十七、目覚め
あいたい・・・
会いたい・・・
逢いたい・・・!
・・・・・・誰に?
私は・・・
「・・・ぁ・・・ぅ・・・ました。」
「ぃぇ・・・、・・・ぅ・・・ぃぃ・・・ょ。」
あれ?
ここって・・・どこだろう・・・?
私、どうしたんだっけ?
さっきは、確か・・・
また、昔の夢を見てた。
私のこの夢は、〈私〉の死に際の記憶から始まった。
それから、だんだんと〈私〉の過去に遡っていって・・・
さっき見たのは、十一歳になるころ・・・
今まで見た中で、一番古い記憶。
見るのは、初めてだった。
「早く、目を覚まして・・・みんなを安心させてあげてください。」
あれ・・・?
この声・・・知ってる、けど・・・誰だっけ・・・?
「みんな、あなたの目覚めを待っていますよ・・・ゆみか。」
え・・・なんで?
まだ私・・・夢の中なの・・・?
「お・・・じい・・・さ・・・ま・・・?」
久しぶりに開いた目に、まぶしい光が飛び込んでくる。
「あぁ、目が覚めたかな?」
え・・・?
「お義兄さん・・・?」
目を開けた私の目に映ったのは、お義兄さん・・・黒冬幸隆さんでした。
「あぁ・・・よかった。」
「あの・・・私・・・」
「・・・車にね、追突されたんだよ。」
「え・・・?」
「覚えてないかな?目撃者の話なんだけどね・・・」
お義兄さんの話によれば、私は買い物中に交差点に差し掛かったときに、左折してきた車に追突・・・というより、擦られたというのか・・・
完全にぶつかって突き飛ばされたとかじゃなくて・・・人で言うと、肩がぶつかって、横に倒される・・・みたいな。
そんなことがおこったらしい。
「そんなことが・・・」
あれ・・・?
また、私・・・
「琉輝!!お義兄さん、琉輝は・・・?私・・・」
咄嗟に、この手で抱いて・・・
「大丈夫。ちゃんと、守れてたよ。倒れた時に、少し擦り剥いたけど。それだけで、治療も受けた。」
・・・よかった・・・
また、何もできずに・・・誰かの死を見送るなんとことには、したくなかったから・・・
「・・・あの、それで・・・今はどこに・・・?」
「少し前までここにいたんだけどね。少し、眠くなってしまったみたいで・・・今は、君のお母さんと一緒に、談話室にいるよ。」
「そうですか・・・」
たしかに。
時間を見れば、もう時刻は午前1時になろうとしている。
「・・・辰郎や雪菜もね、さっきまではいたんだよ。」
「え・・・辰郎さんも・・・?」
辰郎さんは確か、今日明日と会議で帰ってこれなかったはず・・・
「事故の連絡をしたら、会議を早めに終わらせてすぐに新幹線で帰ってきてね。手術の途中で病院に着いて。・・・君が目を覚ますまでいるはずだったんだけど・・・また、明日の朝一から会議が入ってるから・・・。容態が安定したのを見届けて、夜行電車でまた行ったよ。」
「そうだったんですか・・・」
また、辰郎さんに・・・心配をかけてしまったんだな。
でも・・・
そんなにお仕事が忙しいのに、来てくれたなんて・・・うれしい・・・
「でも・・・なぜ、お義兄さんが?」
「僕が一番暇だったからだよ。」
「え・・・?」
「辰郎はさっき言った通りだし。雪菜も、今夜は忙しくてね。・・・目が覚めたらいたのが僕だなんて、目覚め悪かったでしょう?ごめんね。」
「い、いえ・・・そんなことは・・・」
お義兄さんは、優しい人だ。
私には兄はいないけど・・・
いたら、こんな感じなのかな?て思う。
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