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永遠の初心者と学ぶ、試験に出ない中国語  作者: 石河 翠


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21.マッサージのお話

今回も下ネタが入ります。苦手な方はご注意ください。

 以前勤めていた会社では、中国に出張する機会が度々ありました。


 女性である私には特にメリットはないのですが、男性陣は中国で結構美味しい思いをなさったようです。その一つが「按摩(an mo/アンモウ)」です。まあこれまた毎度のことながら、読んで字のごとく按摩あんま、つまりマッサージのことでございます。上海などの大都市には、「マッサージ」ならぬ「マッサーヅ」などの看板が街中にあふれています。(カタカナがわかりにくいようで、よく誤表記されています)


 それでですねこのマッサージ屋さん、もちろん通常のマッサージ店であることもありますが、いわゆる「特別なマッサージ屋さん」であることも多いのです。まあわかって行くぶんにはいいと思います。病気とたまに行われる公安による一斉摘発にご用心ください。問題は、求めてないのにあちらからサービスの押し売りがある場合です。


 同じ会社のAくんは上海出張中、そういう店に間違って入ることを恐れて、店舗を利用しませんでした。その代わりにホテルのフロントにマッサージの利用をお願いしたんです。日本のホテルでもよくありますよね、いわゆる普通のリラクゼーションマッサージのサービスです。疲れ切っていたAくんは、肩と腰を揉みほぐしてもらうのをそれは楽しみにしていたのだとか。


 そして「ピンポーン」と軽やかなチャイムの音がなり、ドアを開けて呆然。そう、ドアの向こうにはピッチピチの短いスカートにストッキング、派手なお化粧をした若いおねーちゃんが立っていたのです。


 「はあい、特別なマッサージよん♪」。そう声をかけられたAくんは真っ青になったのだとか。呼んでない、帰ってくれと言っても日本語は通じないし、例え通じてても帰るとお金がもらえなくなるので女性はなかなか帰りません。まあアレだ、チェンジは無しなのです。結局妥協案として、そのおねーちゃんに特別なマッサージではなく、通常マッサージをするようにお願いしたのだとか。


 けれど、下半身のマッサージのプロだったおねーちゃんの、リラクゼーションマッサージの実力はイマイチだったそうで、金を払ってえらい目にあったとボヤいておりました。さて、そんな気の毒な彼のことを爆笑していた罰が当たったのでしょうか。私もその後ついにマッサージの受難を受けてしまったのです。


 私が訪れたのは、とある有名なチェーン店。まあ女性客なので、美人局つつもたせ的なものもないだろうとタカをくくっておりました。ちなみに中国のマッサージ店では、女性客には男性店員が、男性客には女性店員が付きます。別にイヤらしい意味があるわけではなくて、陰と陽の気の組み合わせとして、男女で組み合わせるのが望ましいと言うのです。もちろん同性がいいと主張すれば替えてもらえますが、なにぶん中国語が微妙なのでそれすら大変。


 ですので、正直男性と話すのは面倒だなあと思いながら、ベッドに横になりました。だって、マッサージに来るということは疲れているということなのです。正直、中国語もおぼつかないのに相手と会話する気力もありません。まつ毛エクステの施術中にすら爆睡する私ですから、マッサージ中なんて寝てたいんです。


 しかし、私の担当の彼がしゃべるしゃべる。もともとあちらの国の方はおしゃべり好きですが、何年?(中国では年齢の数え方が日本とは異なるため、干支で確認することが度々あります)から始まり、プライベートまで根掘り葉掘り聞いてきます。正直無視したいのですが、もう劇的にしつこい。それにね、流さずにちゃんと聞いておかなきゃいけないこともあるんです。


 例えば、マッサージ中にオイルを使うかどうか。相手の勧められるままにオイルを利用すると、定価のマッサージ料金より数倍高い高級オイルを買わされることもあります。あなたのためにひと瓶開けたとか、常套句です。怖すぎだろ! というわけでオイルの使用は丁重にお断りするのですが、何故か彼はしつこく勧めてくるんです。しかも内緒にしてくれるなら無料でいいと。


 めっちゃ怪しいですやん! これはふっかけられるかもしれないと、お財布の中身を考えながら青ざめる私。でも仕方ありません。なぜか事前に注文していたコースとは違う、高いコースのマッサージを施されていきます。ああ、ぼられるんや。諦めよう。そう思ったその時です。


「君のために頑張ったんだ。僕こんなに汗掻いちゃった。君の手で拭って」


 いきなり、額の汗を拭わされました。ぎょええええ、きったねー!!!!!

 そのまま彼は突っ走ります。


「ねえキスしよう?」


 しねーよ!


「じゃあ、僕の頬にチューして?」


 誰がするかボケ!


「ねえ、今度マッサージが必要ならお店じゃなくて、僕に電話して。気持ちいいこと、いっぱいしよう?」


 ねえ、それどういうこと? 店が仲介しないから君がまるまる儲かるってことなの? それとも私がチョロそうってことなの? ねえなんなの?


 もう早く帰りたくて帰りたくて、仕方ありませんでした。最終的に結局規定の一番お安い料金で、めちゃくちゃサービスしてもらってるわけですが、本気で焦りました。だって個室だし、薄暗いし……。大体マッサージ屋さんの部屋はそういう感じなのです。


 その後会社で報告したところ、「石河、マッサージ屋でナンパ事件」として笑われたのですが、正直これってナンパレベルで笑っていいものか悩みます。大体ナンパされたこともないのに比べようもありません。いきなり「すみません一目惚れしました」とか言われてつきまとわれたことならありますけど、それって宗教の勧誘でしょう? もう怖いよ、なんなの?


 というわけで旅行に行かれる女性の皆様、いくらチェーン店でもモラルは店員さんによって異なります。お気をつけくださいませという回でした。



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