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第1巻「Fourth Wall Breaking」:9章

・・・・・・・・・・・・・・・

主POV:雛芥子

・・・・・・・・・・・・・・・

今日は月曜日、PQがレーセンさんを襲った事件でアニキがわたしのTDSを没収した5日はもう過ぎた。

わたしがTDSを持てなかった5日、わたしはポタモンを見られなかった、タマゴをかえせなかった、木の実を集められなかった、日計の贈り物をもらえなかった、70、000以上のポタマニーと750,000以上の経験値分の日計ポタモンコーチバトルを戦っていなかった5日。

いくら好きだと言っても、自分のカワイイ、カワイイ妹をこんな風に拷問する兄なんているの?酷すぎるよ!むーんっ!


わたしはベッドでポタモンのふわふわ毛布の上に横になっていて、ヌメルドラの大きいぬいぐるみを抱いている。抱きしめたくなるポタモンにしては、ヌメルドラは意外と対戦レベルの強い防御力を誇る6世代から来た太ったナメクジドラゴンのポタモンで、わたしが4番目に好きなポタモンよ。

わたしは筆箱を持って、ポタモンのタマゴをかえるために何時間もゲームキャラをバイクでグルグル走り回せるスライドパッドを押す感触を真似るために筆箱に親指を押している。でももちろん、いくらそのエアースライドパッドを押そうとしても、筆箱はタマゴがかえっていると警告して震えてこない。

どれほど想像力があっても、妄想はわたしを慰められる限界がある。乙女の心がこの拷問に耐えられる限界が。

「むぃ――――――!!もうダメ!!ポタモンやりたいよぉ!!」

わたしはベッドから勢いよく座り直し、筆箱とヌメルドラのぬいぐるみを投げ上げた。筆箱はわたしのとなり、ベッドに落ちるが、大きいヌメルドラのぬいぐるみはわたしの頭に落ちて横向きでベッドに落ちた。

「ぬっ!」

わたしはヌメルドラの顔にちらっと見たら、その大きな翠の目はまた丸くて、その小さい口にまたとぼけたような微笑をしているが、その顔には喜びが見えないよ。

それはヌメルドラがわたしを慰めるために笑っているが、わたしに見つめ返しているその目は涙を浮かべている。ヌメルドラはわたしに話そうとしているようだ。

<何でボクらと遊ばないの、ポッピーちゃん?>

わたしは両手を挙げて叫ぶ。

「遊びたいよ!でもあのバカアニキのせいでできないよ!ポタモンやりたいよ!ポタモンやりたいよ!ポタモンやりたいよぉ!!」


わたしはポタモンのぬいぐるみがわたしに話しているほどに幻覚を起こしていると気付くと、PQは幻覚状態に表れて、わたしの机の上に座る。

「仕方ないよ、ポッピー、ただ後・・・・・5日待てばいいキュ。」

「いや!5日なんてムリ!今すぐやりたいよ!わたしのポタモンを!わたしのポタモンを!わたしのポタモンを!」

PQはわたしの黄色ノートパソコンに尻尾を叩いて、わたしの悲しみを解決する方法は他にあると話す。

「じゃあネットでポタモンの動画を見ればキュ?」

「いや!他人がポタモンをやる動画を見たら余計に自分でもっとやりたくなっちゃうだけでしょ!?」


その時、わたしは横たわりながらヌメルドラの隣に落ちている野球帽を拾い上げて、自分に根性のブーストを上がるためにかぶる。

「よし、いいアイディア考え付いた、これからアニキからTDSを盗み返そう、PQ。奪われた仲間は必ず奪い返す、だよ!」

だがわたしが指示を出してもPQはまた動かないままだ、まるでわたしはいつかこれを言うと予想していたように。

「それじゃ本当にTDSが没収される時間が延長されちゃうよキュ。」

「いや、すぐには入らない、襲うのは兄貴が寝た後だよ。そこからTDSを手に入れて、ポタモンをやって、5時になる前に戻す。」

その計画はすぐにわたしのポタモン欲を満足できなくても、少なくともその期待だけでもわたしを落ち着けさせるはず。それでもPQは賛成してこない。

「それでキミの睡眠はどうなるキュ?それじゃ学校の成績に影響が出るじゃないのキュ?それにフウロはもうその手は通じないと教えたろキュ。あいつはもうキミのポタモンセーブのプレイ時間をメモっているから、その時間に変化があったらバレてしまうよキュ。

それにどれほどに必死であっても、キミはセーブできないから深夜の努力は無駄になってしまうのも見たきゅないだろキュ。」

「うぐ!」

PQの答えにひるんでしまい返事を詰まらせてしまったけど、わたしは本当にコーチキャラをTDSの画面に見るだけでもしたいんだけど、その寝る時間に代えた努力が無駄にされる事実がゲームから楽しみを奪っちゃうよ。

