うるせー
掲載日:2026/07/18
近年はうちの近所でもカラスが増え、生ゴミを荒らして困っている。
町内会から配布されたネットを被せたりもしているが、カラスは賢く器用で、雀よりずっと力も強いため、あまり役には立っていない。
ある日、ゴミの収集日を守らずに出されたゴミ袋がゴミ置場に放置されて、それをカラスが荒らしていた。
袋が破れて中身がこぼれだしたあたりを、何羽かのカラスがピョン、ピョン、と跳ねてはつついている。
「あー、駄目だよ、ちょっと」
私は少し離れたところで、そのカラスたちに声をかけた。そばでは当時小学校二年生だった甥と、甥の友達の男の子もその様子を見ていた。
私の声にカラスたちは振り向き、その中の一羽が
「うるせー」
と野太い男の声で言った。
カラスの鳴き声ではなく、人の声、だった。
「!」
私は甥たちと顔を見合わせた。
「聞いた?」
甥たちにたずねた。
「うん、『ガー』って返事したね」
と甥は笑った。が、その隣で甥の友達は
「ううん、『うるせー』って。おっちゃんの声で言ったよ」
と目を見開けて私を見た。
以来、甥の友達は“おっちゃんの声でしゃべるカラス”をまた見つけようとしているらしいが、あれきり見つかっていないらしい。




