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六、便り
「兄様が?!・・・そ、それは・・・確かなのですか?」
栄龍様から教えていただいた話に、私はただ、驚くしかありませんでした。
「私も初めは信じられなかったが・・・あの手(筆跡)は、湧凪様の物だと思う。」
「手?・・・まだ、お会いになっていないのですか?」
「・・・先代や、姉上のことがあった後だ。慎重にもなる。」
・・・先の戦で本城が焼かれてしまい、姉様や殿・・・先代が亡くなられてから、まだ一月。
あれから、急遽栄龍様が殿になられ、我が国は態勢をなんとか立て直しました。
しかし・・・
まだまだ、先の戦の傷痕は・・・完全に消えてなどいるわけがありません。
「あの・・・それでは、兄様は・・・」
「あぁ。生きておられた。」
「よかった・・・」
十年前に、大量の血の跡を残し失踪してしまった兄様。
何者かに殺され、死体も持ち去られてしまったのでしょう・・・と絶望視されていたのに・・・
「いつ、お会いできますでしょうか?」
「・・・明日、面会する手筈になっている。」
「ご一緒させていただいても・・・?」
「もちろんです。・・・あなたの、兄上ですから。」
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