見下した相手にすがりつくのが高貴なる貴族なんですの?
国の西側はここ数十年長いこと、戦火に包まれている。
ハイデマリーはそんな西側領地出身で、その中でも戦で手柄を立てて貴族になった新参貴族と呼ばれる伯爵家の出身だった。
しかし、伯爵令嬢の身分ながら婚約をしたのは北側領地の名家であるオルグレン公爵家だ。
それには色々と理由があるのだが、なにはともあれ急ぎの婚約で問題がなければ結婚にすぐに踏み切ることになっている。
相手の顔も知らないハイデマリーは、歓迎パーティーの数時間前に婚約者レオンハルトと顔を合わせた。
そして今、華やかなワルツの流れる大ホールを使ったパーティーの席、ソファーの隣に座ったレオンハルトは、友人たちを向かいに並べて口を開く。
「まったく、屈辱的なことだと思わないか!」
レオンハルトの親類たちに挨拶をしている時から感じていたが、同世代の貴族たちが周りを囲み、ある程度自由な時間になると彼の言葉はより顕著になった。
「我がオルグレン公爵家の歴史は数百年にも及ぶ国でも最も古い家系の一つだ!」
「ええ」
「その通りだ」
「うんうん」
貴族たちは、前のめりになって皆それぞれの相槌を打ってレオンハルトの調子に合わせる。
「そのオルグレンの血脈についに、新参の血筋が混じるのだ。まったく嘆かわしい! 私は悔しくて毎晩、眠ることすらままならない」
「まぁ! おいたわしい」
「痛ましいことだ!」
表情をゆがめて言うレオンハルトだったが、それでも肌ツヤは良く、健康状態は良好ではないだろうかとハイデマリーは考察した。
つまり、レオンハルトがそんなことを言って何がしたいのかというと、単にハイデマリーを貶めたいだけのように見えた。
「ほんの数十年前までは下賤の民と同等と生活をしていたただの能無しのくせして、今では見てみろ」
そう言ってハイデマリーの方へと視線を集める。
ハイデマリーは多くの貴族の嘲笑を受ける。それでも背筋を伸ばして彼らのことを右から左までじっと見つめ返して顔を覚えていた。
「貴族に擬態してこざかしいことだ。その手は血にまみれ、汚らわしい臭気を隠しきれていないというのに、誇らしげだ。随分と図太い女と見える」
「っふふ! さすが平民」
「根性だけはいっちょ前、だな」
薄ら笑って、そろって皆ハイデマリーのことを誰も貴族扱いしない。それどころか人としても見ていない様子だった。
なにかとても滑稽な生き物でも見ているかのような様子で、貴族たちの凝り固まった価値観が透けて見える。
「しかしそれでも、いつこちら側に戦火が及ぶかわからない、こいつがあのグレイディ公爵家の推薦した女性というだけで私たちは要求を呑むほかない、残念ながら」
「……そうですわね」
「そうだな」
「まったく、隣国もさっさと非を認めて諦めればいいというのに、厄介だが……それと同等に、さっさと始末をつけられないグレイディ公爵家にも落ち度があるだろう」
そしてレオンハルトは、ハイデマリーの実家の本家に当たるグレイディ公爵家の人間にまでその批判を飛び火させた。
「隣国の軍勢が私どもの元へと責めて来れば、すぐに返り討ちにして新参貴族になど頼らずとも勝利を収めたに違いない」
うんうんと貴族たちは頷く。
「だが、そうは言っても状況は変えられない、ここは国のために我々も耐え忍んで協力を惜しまずに手を貸してやろう。なんせ我々は高貴なる貴族、持つ者の義務というものがあるのだからな」
「ええ、そうですわ。いくら西側の方々の怠慢が原因だとしても」
「その通りだ、手を貸してやろう」
レオンハルトの言葉に彼らは総じて同意する。
そして、優しいみたいな顔をして口々に『仕方ないから手を貸してやろう』と上から目線で物を言う。
そんな彼らに、ハイデマリーは口を開いた。
「……わたくしはそうは思いませんわ。皆、決死の覚悟で戦っていますもの。不手際もあったかもしれません、けれど命をかけていますわ、背けず逃げず、戦っていますわ。馬鹿にされる筋合いはありません」
この場で初めて口を開いたので、全員はぱっとハイデマリーを見て目を見開く。
まるで喋ったことが物珍しいかのようで、それはハイデマリーの言葉にではなく、声に対する好奇の目線だった。
それに少しの間沈黙が訪れる。周りのさほど大きくない喧騒が聞こえるくらいの沈黙で、隣にいたレオンハルトがやっと口を開いた。
「き、聞いたか? 下賤の民が貴族に堂々と意見したぞ! これは素晴らしい! 度胸のたまものだ、さすが戦争を理由に貴族になりあがるだけの野望を持った血筋だ! 血にまみれた生活で大切なものを失ったらしい!」
レオンハルトは皮肉たっぷりにハイデマリーの言葉を真っ向から無視してパンパンパンッと大きく拍手した。
その様子に、その場はどっと湧いた。
それでもハイデマリーは俯かず彼らのことをまっすぐと見つめていた。
顎を引いて彼らの動きを観察していた。
ふと、視線の端に彼らと違う行動をしている人間が移った。
ぱっとすぐに目線だけをうつす。
その不審人物は、人々が交流しているホールの中心側からやってきて、しばらくハイデマリーを皮肉に揶揄う様子を見つめて、まごまごしていた。
しかししばらくして「あの……」と声をかける。
一番近くにいた令嬢はそれに気が付いたけれど、すぐに目をそらして、楽しい話題に戻る。
しかし彼はそれだけではあきらめずに「あの!!」と大きな声で言った。