わたしは挫折を癒すためヌメルドラのぬいぐるみを拾い上げて抱く。

「バカアニキ、TDSを返してこないとお兄ちゃんと呼んでやるよ。」

「それって・・・・・罰なのかキュ。」

「うん、罰だよ、アニキはそう呼ばれるのが嫌いだから。」

レーセンさんがリリックスへの忠誠を絶対に否定しないのと同時に二次嫁に囚われるキモヲタと呼ばれるのが嫌いなのと同じ様に、アニキも若い女子に『お兄ちゃん』と呼ばれたい人と一緒くたにされるのが嫌いだ。

そしてもちろんどうせわたしはアニキのことをそういう愛情をこもったあだ名を呼べるほどに好きじゃないが(特にわたしにいじめているこんな時では)、イライラさせるために呼ぶ気は満々よ。


PQは机からベッドに跳びかかりわたしの膝に自分のふわふわの尻尾をクッションに使って上に座り、生身のポタモンの接触でわたしを慰めようとする。

「とりあえず落ち着こうキュ、後・・・・」

PQは一瞬止まって、またわたしにTDSがもらえるまで残っている時間をまた思い出させないように、わたしの気を逸らそうとする。

「なんなら一緒に魔法少女アニメを見ないかキュ?」

ポタモン以外にわたしの心を平和にできるもう一つの物だと言えば魔法少女アニメしかないね。PQの言うとおりかも、わたしはこの5日魔法少女アニメを見て過ごせばいいかもしれない。TDSが故障した時、珍しくポタモンの気分にならない時にもそうやって生きられてきたじゃん。

「そうね・・・・」

わたしの許可をもらったら、PQはわたしのCD棚に跳び、わたしが前に一番好きだと言った魔性少女アニメ『分光少女リンゴ・レインボーズ』のDVDを探す。


『分光少女リンゴ・レインボーズ』は高く評価された少女アニメだがちょっと報告キャンペーンが悪かったからあまり人気になっていない。特に魔法少女ジャンルは他の男向けアクションアニメに負けているこの世代向けに放送されたからこそね。

それはビジネスで見ると普段女子向けのアニメは男子向けよりもうけらないからね、女子は男子向けのアニメを見てもおかしくないが男子は女子向けのアニメを見たら変と見られちゃう二重基準があるから。

それでも女子向けアニメを見る中年おじさんがいないわけでもないが、やっぱ少年ジャンルのアニメと比べればもうからないよね。

だからその結果最近の魔法少女は他のジャンルより制作の価値が安くなって、視聴する子供には気付かれないだろうから画質とストーリーのクオリティも高くする必要もなく、ずっと30年前からジャンルにあり溢れていた同じ陳腐の使い回しになってしまう。

『分光少女リンゴ・レインボーズ』もその例外ではない、でも選ばれた少女とか、同行する魔法のマスコットとか、愛と友情の力とか、洗脳された愛とかのベタな設定こそ使われたが、このアニメはそのベタを面白く使えたんだ。

ライターはきっとベタの存在に否定的な反応を心得ているが、リスクの多いその設定を作り変える道に行かず、代わりに子供にも楽しめる方法でフレッシュかつユニークに活用した。

どの魔法少女アニメに用いられるような様々な感情から生まれる力を深く調べ上げ、キャラの感情は具体的にどう設定のルールを干渉しているかと、心理アニメの境界に近寄るほどにキャラの深さに注目しながらも子供でも分かるほどにシンプルにしている。

アニメの主人公は女子中学生である虹村リンゴで、リンゴには虹色で人間の感情を示す7個の聖なる林檎を探す使命を与えられ、その林檎は全部神話に出てくる『イズンの林檎』、『ヘスペリデスの林檎』、『カリステの林檎』、『アヴァロンの林檎』、『プラスレアの林檎』、『アランタイドの林檎』、『エデンの林檎』など林檎の名前に由来された。

ただ可愛いキラキラをモンスターに撃つシナリオより優れているのはキャラのダイナミックとストーリーで『リンゴ・レインボーズ』をアニキとレーセンさんにも楽しめるアニメにしたんだが、それでも『リンゴ・レインボーズ』は秘宝に残るまま。

この『10年間の魔法少女No.1』アニメの座は『リンゴ・レインボーズ』より1年も早く放送され大人気となった『月光蝶のオーロラ・マギア』に持っていかれたんだ。それは魔法少女ジャンルに暗くて厳しいというような描写を加え革命を起こしたアニメだから。

『オーロラ・マギア』には多くの重要キャラが本当に死ぬところとか、世界の終わりのテーマを本当に暗く描かれ、マスコットが悪い奴だったと暴露するなどの展開がある。

そして魔法少女ジャンルだけじゃなく、オーロラ・マギアの『重要キャラを殺そう』というのは他のジャンルまで広がり『大事なキャラを殺せるなんてシリアスだなー』っていうようなもったいぶったトレンドになっちゃった。わたしもアニキもレーセンさんもこのトレンドが嫌いだけど。

正直に言うとわたしは『月光蝶のオーロラ・マギア』が好きになれないよ。魔法少女アニメの希望とカラフルさを犠牲にして暗い懸念と絶望にしかないストーリーにしちゃって、こんなの本物の魔法少女アニメファンの一人としては見てられないよ。

