10.「天然美女」とぶりっ子あれこれ
第9話で、整形美人を『人造美女』ということを覚えましたが、ここで新たな疑問が出てきました。それなら、整形していないもともとの美人はなんというのでしょう? ただの『美女』ですか? 困ったときは、すぐさま先生に質問です。
「そうですね。整形していないことを強調したいなら、『天然美女』でしょうか」
『天然美女』ですと?! 何だか美人なだけでなく、ぼけぼけキャラ属性まで付属しているような雰囲気です。でもこれは、容姿のことであって、別に性格には言及してないんですよね。じゃあ、日本語の『天然』って中国語では何というのでしょうか。しかもこれ、私のおぼつかない中国語で何と質問したらいいのでしょう。仕方ないので、何とか一生懸命、例を考えてみました。
「例えば、レンコンってハスの花の根っこですよね。そして池の中、もっと言うなら泥の奥底で成長しますよね。でも日本語でいうところの『天然』と呼ばれる女性は、その知識を知らなかった時にこんな風に答えるんです。『ええ、知らなかったあ。レンコンって果物みたいに木の上になるんじゃないんだあ。すごいねえ、不思議い』。こういう女性のことを、中国語で何というのでしょうか?」
中国語の単語をかき集めて、何とか即興で例も考えて説明した私に、先生は不思議そうにこう言いました。
「石河さん、それってただの『傻』(=馬鹿)じゃないんですか?」
はい、すみません。先生のおっしゃる通りですが、こういう女性が美人なら男性から「可愛い天然ちゃん」と言われてちやほやされるわけですよ。お顔が残念だと、「バカ」と言われるのでしょうけど。
そういえばOL時代に、枝豆は大豆がまだ若いうちに収穫したものという話をしたら、社内の先輩と天然ちゃんに信じてもらえず、部内で笑い者にされたことを思い出しました。もう数年前の話ですが、私はリアルさそり座の女なので執念深いのです。あの女性は『天然』じゃなくて『養殖』もしくは単なるぶりっ子だったと、私はにらんでおります。
まあこんなそんなで、可愛い声を出したり、くねくね動いてみたり、他の例えを探しているうちに、大体3種類の言葉があることがわかりました。
まず、『做作』です。これは、動作がわざとらしくて不自然なこと。男性にも女性にも使える単語だそうです。
「私が女性だからかもしれませんが、男性が可愛いと言っている女性を見て、『做作』だとイラっとしますね」というのが先生のお言葉です。
次に『嗲』という言葉。これは声が甘ったるくて、わざと出しているような感じがするというお話でした。動作と声に分かれて、単語が存在するのが面白いですね。先生もお友達に、そう言ってたまにツッコミを入れることがあるのだとか。
最後が『卖萌』だそうでして、日本語の『萌え』からきているのだそうです。もともとの中国語では、『萌萌』というのは、赤ちゃんや小さい子どもがぷにぷにしていてとっても可愛いという感じらしいのですが、『卖』という、「ふりをする」「売りにする」という意味をつけることで、『可愛い子ぶる』というニュアンスがうまれたそうです。
「メイド喫茶のメイドさんは、『卖萌』ですよね。とっても可愛いです」とニコニコしながら話す先生はとても可愛いです。
先生ったら羨ましい、メイド喫茶でそんな可愛いメイドちゃんに出会えたのですね。私が一度だけ行ったメイド喫茶のメイドさんは、居酒屋のアルバイトから転職したばかりだそうで、かなりガテン系でした。
どうせなら執事喫茶に行けばよかったと今では思っております。というわけで、意外と細かい『ぶりっ子』あれこれなのでした。