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十三、ときはめぐりて


 1999年、夏。

月日が経つのは早いもので、いつの間にか、あの時から三年の年月が流れた。



子どもは、辰郎(たつろう)さんが「琉輝(りゅうき)」と名付けて、元気に、すくすくと育っている。

一歳になる前に少しだけど歩けるようになったし、二歳を過ぎた頃からは少しずつおしゃべりを始めた。

三歳になった今は、来年に幼稚園入園を控えている。

ひらがな、カタカナはできるし、簡単な漢字ももう読めるようになっていて、将来が楽しみ。

でも、なによりも・・・

とっても、やさしい子。

そんなこんなで、琉輝は自慢の息子だったりする。



辰郎さんも、琉輝をかわいくてしょうがないみたいで、忙しい仕事の合間をぬって、いろんなところへ連れていってくれる。

こないだの日曜日には、映画館に行って、先日公開されたアメリカから来た映画、「スター・ウ○ーズ、エピソードⅠ」を見に行った。

独身の時に友達とエピソードⅣとかを見に行ったこともあったけど・・・

前回も今回も、正直よくわからなくなったのは内緒。

途中で琉輝が寝てしまったけど、それまでははしゃいでたし。



お義兄さんとお義姉さんには、いまだに子どもができていない。

琉輝に従弟妹ができたらうれしいな、て思ってたんだけど・・・

その分・・・て言うのかな?

二人は、琉輝のことを自分の子どもみたいにかわいかってくれている。

将来的には、お義兄さんの持っている学校に入学することになると思う。



「かぁさん・・・かいた。みてー」

「あら?何を描いてくれたのかしら?」


今は二人で、居間にいた。

琉輝は私の隣で画用紙を広げて、クレヨンで何かをかいていた。


「りゅう!」


そう言って見せてくれた紙には・・・ひらがなで、「まつおかりゆうき」と書いてある。

・・・字を書いてたんだ。


「上手に書けたわねぇ。」


でも、今まで琉輝はひらがなやカタカナを読むことができても、書くことはできていなかったから・・・

何かの紋様みたいに見えるものは書いてるのを見たことがあるから、もしかしたら字を書いていたのかもしれないけど・・・

読める字を、しかもちゃんと意味を考えて書いたのは、初めてだった。


「ホント、上手に書けたわね。」

「りゅう、えらい?」

「うん、もちろん。りゅうちゃんはえらい。とってもいい子。お母さん、りゅうちゃんのこと大好きよ。」

「りゅうもー、かぁさん、すきだよー。」


この笑顔が愛しい。



今は、この家の中には私と琉輝の二人だけ。

結婚以前からこの家にあたお手伝いさんには、半分くらいやめてもらった。

自分の家族の食べるものとか、洗濯物とかくらい、主婦になった身だから、自分でやりたい。

・・・広すぎる家の掃除は、やってもらってるし、妊娠中は助けてもらったけど。

とにかく、そういうお手伝いさんには、別棟が与えられていて、この建物の中にはいない。



「よし。お買い物に行こう!」

「おかいもの!」

「りゅうちゃんも一緒に行こうか。今日は、お父さんが帰ってくるから、ご馳走にしようね。」

「うん!」


私は自分の支度をしてから、琉輝も準備させる。


「ボタンきちんとはめれた?」

「・・・うー・・・。」

「いーい?これを・・・こうやって・・・ね?」

「これおー・・・こーしてー・・・できた!」

「そうそう!上手ね。」



準備を済ませて、玄関へ来た。

プルルルルルル・・・

家を出ようとしたところで、電話が鳴った。


「あ・・・りゅうちゃん、ちょっとここで待っててね。」


琉輝を玄関で待たせて、電話を取る。



「もしもし、松岡(まつおか)です。」

『私です・・・辰郎です、裕美(ゆみ)。』

「辰郎さん?・・・今日帰られるんですよね?夕飯は、ご馳走にするつもりで・・・」

『すみません。・・・確かに、今日帰れるはずだったんですが・・・急な会議が、今日明日と入ってしまって・・・。』

「・・・そうですか・・・。それでは・・・今日は・・・」

『はい。残念ですが、帰れません。・・・明日の午後か・・・明後日の朝、ですかね。』

「そうですか・・・。わかりました。・・・頑張ってくださいね。」

『本当に、すみません。』


電話を置いて、知らないうちにため息がでてしまう。

そっか、今日、帰ってこれないんだ。

残念だな・・・ちょっと張り切ってたのに・・・。



「かぁさん!まだぁ?」


あ。いけない。

琉輝を待たせてたんだ・・・


「おかいものー!!」


辰郎さんが帰ってくるのは今夜じゃなくなっちゃったけど、買い物は行ってこないと。

琉輝が楽しみにしてるしね。


「おかあさん、今行くからね。」


私は、急いで玄関に向かった。



「お待たせ。行こうか、りゅうちゃん。」

「はーい!」


.

仕事をする人たちには、かなり携帯電話も広まってきましたが、まだ固定電話のほうが主流。一家に1台・・・くらいだったのかなぁ・・・あるいは、大人だけ使ってるとか。

松岡家は、辰郎しか持ってません。裕美は主婦で家にいることが多いので、携帯の必要性をあまり感じていない・・・

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