十八、見つけた・・・!
「じゃあ、君のお母さんを呼んでこようかな。」
「あ。あの・・・」
「・・・どうかしたかな?」
あの時・・・聞こえた声・・・
あれは・・・
夢とごちゃごちゃしてたけど・・・
あの声は・・・
「お義兄さん・・・」
「何かな?」
「・・・・・・桜海の姓は・・・御存じですか?」
あの声は、確かに・・・お義兄さんだった。
そして・・・あの声は確かに・・・
私を、「ゆみか」と読んだ。
「・・・・・・おうみ・・・?」
お義兄さんは、足を止めて私を私の目を見た。
「・・・・・・。」
「・・・・・・字は?」
「・・・さくら・・・桜の・・・海。」
「・・・・・・驚いた。由美香は、覚えているんだ?」
見つけた・・・!
前世の記憶を、共有する人・・・!
「お義兄さんは・・・誰なんですか?」
「・・・桜海道鷹。」
「おうみ・・・みちたか・・・?」
「志保沢由美香、君の・・・祖父だよ。」
「お祖父様・・・・・・?」
ついさっき・・・夢に見た・・・?
「・・・期待はずれだったかな?」
「え・・・いえ、そんなことは・・・・・・」
無い、とは言いきれないけど。
でも、お祖父様でも・・・会えたことだけでうれしい・・・!
「あ・・・でも。・・・だから、赤ちゃんを抱き慣れてたんですね?」
「あぁ・・・実子三人に、孫も七人もいたからね、〈僕〉は。」
「かなり、慣れてましたもんね。」
「・・・僕も、驚いたんだよ。君に記憶があったことに。・・・」
「そうなんですか・・・?」
「 あぁ。・・・雪菜も・・・、辰郎も、覚えてなかったから・・・」
・・・・・・え?
今・・・なんて・・・
「あ・・・あの・・・今・・・」
「ん?・・・あぁ、これは知らなかったのか。じゃあ・・・これも、また・・・話さないとな。」
え?またって・・・
「別に、僕は今からでもいいんだけどね。・・・君は、寝たほうがいい。」
でも・・・
「大丈夫。明日、教えてあげるから。・・・明日は、術後の検査があるしね。辰郎と雪菜も、明日のお昼までには来る。」
「あし・・・た・・・?」
話を聞きたいのに、気持ちに反して眠気が襲ってくる。
「ほら。やっぱり眠そうだ。疲れてるんだから、もう寝ないと。」
「で・・・も・・・」
「無理をすると、ケガに響くよ。命に別状は無いとはいえ、腕は十針以上縫ったんだから。」
・・・そうなんだ・・・だから、腕が少し、痛かったんだ・・・
でも・・・
「おに・・・ぃさ・・・ん・・・は?」
「しばらくここにいるよ。心配しなくていい。徹夜は慣れてる。・・・・・・それに、義妹に・・・前世の大切な孫娘に、手を出したりもしないよ。」
お義兄さんは、そう言って、お茶目に笑った。
「ぉゃ・・・」
すみなさい。
全部言えないうちに、私は眠りに落ちた。
「いい夢を・・・由美香。」
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