五、頭によぎる
1995年、春
あれから、何回か松岡さんとデートをした。
付き合っている・・・ことになると思う。
一応、申し込まれていたのは「結婚を前提のお付き合い」というもの。
なのに私は・・・正式な返事はまだしていなかったりする。
返事もしないで、毎回いろんなところに連れていってもらって・・・自分でもずるいと思う。
もちろん、食事代とか映画のチケット代とかは、自分の分は自分で出すようにしてる。
それが、けじめだと思うから。
でも、車を出してもらってるからガソリン代とかは松岡さんに出してもらってることになるわけだし。
松岡さんは今年で三十歳になる。
いつまでも・・・待たせるわけにはいかない・・・。
そうは思ってるんだけど・・・
私は、結婚に踏み切れないでいる。
私だって今年で二十五歳。
あんまりのんびりもしていられないはずなんだけど・・・
頭によぎるのは、夢の中に出てくる・・・<私>の夫である人のこと。
幼名、龍千代
松島 栄龍 様
彼と<私>が結婚したのは、<私>が十六歳、彼が十五歳の時。
<私>の父親が決めた結婚だったけど、彼は<私>のことを気遣ってくれるいい夫だった。
そんな人だったから・・・
私まで、彼の面影を探してしまっているのかな・・・
いつの頃からか・・・
私は、夢に出てくる<私>は・・・私の前世・・・みたいなものじゃないかって考えるようになった。
そんなことありえないって、そう言われればそれでおしまいなんだけど・・・
理由が、無いわけじゃあない。
少し前に・・・友達と、女二人で旅行に行った。
その時・・・見つけたのだ。
夢で見たのと・・・同じ場所を。
そこは初めて行ったはずの場所なのに・・・
何故か私は、そこを知っていた。
友達が止めるのも聞かないで地図を持たずに一人で歩き回って・・・
でも、昔から知ってるみたいに、迷うことは無かったし、迷うんじゃないかっていう不安を覚えることも無かった。
別に、それだけじゃない。
場所だけじゃなくて・・・
人も。
<私>やその身内とかではなかったけれど、<私>と面識が少しだけあった人の名前が、偶然見かけた歴史探求番組で出てきたのだ。
学校で習うような名前でもないし、だからと言って番組で適当に考えた訳でもないらしくて・・・
私は、普通じゃない何かを感じて怖くなった。
でも、同時に・・・
私がここにいるなら、他にもいるかもしれない。
夫だった人に会えるかもしれない・・・
そう思って・・・
期待に胸が膨らんだ。
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女性はクリスマスケーキにたとえられた時代です。
23,24が買い時?25でもまぁよし。それを過ぎるとたたき売り?
記憶があいまいですが。
ほんの20年ほどで、かなり結婚への価値観が変わりましたね。
松岡さんは、年齢こそ30で・・・世間的には「早く結婚して一人前になろうよ」な年齢ですが、条件としては三高そろってます。
高身長、高収入、高学歴。なかなかの良質な物件ですよ(笑)