だがその結果、オーロラ・マギアは人気にも評価にも売り上げにもリンゴ・レインボーズ勝っているだけでなく、オーロラ・マギアのファンはよくリンゴ・レインボーズをオーロラ・マギアの魔法少女ジャンルに深さを加えようとしたところをパクったとまで言うんだよぉ。


わたしのリンゴ・レインボーズに悪口言ったバカドモなんてみんな死んじゃえばいいよ、リンゴ・レインボーズはオーロラ・マギアからアイディアを得たくらいでどうしたのよ?それだけでアニメは悪いわけでもないじゃん?そんな理屈なら90%の少年アニメだって他の少年アニメのパクリになるでしょが、バカ。

そう、みんな死んじゃえばいいんだよ、よくもわたしのTDSを没収したアニキみたいに。

あっ、やばい、そんなこと考えちゃダメだよー、これではリンゴ・レインボーズを楽しめなくなっちゃうでしょ。

わたしはじっとしてノートパソコンでPQと一緒にリンゴ・レインボーズを見ようとするが、PQが適当に選んだCDはリンゴが悪魔に操られている友達と戦う回だ。

もちろんこれはリンゴ・レインボーズだから、その友達を操っているのは浅さのない悪役ではなく、悪魔がリンゴの友達を操れるのはリンゴがその友達の両親のハートパワーを使って前に戦った悪魔を倒したことによって友達の心もその結果に弱くなったからだ。そしてその時、リンゴはあるセリフを悪魔に叫んで、わたしまで揺さぶらせた。

『わたしの友達を返せええええええええええええええ!!!!』

「わああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

わたしは動画を停止させるためスペースキーを叩き、ベッドから飛び出て、PQを膝からどかせた。

その言葉、来ると知っていたそのセリフで思ったより動揺されちゃったよ。自分の過ちの責任を否定することになっても強力の悪から大事の友達を救えたい乙女の必死さ、その感情はわたしに非常手段を取るスイッチを入れた。

「もうガマンならないよ!わたしもリンゴみたいにする!悪いのは自分になっても、わたしはわたしの友達を奪ったもっと大きな悪と戦う!」

自分の幻覚状態はわたしの実体に対抗できる重みはないと自覚していても、PQはわたしを止めにわたしの足にくっ付く。

「ダメだポッピー!キミはリンゴじゃないキュ!今フウロに抗ってもどうにもならないよキュ!」

「いや、わたしはわたしの友達を取り戻す!女神たちに恵まれた果実の名の元に、わたしの友達を返してもらう!」

たった一歩の踏み出しで重みのない幻覚のPQをわたしの足から振り除き、わたしはドアへ向かう。だがわたしを止めるのを諦めず、PQはわたしの背中に跳びかかり電力を集めようとしている。

「キュウウウウウウウ!!!」

PQは強制的にわたしの身体を乗っ取ろうとしている、それは感じられるんだ。身体がピリピリし始めて、40cmの実体に圧縮しようとしている。これで確かに歩みを遅らされるけど、わたしは止められない、止めさせないよ。

リンゴだって友達を救ったら間違うと言われても諦めなかった。間違った選択こそが一番の選択である時があるんだよ!


わたしは自室から出て、廊下の反対側にあるアニキの部屋に向かい、ドアをバタンと開けて注目させるように呼び出す。

「アニキ!」

机には宿題があるのにアニキはエアソフトガンの1丁を抱擁して撫でている。それはわたしが今激おこじゃなければモデルの名前を思い出せそうなアサルトライフルだ。

アニキは何もないみたいに銃からわたしに向かい微笑む。それはわたしみたいな清らかな少女を欺こうとする悪役の優しい微笑だ。

「どうしたんだい、ポッピーちゃん?もうご飯の時間?」

もう魔法少女のそれではない攻撃性と派手さで、わたしは前に手を払う。

「否、わたしはお前からTDSを奪い取るよ、悪魔め!」

笑っているまま困った表情を見せてきて、アニキはわたしに返事する。

「大好きな兄をそういう風に呼ぶなんて厳しいね、ポッピーちゃん。」

議論に止めを刺すレーセンさんの調子の乗りすぎた態度をマネして、わたしはアニキに口答える。

「ほう、それとも『お兄ちゃん』だと呼んで欲しいと?」

アニキは返事しながらため息をする、さすがこれではもう楽しんでいられないね。

「オレをそう呼ばないで、ポッピーちゃん。」

PQはわたしの後ろから飛びかけてきて、動揺した声でアニキに慈悲を請うが、アニキには自分のメタキャラがないから幻覚状態の自分を聞こえないと忘れている。

「フウロ、許してやってきゅれキュ!これ以上に没収時間を延長しないできゅれキュ!ポッピーの精神はもう限界だ、没収時間が延長されたら耐えられなきゅなってしまうキュ!」

だがアニキもPQも無視して、わたしはニヤニヤ笑ってきて話し出す。

「もちろんただで返せとは言わないよ。お兄ちゃん、ポタモンマスターポッピーちゃんがポタモンバトルに勝負を仕掛けてきた!」

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