第1巻「Fourth Wall Breaking」:7章
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主POV:冷泉
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翌日の深夜、カメリオは僕のアパートの屋上に横になって、疲労で息切れしている。彼はビーム拳銃を持っている両手を差し伸びて、退き金を引き続けるが、いくら引いても銃から何も出てこない。
幻覚状態として現れて、カメリオの隣にある記録書を見て、僕は彼に話す。僕たちは彼のメタキャラとしての身体能力の限界を試していたのさ。
「やめとけ、お前の指が折れるまで引いても何も出ないよ。」
カメリオは単調で話そうとしているがその声はまだ途切れ途切れだ。
「これぐらいやらせてくれよ、話はちゃんとまだ聞いているから。」
「ならいい。ジャンプ、ダッシュ、アクロバット、バランス、スタミナ、柔軟さ、全てオリンピック選手レベルだなんてね、まぁ少なくともお前の体重の範囲では、結構やるな。」
「そうだと言っても俺に取っちゃダウングレードされた気分だけど。」
僕はため息をする。
「仕方ないだろ、お前は今この世界にいるから、能力は現実世界の物理法則と人体の限界が掛けられている。もうアニメの中みたいにジグザグに走るだけで機関銃を避けるなんてもうできない。それにこの世界にマナフスキー粒子なんてないからその銃は使えないよ。」
カメリオは不満の文句を出す。
「それが問題だよなー、俺にはリベルティがないだけでなく、銃も使えないし、自由にも動けないし。」
「まぁ銃は完全に使えないわけでもないかもしれないな、メリケンにして使えるだろ、投擲もできる、どうせ変身するたびに戻ってくるからどこかに失くしても心配ないし。それに正直に言うと僕はお前がリベルティを持っていないのはよかったと思っている。」
「なぜそう言うんだ!?ガンダインはパイロットの分身だぞ!」
「いや・・・・・・パイロットが5話に一度自分のガンダインを自爆しているガンダインアニメもあるが・・・問題はそこじゃないか。
まぁガンダインがあっても一番大問題なのはお前の銃みたいにガンダインはマナフスキー粒子がなければ動けないし、動けるとしても街中で巨大ロボなんて使えないし、フルサイズで存在するだけでも目立ちすぎるし、お前のガンダインは輝く翼まであるからね。」
言葉の返事は返してこなくても、カメリオはやるせない目で自慢の『無双』ガンダインは使えないと言った僕を睨むが、僕はそのまま話しを続ける。
「それに燃料はどうする?修理は?そもそもあんな物どこに隠せばいいんだよ?マナフスキー機能を使えるとしても、この世界にはなぜ人型の巨大ロボが究極キャノンの装備や、飛ぶ乗り物として使用に適さないとかというまともな論文もあると思うけど。」
ガンダインを失くして、自分の価値が『究極のビームガンダインを操縦する超兵』から『一般人より体力のある人間』に下がらせた現実世界の問題に向き合わせすぎたら、カメリオの表情は前よりも不満になっている。
なんて皮肉な逆転だ、カメリオが自分はパーフェクトな主人公だと自慢して僕をイライラさせることから、今度は僕がそっちにパーフェクトさにある欠点に注目させてイライラさせる。
「だーもう、面倒くさいなぁ、これって不公平だろ?俺はいろいろ制限されたのにあのリスはアニメのまんまの能力を持っているのかよ。」
「PQだってアニメと違っていろいろな限界があると思うけど、例えばアニメに岩ポタモンからタックルされても平気だが、この世界では車に轢かれたら怪我だけではすまないだろうな、それに僕たちはあいつの電源の制限という弱点をもう利用したろ?
そしてなにより僕たちはあいつに勝てたんだよ、つまりPQはアニメから70%の能力を保てて、リベルティがないお前の方は0.01%しか持っていなくてもあいつに勝てたんだからそれは別にいいことじゃないか。」
カメリオはようやく引き金を引くのをやめるが、自分の能力の喪失や弱化は不公平だと文句を言い続ける。
「だがお前は俺らが身体を変身できるのが、特に質量の変化が多い雛芥子の場合の方がマナフスキーフィシックスより物理法則を破っていると言ったじゃないか?」
僕は数秒静かになる。
「確かにそうとは言ったが、それ以外に僕たちは物理法則と人体の限界を破れることは何もできないのも事実だろ、それにさっき言ったとおり、街中でリベルティは使えないところはまだ変らないから。」
僕は止まらずに今の彼は『本当』の彼と比べ物にならないと何度も何度も言うのを聞いたカメリオの表情はまた不機嫌になる。今日の僕は寛容な気分なのにね。
「分かったよ、今の俺はどうやってもアニメの俺みたいにはなれないと。」
「それは役に立てるならぜひフウロに聞いてエアソフトガン買ってやれるけど...」
いや、待て...
