三、赤い夢
赤い・・・
あれは・・・炎・・・
・・・城が・・・燃えてる・・・
あの城は・・・義姉と慕った人がいるはずの場所。
その日は、朝から彼は・・・私の夫、松島栄龍は出かけていきました。
隣国と戦いに・・・
国を守るために・・・
ここ、桜海の国は、十数年前まで桜海の姓を持つ方が代々治めてきた地でした。
しかし、その代は男児に恵まれず・・・三人いた姫を有力視していた家臣やその子息に嫁がせ、一番ふさわしいと思った人物に継がせることになさいました。
・・・それをしたのが私の祖父。
そして選ばれて祖父の跡を継いだのが、私の父でした。
私には兄がおり、戦でも功績をあげていましたので、父の跡を継ぐものだと誰もが思っていました。
しかし・・・
兄は、十年前に謎の失踪をしました。
その為、父の跡を継ぐのに名があがったのが・・・
先代の三人の娘の残り・・・私にとっての叔母たちの息子。
私にとっての従兄弟であった、現在の殿・・・志那様と、私の夫・・・栄龍様の二人でした。
現在は志那様が殿となり、栄龍様は・・・参謀・・・のようなことをしております。
問題の隣国とは、父の代に同盟を結んだはずの国でした。
栄龍様の、一番上の姉君が嫁ぐことで。
なのに・・・今確かに城は燃えている・・・
あの城は・・・殿と義姉さまがいるはずの場所・・・
何故・・・?
栄龍様・・・やはり、戦は止まらなかったのですね・・・
でも・・・せめて、どうか・・・
義姉さま・・・
殿・・・
無事でいてください・・・
「由美香・・・」
しばらくしてから帰って来らした栄龍様は・・・
悔しそうに・・・悲しそうに・・・顔を歪めていらっしゃいました。
「栄龍様・・・」
「・・・間に・・・合わな・・・かった。」
嫌な予感は、当たってしまったようでした。
「志那殿と・・・姉上は・・・奥方様は・・・城と共に・・・」
「・・・お二人は、共に・・・炎に包まれたのですね・・・?」
「・・・おそらく・・・。」
お二人が共に召されたのが・・・独りで旅立たずに済んだであろうことが・・・
せめてもの救い。
でも・・・
残された者の悲しみは、変わらない・・・
義姉さま・・・
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