1.美人家庭教師は「腐女」でした。
初対面の方とお話をするときに、よく使うフレーズがあります。
「あなたの趣味はなんですか?」
どんな相手ともある程度、話のキャッチボールができる魔法の言葉です。
そんな魔法の言葉を粉砕してくれた方、それが私の家庭教師の先生です。
中国東北部出身の20歳。真冬になるとマイナス20度を下回る地方のご出身です。色白のおっとり美人な先生は、初対面の自己紹介でこう話してくれました。
「初めまして。趣味は『男男小説』を読むことです」
一瞬、私は考えました。しかしやはり何のことかわかりません。
ファンタジー、SF、推理小説、もしやラノベ?
再度質問をした私に、先生は笑ってこう答えました。
「私は『腐女』です」
勘の良い方はもうお分かりでしょう。
そう、『男男小説』とは、ボーイズラブのことだったのです。BLでも中国語として通じます。もちろん、『腐女』つまり腐女子も日本語から持ち込まれたものです。
初対面でこの言い切り具合が恐ろしいのですが、先生はとっても優しくて、教え上手な方です。
このエッセイに登場するのは、中国語初心者の石河翠です。
家庭教師の先生との会話はオール中国語のため、石河の意訳や細かいニュアンスが間違っている場合がございます。
どうぞ間違いを見つけた際には、そっと優しく注意していただけると幸いです。