「いや、さっきの話し、学校のカバンでエアソフトガンを持ち歩きたくないんだ、いろいろやばくなりそうだから。」
それはまだ試さなかったが僕はカメリオに変身する時にジャケット、メガネ、靴はしてもしてなくてもカメリオはどうせ同じ服装で現れて僕の服装は完全に消される。まるで僕の身に着けている質量は関係なくカメリオはいつもデフォルトの姿で現れるようだ。
そして変身で僕の服装は僕の肉体と共に『消える』が、僕が立っている地面は影響されないままで残る、つまりこの変身の仕組みは僕の服と地面を区別できるようだ。
だから僕が持っている物を僕の服と共に『消させたくなければ』、それを僕から離れる距離に置いてから変身して、カメリオに拾わせばいい。
だがそれでもそれはナイフだろうかエアソフトガンだろうか、僕はできればそれを学校に持っていきたくない。それがバレたら洒落にならないからね、フウロだって銃を持って登校しないし。
カメリオは両手を頭の後ろに動いて枕にしようとするが、手に持っている銃が当たり硬いのか、心地いい枕にはならないようで前より更にイライラさせてしまう。
「だー、こんな使えない銃を持ち続けるしかないなんて、面倒くさいなー。」
「もう一度言うが、お前はその体型で絶好調でいるから、オリンピック選手並な体力があることはもう充分な恵みだよ。それで気分よくなるならこう考えてもいい、僕たちのこのままでは僕はお前の後ろを見張ってやれるんだ、戦略を考えるのも手伝える。」
「そうだな、少なくともそれには感謝しないと。」
「感謝するのは当然だ、僕の助けは安くないからな。」
カメリオは大きく息を吐き出してまた僕に話してかけてくる。
「ところで冷泉、お前にちょっと聞きたいことがあるけど。」
「なんだ?」
「俺は、お前はすごくリリックスに献身しているのにそれほど彼女の曲を聞いていないと気付いたんだ。お前は俺の器になれるほど彼女に献身しているから、お前はいつでもヘッドフォンをして彼女の歌を聴くタイプかと思ったよ。」
「それは僕は僕自身の愛情を経営しているかな。」
「愛情を経営する?」
「だってさ、いくら一曲が好きでも、本当にずっと毎日で24時間聴くとそれはそのうちに飽きるだろ、それこそ僕は嫌なんだよ。リリックスに飽きると感じたくないし、彼女に依存するほどに情けなくなるのもイヤだ。だから本当に聴きたい時だけに聴いて、無理矢理彼女の声で自分を洗脳しようとかはしないのさ。
毎日聞くもんじゃないからこそ大事にできるだろ?僕はリリックスを本当の人間として見ている。僕の満足のための道具でもなく、同時に女神としても見ていない。僕はリリックスを自分が手に入れられる者であると同時に彼女に対等に扱われたいんだ。それがどうした?」
「いや別になんでもないんだ、俺はただお前が自分が聴く物を俺にも全部聞こえると緊張しているから普段より彼女の曲を聴いていないかと思っただけさ。」
「アホか、僕はこれほど彼女を愛しているのに、お前みたいな奴が聴いているかどうかなんて知ったことか?」
カメリオは夜空を見に仰ぐ。
「だからただ気になっただけだよ。でもなるほどな、お前にメタキャラの器の資格をもたらせたのは熱心さ、理想だけじゃなく、二次元キャラにもっと近くて現実的な絆を感じられる能力か。」
こんなギャリー・ストゥーが僕の気持ちを理解してくるなんて気持ち悪く感じてくるから僕は話題を変える。
「とりあえずそれでお前はもう機嫌がよくなったのなら次のテストに進もうか。」
「次のテスト?」
「お前の身体能力の限界以外に、僕はお前はこの世界でどれほどにそのギャリー・ストゥー精神を曲げられるか試したいんだ。」
カメリオは僕に奇妙な目で見て、僕に説明させる。
「心配するな、お前に人を殺して欲しいとかじゃないから、ただいくつかの質問をするだけさ。お前はR-0から見たとおりに、ガンダインアニメの中でもなにがいいか悪いかは人により異なる。
だがこの現実世界は違うんだ。現実にはジャンルはないから、お前はバイアスの原作者に描かれた主人公だからって正しくならない状況に備えるため、お前は僕と生活することになるから、自分が間違っているといっぱい言われる覚悟をしておくんだな。」
