41.エンゲル係数が高すぎる
突然ですが、海外暮らしってどんなイメージがありますか?
アメリカに住めば英語がペラペラになる、欧州はなんだかオシャレで旅行が楽しい、アジアは物価が安くて日本よりも豪華な暮らしができる。そんな感じでしょうか。特に中国の場合は、そう思われがちなような気がします。(ものすごく大雑把なイメージですみません)
先日も久しぶりにお会いした学生時代の恩師に、「定年退職後は中国の◯◯(かなり都会)で遺跡発掘のボランティアをやりたい。住む場所の確保なども含め、月に10万あれば生活できるだろうか」と聞かれ、困ってしまいました。
先生の夢を応援したいのはやまやまなのですが、正直に言って月に10万円で生活をすることは困難です。正確に言えば、日本並みの生活をすることはということですが。
例えば中国では、普通の家に住むことがとても難しいです。まあ、これは日本以外の国全般に言えることなのですが、日本のような洗い場付きのお風呂なんて滅多にありません。洗い場どころかバスタブなし、シャワーブースだけの部屋だって多いのです。しかも水圧が劇的に低くてストレスフル。トイレだって未だにトイレットペーパーを流せない物件の方が主流です。
見た目は豪華ですが、断熱材がしっかりしていないので冬は極寒、夏は酷暑みたいな部屋がほとんど。いきなり台所が水没することも、壁が崩壊することも、天井が落ちてくることも、窓ガラスが突然割れることも、エレベーターに閉じ込められることもあります(すべて経験済み)それでも家賃は億ション並み。ちなみに最近の上海は家賃が高騰していて、私が上海に住んでいた頃のマンションの家賃は1.5倍くらいになっているそう。あの頃もアホみたいに高かったけれど、今ではもう絶対に住めません。(よって日本人居住区も以前とは分布がちょっと違っていたり)
これだけではありません。日本人の場合、家賃の次に生活費の大部分を占めるのは食費ではないでしょうか。家計の消費支出に占める飲食費の割合のことをエンゲル係数と呼びます。この数値が高ければ高いほど、生活水準は低いとされますが、この数値が死ぬほど上がるのが中国です。
例えばお米。日本人の口にあうお米を買うと、2キロで100元近く(約2000円)くらい平気でします。ちなみに、日本からの直輸入を買うと笑えるような値段になります。無理。
生食可という触れ込みの卵は1パック30元(約600円)近くしますし、食パンは8枚切りで25元くらい(約500円)。そして日本人が購入する牛乳(大体朝日か明治の牛乳)を買うと、950mlで30元(約600円)近くします。有機野菜は、買うのが勇気がいる値段です。「ゆうき」だけに。ああっ、石を投げないで。
日本でも成城石◯とか滅多に行かない庶民なのです。卵とか特売品の99円のもので満足なんですよ。それなのに、中国暮らしではどんなセレブだよって感じですが、普通を求めるとこのレベルに平気でなります。もっとゴージャスな方もたくさんいました。(ちなみに面倒なんで1元20円として換算しています。今の中国のレート、1元17円くらいかしら?←疎くてすみません)
外食も中華ならある程度お安めですが、日本食になるとイマイチレベルでもそれなりの価格帯。美味しいところは、やっぱり高い。日本の外食産業が安すぎると海外で言われるのもよくわかります。本当、日本のサービス業ってもっと値段をあげないと割に合わないのではないでしょうか。中国の店員さんとか見ていると、本当に日本の店員さんの質の高さに驚かされます(失礼)
そして忘れてはいけないのが、医療費です。海外旅行保険に加入しておかないと危ないのが海外住まい。私が住んでいる時にも、海外旅行保険でカバーできるかできないかでちょいちょい揉めるのを見聞きしてきました。(目の前で交通事故で運ばれる日本人を見たことがあります。しかもその方無保険だった……)海外旅行保険に入っていてもそれで終わりではありません。あれ、更新のたびに高額になっていくんですよ。初年度ですらうん十万払うとかほんとシャレになりません。
安いものはものすごく安く手に入るのですが、「日本と同じレベル」、いわゆる「普通」を手に入れるのは難しい国です。自分の意志で海外移住を決める方はやっぱりすごいなあと、数年とはいえ居住経験があるからこそしみじみ思う石河なのでした。日本、万歳。小心者の一般人である私にとっては、日本で暮らすのが一番幸せです。