は、直訳すると「汝に必ず思わせる」という意味になります。「尔」は文語体で「汝」、口語に直すなら「你」(あなた)ということになります。私的に意訳すれば、「(飲み終わった後も)あなたにカルピスのことを必ず思い起こさせる」といった感じでしょうか。この四文字でこんな表現ができるなんてすごい。
ちなみに清涼飲料水で一番感動したのは、コカコーラです。これ、漢字に直すと「可口可乐(ke kou ke le/クコウクウラ)」なのですが、直訳すると「(あなたの)口に合い、(あなたを)楽しくさせる」という意味になります。音を合わせ、意味までがっつり絡めてくる。いやあ気持ちいいですよね。
なお「カルピス」と銘打って置いてあるくせに、カルピスが出てこない居酒屋が中国にはちょいちょいありました。別にまずくはないのですが、カルピスを期待している客に「优酪思果(you lao si guo/ヨウラオスウグオ)」などの違う銘柄を出すなんて酷いのです。コカコーラとペプシの味が異なるように、カルピスとその他の乳酸菌飲料は違うのです! おのれ許すまじ!
さて、ここからはカルピスの楽しみ方について。きんきんに冷やしたカルピスも美味しいですが、個人的にはこれからの寒い季節にはホットカルピスがオススメです。(好き嫌いは分かれると思います。お口に合わなかったらごめんなさい)さらにこれにブランデーを垂らして飲むと、最高に美味しい! ブランデーのいい香りがふわりと広まって、ついつい飲みすぎてしまうのです。(ウィスキーでやっても美味しかった)お手軽なくせに危険な飲み物となっております。
いい大人のくせにカルピスについて熱く語ってしまった今回のお話でした。(なお私はカルピスは濃いめが好きです)