カメリオは銃を収めながらため息をつく。
「あぁ、全く、分かったよ、ならさっそくそれを始めてくれ。」
意外だね、その抵抗のなさは。僕はカメリオはまだ自分が浅い原作者が作ったできの悪いライティングだと言われたらイライラしてくるかと思ったよ。
これはR-0の影響、僕に責められるのにもう慣れて、そしてこの世界にいる自分の限界を受け入れるしかない結果だろうか。
どうであれ、これで話しやすくなるならそれでいいんだ。
「これはハーヴァード大学の講義に使われる功利主義の簡単な質問だからよく聞け。お前は橋の上に立っていて、下には線路が敷かれた丘がある。お前は下に3人が乗っている、ブレーキが壊れていて、暴走しているトロッコが見えて、止めなければそのトロッコは下にある崖から落ちてしまう。
お前の隣には線路を切りかえられるレバーがある。それを引いたらトロッコは別の線に移って安全に止められる。
だがこの新しい線は毎時間数万人に使用されている線だ。ほら、山手線みたいな。だから別の線からのトロッコをそこに移したらその線は数時間使えなくなる。お前はそのレーバーを引くか?」
カメリオはギャリー・ストゥーじゃなくても誰でも同じく選ぶ即答を出してくる。
「当然だろ、そうすれば3人の命を救えるから。別の線が数時間使えなくなるぐらい、誰も死なないし大した問題じゃない。」
「それはどうかな?お前はみんなが遠回りすれば平気になれると断言できるのか?その時にその線を使うはずだったとてつもない人の中に、病院まで急いでいる人がいたら?遅刻したら仕事をクビになる人がいたら?彼女や娘が人質にされて、身代金を遅れずに届けなければその人質を殺される人がいたら?」
流石にこの可能性に向き合わされたガンダイン主人公は何も答えられなくなる。だから僕はどや顔で話を続ける。
「それはただで街を崩壊できる力を持つお前たちみたいなキャラの問題だよ。家や仕事場を失うなんて些細な不都合だけじゃない、それは人生を破壊するんだぞ。でもまぁ、花火みたいな綺麗なビームを撃てるならそれぐらいはどうでもいいのだろうね?」
カメリオはすぐに言い返してくる。
「ならただその3人を見殺しにしろって言うのか?大体その挫折が起こる可能性ってどれぐらいだよ!?」
「まぁこの質問に正解なんてないよ、ただ心得させたいだけ。数万なのはいい数だから、何が必要かどうかは可能性次第だ。どちらにせよ僕だってそのレバーを引くけど。」
無論、正解なんてないと口にしていて、レバーを引くのはいい決断だと賛成しているとしても、僕の口調は明らかにその行動の結果の可能性を考えようともしないカメリオをバカにしている。
僕は次の質問に続く。
「次の問題だ。最初の問題と同じシナリオで崖から落ちてしまうトロッコがあって、その前のレバーもまたあって、だが今度のレバーは線を切り換え用じゃなく―」
「はぁ、よかった。」
カメリオは僕に邪魔をしてくる、この第2の問題にレバーを引くことで悪い結果にならないと思い込んでいるようだが、僕は説明を続ける。
「じゃあ今度はお前の隣には一人のデブがいて、トロッコの前に立ちはだかれば止められるほどに太っているデブだ。」
「そんなデブいるかよ。」
たった1分内に2度まで僕を遮ってくるカメリオにイラついた目つきで睨み、僕は話しを続ける。
「これはハーヴァードが考えたシナリオだ、僕が考えた問題じゃないから。とにかく、そいつはトロッコを止められるがその代わりにそのデブがその衝撃で致命傷を受けてしまう。
そしてなんとお前のアニメみたいに都合よくて、そのデブはちょうどお前の隣にあるレバーに繋がっている落とし戸の上に立っている。つまりお前はそのレバーを引いたら、そのデブは線路の上に落ちてトロッコを止められる。では質問、お前はそのレバーを引くか?」
今度のカメリオは返事出せなくなった。
「つまりその3人を救うには、俺はそのデブを殺すしかないのか?」
「そうだが、これは道徳のテストだと忘れたのか?」
「それは殺人だぞ!」
「人を救うための殺人だ、しかも一人の引き換えに3人を救える。それはお前がやれなかったことでもないだろう.アニメの中にリベルティで爆発させた数百機のザフを覚えているか?それも生きた人間が乗っていた物だろ?」
