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42.日常生活は連想ゲーム

 みなさん、お気に入りのお店はありますか。

 私が大好きなのは100均とブックオ◯とドラッグストアです。現状、ど田舎に住んでおりましてこれらのお店がどれも遠いというとんでもない事態になっております。ああ、都会に住みたい!


 さて今回は、ドラッグストアで思い出したお話をしましょう。日本のドラッグストアは医薬品から、化粧品、日用雑貨までなんでも揃いますよね。けれど、中国のドラッグストアにはちょっとした住み分けがあります。


 日本のマツモトキヨ◯みたいなドラッグストアもありますが、そういう店には大抵の場合、医薬品がありません。置いてあるのは、化粧品関係やシャンプーなどの日用品、そしてどんなに狭い店舗でもバリエーション豊かな避妊具(もうこれは中国では当たり前)。どのジャンルの商品でも、「买一送一(一個買うともう一個付いてくる)」というキャンペーンをよくやっています。いや、そういうのはいいから、素直に半額にしてくれ。


 じゃあ、医薬品はどこで買うのか。日本にも昔ながらの薬局がありますが、ああいった感じの薬局(まさに文字通り薬屋さん)で買うのです。マツキヨみたいな雰囲気の明るい小綺麗な薬局もありますが、往々にして物凄く古くて狭い昔ながらの店舗がほとんどなので、購入は緊張します。圧迫感もありますし、薄暗いんですよねえ。


 盗難防止もあるのでしょうね。狭い店舗ほど、ショウウィンドーとショーウィンドーの向こう側にある棚に薬が並べられているんです。はい、それでは中国語が苦手な場合、何が問題になるでしょうか。それは、手にとって調べることができないので、何の薬かわからないということなんです。


 漢字を見ればわかるのにいと思いながら、でかい声で自分の症状を伝える辛さよ。ピンポイントで薬の名前を言えないから、症状を言うしかないわけです。風邪とか頭痛なら良いですけれれど、ややこしい症状だと伝えるのすら難しかったり……。


 じゃあ、自分で手にとって探すことのできる店舗なら問題ないのか。いえ、この場合には監視役なのか必ず店員さんが寄ってきます。「自分で探すから!」と伝えても、絶対に引き下がりません。小心者ですから、隣に他人がいるとゆっくり探せないんですよ。


 なのでもう説明する気力も捜索する元気もない時には、わざわざクリニックに向かいます。でもね、日本と違って調剤のお薬なんて出ないんですよ。結局出されるのは、街に置いてある市販のお薬なんです。馬鹿高い値段を払ってそれかよ(涙)中国と日本では、医薬品の分類の仕方と販売方法が違います。病院内で薬を受け取ると高いから、どうせ同じものなんだし街の薬局か、医療市場で買いなよと看護婦さんに言われたりもします……。それに大きな総合病院に行かないと、外傷の治療はできないことがほとんどなんですよねえ……。


 というわけで、基本的に大抵のお薬は日本からもちこんでいたのですが、時々切らしてしまうものがあります。その代表が、外傷薬です。多少の擦り傷、切り傷ならクリニックに行く代わりに自分で治療を行うということもありますが、出番がくると一気に使ってしまうんですよね。今でも覚えているのは、「サージカルテープ」を切らしてしまった時の出来事です。


 「サージカルテープ」というのは、湿布を固定させたり、ガーゼを固定させたりする時に使う医療用のテープのことです。動きが雑な私の必需品でもあります。これを買いに出かけたのですが、何せ辞書もスマホもなく、財布だけ持ってのノープランです。見ればわかると思っていたのですが、そうは問屋が卸しません。


「いらっしゃい。何が欲しい?」


 気の良い店員さんが、ずっと私を案内しようと張り切っています。いや、本当にそういうのはいらないから。放って置いてくれ。でもあまりにもしつこく尋ねられるので、なけなしの語学力をかき集めます。


「ええと、貼る時に使うもので……」


「OK、わかった! あなたが欲しいのは『膏药(gaoyao/ガオヤオ)』ね!」


 あちらの国の店員さんは、大体最後まで話を聞いてくれません。謎の自信とともに連れていかれたのは湿布コーナー。日本で使うような湿布ではなく、漢方などの真っ黒な謎の成分がゲル状に布に張り付けられたものがたくさん置いてあります。「貼る」から連想されたのはこれ。まあ間違ってはいないです。欲しいものとは違うけど。


「うーん、そうじゃなくて、怪我をした時に貼る、シールみたいなものなんだけど……」


「ああ、なんだ、『创口贴(chuangkoutie/チュアンコウティエ)』が欲しかったのね」


 再び場所を変え、連れていかれたのは外傷薬コーナー。そうだよ、ここだよ、私が来たかったのは。 しかし差し出されたのは、「絆創膏」。ああああ、惜しい。 確かに怪我をした時に貼るシールみたいなものだけど。 ってか、私の言ったことをまさに体現しているものなんだけれど、それじゃあないんだ。それにこのエリアに置いてあるはずなのに、どうしてないんだ、サージカルテープよ。消毒薬も、包帯も、ガーゼもあるのに、なぜ!


 そこで私は閃きました。


「お姉さん、私は透明じゃない、『透明胶带(touming jiaodai/トウミン ジャオダイ)』が欲しいのよ。紙でできていて、怪我をした時にこの上に貼るの」


 ガーゼを持ったまま、私は熱弁します。『透明胶带(touming jiaodai/トウミン ジャオダイ)』というのは、セロハンテープのことです。そこでお姉さんも、ようやく晴れやかな笑顔になりました。


「ああ、あなたは『手术胶带(shoushu jiaodai/ショウシュウ ジャオダイ)』が欲しかったのね」とにっこり。直訳すれば、「手術用粘着テープ」です。さっさとレジ横の別コーナーに行って、持ってきてくれました。なぜ、同じ場所に陳列しないんだ!というツッコミは野暮なのでしょう。とはいえ、たかが1個5元(約100円)程度のものを買う客に付き合ってくれたお姉さん、どうもありがとう。あの日以来、私もサージカルテープの名前はしっかり覚えました。


 というわけでみなさん、粘着テープはどんな種類であっても『胶带』ですからね。覚えておくと、きっと便利なはずです! ちなみに消毒薬は、そのものずばり『消毒药(xiaoduyao/シャオドウヤオ)』です。やっぱり漢字語は、そのまま使えることが多くて便利だよなあ(しみじみ)

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