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45.銀杏地獄

 みなさまにとって秋の風物詩とは一体何でしょうか。


 私にとって秋と言えば、そう銀杏です。田舎住まいの私、出身地は観光を売りにしていることもあり、季節の花々に囲まれて育ちました。よって秋になれば、広場や公園、大通りに植えられた銀杏を愛でることになるのです。


 緑の葉がゆっくりと黄葉していく様子を写真に撮ったり、風景画を描いている人も多く見かけます。落ち葉を拾う子どもたちも可愛いですね。でも、銀杏には問題がひとつあるのですよ。ええ、銀杏(いちょう)自体は良いのです。問題は銀杏(ぎんなん)の存在です。茶碗蒸しの中に入っている黄色のアレですよ。ご存知の方も多いと思いますが、あれ、外側の種皮が泣くほど臭いんです。どれくらい臭いかというと、もうファブリーズをホースでぶちまけたくなる異臭レベルです。(お好きな方、本当にごめんなさい)


 地方の観光地に住んでいた私は、銀杏とは実をつけさせないために雄と雌をわけて植えるものだと思い込んでいました。そうではないのだと知ったのは、関東に引っ越してからです。


 甲州街道やら神宮外苑やら、有名大学のキャンパスまで。秋は死ぬほど臭うのです。(大学は仕事中の訪問なので、嫌な顔ができない辛さ)特に雨の日は危険です。足元で踏み潰された銀杏の実が、水と混じり合い、臭いだけでなく滑りやすいという本当に危険なブツに変化しています。それでも大学のキャンパスというのは、銀杏を拾いに来てくれる近所の方がいるし、甲州街道などは国土交通省主催で銀杏拾いがあるので良いのだと中国に行ってから実感しました。大学のキャンパスなどは出入りが自由なため、近所の方がビニール袋片手にせっせと銀杏を拾っています。正直、あんなに大量に回収して消費できるのか心配なくらい。それにしてもなんで銀杏だったのでしょう。やっぱり街道とかはせっかく植えるなら、実がとれるものをっていう発想だったのかしら……。どうせならりんごとかが良かった……(育てやすさや景観、管理などの問題だと思いますが)


 中国にももちろん銀杏はあります。銀杏(いちょう)は中国語で、银杏(yin xing/インシン)とか白果树(bai guo shu/バイグオシュウ)と言います。銀杏は中国由来で日本に来たので银杏はまさにそのままですね。白果は銀杏(ぎんなん)のことですから、白果树とは、銀杏(ぎんなん)の樹という意味になります。りんごの樹とか、ぶどうの樹みたいな言い方で何だか可愛らしいですよね。とはいえ、銀杏を食べることは少ないのでしょう。鈴なりに実をつけた銀杏があちこちに放置されていました。桑の実やらさくらんぼやら杏や柿などのそのまま食べられる果実なら、大の大人がみんなで必死になって木登りをしてでも食べるのに。一度銀杏に蹴りをかまして、銀杏を落とそうとするおば様を見かけたこともありますが、結局散々落としたあげく持って帰ってなかったですからね。銀杏って拾うものではなくて、落とすものだったのかしら……?


 最近はどうなんでしょうね。意外と食べる方が増えたりしているのかも。実際、葉っぱも種子も漢方薬の材料になるんです。「体によい」って言われていますが、中医の先生が処方してくれる漢方薬は、マズイ(酸っぱくて、苦くて、辛くて、えぐみがある上に、漢方薬の種類によって毎回まずさが変わる)し、飲む量が多いという地獄っぷりです(笑)


 とにかく私がいたときには、臭い、踏み潰されて汚いという散々な状態でした。銀杏の並木道を通って帰ると、家についても靴の裏から異臭がするとかそれなんてホラーよ。


 そして今日本で住んでいる家も、銀杏並木の近くなのです。だって、不動産やさんと物件選びしてたとき、この銀杏に葉っぱが生えてなくて、銀杏ってわからなかったんですよ! 銀杏並木、歩きたくない……。ここも雌雄が混じって植えてあるので、大量の銀杏と出会うことになります。まあ日本なので、みんなで掃除するからある程度綺麗には保たれるんですけどね。


 ちなみに秋の香りとしては、金木犀が大好きなのですが、その昔クラスメイトに「ああ、トイレの芳香剤の匂いね、アレが好きなの」と言われて以来こっそり愛でることにしています。いい香りだからトイレの芳香剤に選ばれたんだろうに……。それを言えばラベンダーだってトイレの芳香剤に使われているじゃないか。金木犀だけ風評被害が酷すぎるのです。秋の風物詩が◯◯やらトイレの臭いとかなんて辛すぎる。そんな愚痴がこぼれる秋の風景でした。

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