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古木のホラー短編集

生首さんの口の中

作者: 古木花園
掲載日:2026/05/02

 生首さんと呼ばれている怪談がある。

それは戦後間もない頃に吹き飛んだ頭を探している身体が突っ立って道を歩いているところを白昼堂々見た人が多数いたからだ。

頭を探しているんだと地域住民はいった。

でもその生首は探しても見つかりっこないのだ。

見つかりっこ無いのに探している生首さんは近寄ってはいけない。

これは小学校で上級生から絶対に教わることだ。

みんな口を引き締め眉間にシワを寄せて語る。


「生首さんは知ってるよな?あれは昼間だろうが夜だろうが出る。それも中学生から見えない。きっと頭が違うんだろよ。大きさがさ。だから俺達には当然見えるし近寄っちゃいけね。生首さんは自分の生首と間違えて近くにきた奴の頭を取っちまうからだ。ホントだ。だから近寄っちゃならね。」


自分よりも大きな体格の上級生が教卓借りて喋る様は何か格好良くも生首さんを怖くも思った。

 と、思ったらおしっこいきたくなってしまった。

昼間の校舎、休み時間だけど話がおわったらあともみんな教室から出ない。

さっきの上級生もだ。

でも、そんなことよりトイレに行こう。


 教室の扉を開けた時、視界の端に何かが映った。

そるは首から上がない自分たちと同じくらいの少年のサイズのお化けが立っていた。

思わずびっくりして倒れた拍子に出てしまった。

女の子もいるのに恥ずかしさで胸がいっぱいだ。


 でもそこにいた生首さんが通路を通過していく姿を凝視すると気づいてしまった。皮の首1枚で繋がっている頭部が後ろでプラーンとぶら下がりながら背中を打ち付けている姿を。

そして、その生首と僕は目が合った。

その口はパクパクと何事かを喋っている。


教室のみんなは目を合わせないように机に突っ伏していたからきっと気づいていないだろう。


でも、僕にはなんて言っているか気づいたんだ。


 「戻して…」と。


僕は小学校1年生。さすがに怖すぎて分かっても戻してあげることはできなかった。おしっこも漏れてるし。


いつの間にかよく見かける生首さんもあまり見なくなった小学6年の頃、上級生が教えてくれたように入ってきた1年生に生首さんについて教えてあげる。

これはこの学校のしきたり。

何かもう少し小さい時に生首さんについて気づいたことがあった気がするがもう忘れてしまった。

 とにかく、僕みたいに怖い目に合わないように生首さんについて語り継ぐのだ。


「生首さんは知ってるよね?昼夜関係なく出る。それも中学生から見えない。小学生の頭までが生首さんに合うんだよ。きっと。だから僕達には当然見えるし近寄っちゃいけないよ。生首さんは自分の生首と間違えて近くにきた奴の頭を取っちゃうんだ。ホントだよ。だから絶対近寄っちゃダメだからね。」


今日も生首さんは歩いていく。

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