冬の終わり、春の始まり
お題:冬、旅、長い一日、接吻
恵那とその母親は、朝食をとりながらテレビを観ていた。テレビからは、二人が毎朝の楽しみにしているドラマが流れている。
食事の手を止めて二人は食い入るように観ていた。
ドラマの主人公とその相手役が今まさにキスをしようとしている。
その唇が触れるか触れないか、そんないい所で番組は終わった。キスの行方は、明日に持越しである。
「くぅー、相変わらずいい所で切るなぁ」
「ほんとねぇ。それよりあんた、今日は早く出なさい。外、凄いわよ」
母親にそう言われて恵那は窓の外へと目をやった。
一言で言うならば、白い。強い風に煽られた雪が、視界を遮りながら地面へと落下していく。
「やっと温かくなった思ったのに。お父さんに送ってもらおうかな?」
「今日は駄目。おばあちゃん達迎えにいかなきゃいけないから」
「あっ、そっか。仕方ない、頑張って行こうかな。――ごちそうさま」
恵那は立ち上がり、いつもよりいくらか軽いカバンを持った。
そんな恵那に母親は少しだけ眉をひそめた。
「ねぇ、スカート短すぎない? 普段はいいけど、こういう時ぐらいちゃんと下ろしなさいよ」
「先生みたいな事言わないでよ。大体、私のは皆に比べたら長い方よ」
母親の意見に恵那は生意気な態度で答える。
けれど、恵那は言われた通りスカートを長くしようと思った。
今日は身体検査が厳しいはずだ。どの道、学校に着いたら長くしなければならない。
「行ってきます」
母親に元気にそう言うと、恵那は吹雪の中へと駆け出した。
今日は卒業式。恵那が旅立つための、長い一日が始まろうとしていた。
小説が書けない.com(閉鎖)で、
「冬」、「旅」、「長い一日」、「接吻」、「風紀委員」
の中から少なくとも一つお題を選び、掌編を投稿するという企画がありました。
それらのお題の中から、風紀委員以外の全てを詰め込んだ作品です。
元々は全て入れようとしたのですが、風紀委員だけ入れられませんでした。
本当は風紀委員も入れたかったです。