カメリオは返事してくる前に表情を真剣にする。
「いいだろう、俺はそのデブを犠牲にすると選ぶよ。これでそのデブはどこかの国の大統領で俺は数千人の人生を壊したとか言わないよな?」
「いやぁ、そいつは普通のデブにしておくよ。まぁ体質はちょっと普通じゃないけどそれ以外に何の重要さはないんだ。今度も僕も同じことやるよ、どうせそんな太ったデブが存在するとしても心臓麻痺で死ぬまで残された時間はもう長くないだろうからな。」
「それはえぐい理由だな。」
「それはどうでもいいだろ。正当化できればなんの理由でもいい、それは議論の基本だ。それに僕はまだ生きている人間が乗っているザフを爆発させたことはないからね。」
カメリオの表情は不満のままだ。
「質問はまだあるか?もう時間を無駄にしないでさっさと終わりにしたいんだが。」
僕は肩をすくめて話を続ける。
「第3の質問は第2と同じだ。暴走トロッコに橋の上のデブ。だが今度はレバーはない。お前は自分の手でそのデブを押すしかない。さ、どうする?」
今度もまた、ただデブを橋から落とす方法以外の状況は僕とカメリオが見てきたのと同じだが、多くの人は真顔でこの質問に答えられないんだ。
中位の道具であるレバーの除去はその殺人をもっと個人的にする。ガンダインを通してザフを撃つのが自分の銃でパイロットを撃つよりやりやすくて、パイロットを銃で撃つのがその同じパイロットを剣で斬るよりやりやすいのと同じ風にね。
「さあガンダイン主人公、お前の答えは?」
カメリオは掌をでこに上げて、答えたくない表情で返事を出してくる。
「全く、押せばいいだろ。」
「意外と即答だな。」
「それは前と違うのは方法だけで、俺が早く答えを出してこないとお前はまた俺が迷わずにザフパイロットたちを殺したと言ってくるだろうからな。」
「そうか、まぁお前はそう言うだろうと思ったがそんなに早く答えてくるとは思わなかったよ。それはどんな意味を持つかはともかく、とりあえずお前との生活は思ったより楽になれそうだ。」
カメリオは座りなおして僕に話す。
「ではこれまでにしようか?俺はもう何もかもに疲れたからもう休ませてくれよ。」
ほう、僕はまだ寛容な気分のままなのにギャリー・ストゥーはこれほどまでイラつきやすいとは、どうやら自分の期待に答えられない挫折は僕が思った以上に彼に影響を与えているようだ。
昨日見たR-0への反応と同じように彼は自分のアニメでこんな気持ちを感じたことはないからがっかりな気持ちにはなれないだろう。
僕は帰って寝たいカメリオの要求に答える。幻覚状態では腕時計は動かないから僕は今何時になっているかは分からないが、多分11時になっているだろうと思って家にいないと姉さんにバレる前にいっそ帰る方がいいか。
「分かった、僕に実体のコントロールを返してから帰ろう。」
「ああ。」
カメリオは僕に変身を戻したら、身体中が疲れてくるんだ。それを一時的に忘れていたよ、疲労はメタキャラから器に移せる物だと。
だがカメリオが最初に言ったとおり、メタキャラは器が摂取したカロリーからエネルギーが必要で、僕はPQとの戦いの時には気付いてなかったが、今度僕はしっかりとカメリオが消耗したスタミナの疲労を感じてきている。
今の僕は手足がすごく重く感じてくるほど疲労に満ち、カメリオの気持ちが分かってくる。だが身体のダメージまで器の体に移らないのは幸いだ。さもないと今頃の僕は身体中の筋肉が痛んでいるだろう。
全く、僕は身体中汗に濡れていないことだけでももう幸いと言えるだろう。こんな乾いた体でこれほどまで疲れるのは確かに違和感があるけど、僕はもうここに来る前にお風呂に入ったからもう一度入ることなく、すぐに寝られるのはよかったんだ。
勿論、僕のアパートまでの帰り道はただエレベーターまでの距離しかないが、部屋に着いて頭が枕に触れた瞬間、僕はすぐ深い眠りに落ちる。
激しい運動の後にすぐに寝るのはよくないと分かっているし、そもそも僕の身体は運動したとは言えるかどうかは分からないが、今そんなことはどうでもいいよ。
変身して以来カメリオも完全に沈黙しているようだから、奴も変身したらすぐに寝たのかな?