先ほどの声は小さすぎであると思ったが、次に出た声は大きく、否応なしに彼に注目が集まる。
彼は視線を受けて、おどろいて肩をすくめたけれど、それでもきちんと歩いてレオンハルトの元へと向かった。
「レオンハルトさん、あの、その、さすがに、どうですかね。その……それは」
気弱そうに見えるし派手さもなければ華もない、立ち居振る舞いも自信に満ち溢れたものではなかった。
しかし、彼は目が違う。
侮り、あざけりハイデマリーのことをきちんと見もしない貴族たちとはまったく違うように見えた。
「は? ……ああ、ハインツ君……君も来てたのか」
「はい。西側領地との交友の足掛かりとなる第一歩ですから……父の代わりに」
「……それで? なんの用かな」
レオンハルトは楽しいところを邪魔されて、不機嫌な様子を隠さずにハインツと呼ばれた青年と接する。
レオンハルトは、ハインツに対してハイデマリー相手のように、小ばかにしたり言葉を聞かないわけでもない。
周りの貴族たちも黙ってその様子を見つめていて、ハインツがそれなりに重要人物であることがわかる。
「用事というか……その」
「なにかな、早く言ってくれよ」
「……あまりに、み、見苦しかったので」
ハインツはおどおどとした態度のまま、レオンハルトにそう言い放ち、周りの貴族たちにも怯えながら視線を向ける。
「あなたがそういう態度だと、彼らだってこうせざるを得ない。もともと、差別意識を持っている人もいるでしょうけど、だからと言ってあなたがやるべきふるまいだと僕は思えませんでした」
「……」
レオンハルトは明らかに嫌悪感を表して、あからさまにハインツを睨みつけた。
しかしハインツはそのまま続ける。
「あなたの屋敷のホールとはいえ、公の場でやるべきことでしょうか。レオンハルトさん」
「っ……」
ぎりっと、奥歯を噛みしめる音が聞こえた。
レオンハルトは、頬を引きつらせて、しばらく黙り込む。
周りの貴族たちはこんな時には顔を青くして俯くだけで、問答無用でレオンハルトの加勢をするわけではないらしい。
「…………ハッ、殊勝な心掛けだな、ハインツ君。それにしても君の偽善には何時だって興が覚める」
「そう、ですか」
苛立たしげにレオンハルトは吐き捨てる。しかしハインツは特に傷ついている様子はない。
それにさらにイラついてレオンハルトは舌打ちをして、呆れたようにため息をついた。
それに貴族たちはびくついてさらに顔を俯かせた。
「そんな水を差すような行いばかりするから、お前たちは私たちに負けつづきなのだろう」
「争っているつもりはありません」
「チッ、それとも、その盲目的な善行があだになっているのかもな、下賤の民をつけあがらせてもいいことなど何もない」
「……心にとめておきます」
「ハッ、いい心がけだが、不愉快だ」
二人はそう会話を交わして一旦は終わりに見えた。
しかし、ハインツはその場から去ることなくハイデマリーのことを見つめていた。
その様子に耐えかねて、レオンハルトは乱暴な仕草で席を立つ。
数人が席を離れて後を追う。ついていくタイミングを失った貴族たちは相変わらず俯いて青くなっているだけだ。
それからハインツと目が合った。彼は「少し、いいですか」と自信なさげに言った。
ハインツとハイデマリーは二人でホールの外に出た。
ホールの廊下には小さなバルコニーがあり、腰の高さの鉄柵に二人して体を預ける。
背後からの光に照らされてうっすらと光る庭園を見ることができた。
けれどもハイデマリーは景色や星空に目をやらずに、横目でハインツのことを見つめていた。
彼も同様にハイデマリーのことを見つめていて、体をこちらに向けて少し震えた声で切り出した。
「……申し訳、ありませんでした。ハイデマリー嬢、我々の非礼をどうか――許してくださいとは言いません。ですが、あれがこちら流の歓迎というわけではないんです」
「……」
「我々も一枚岩ではありません。歓迎している人もたくさんいます。レオンハルトさんに合わせていた貴族たちの中にも」
頭を下げこそしないものの、その謝罪は切実なものであると声音から伝わってくる。
「少なくとも、僕たちラファルグ侯爵家はとても、今回の婚約を喜ばしく思っています」
「……なるほど」
「僕は今回のことをきちんと父上に報告して、オルグレン公爵殿と話し合いをするつもりです。ですから……すみません。それでも耐えられることではありませんよね」
「そう、かしらね」
ハインツは途中で話の方向性を変えて、少し俯く。
彼からどう見えているのかはわからないが、ハイデマリーははっきりとした返答を返さなかった。
「無理を強いるつもりは、ないんです。ただ……すみません、何を言ったらいいのか……でも」
その様子を肯定と受け取ったのかハインツは、それ以上これからの話をすることはなく言い淀む。
そして眉を八の字にして困っている様子だった。
そんなハインツが少し不憫に見えてハイデマリーは言った。
「あまり、あなたが気負うことでもないように思いますわ。その言葉だけでも十分。理解しましたもの」
「あ、はい。……ええと、でも」
「ラファルグ侯爵家のことは理解できましたわ」
なにかそれでも言葉を探すハインツに、ハイデマリーは彼がやりたかったであろうことはきちんと理解していると示す。
しかし、ハインツは小さく頭を振って「それを主張したいだけでは、ないんです」と申し訳なさそうに言った。
「……ただ……そう、あの、ハイデマリー嬢」
「ええ」
「……あなたがどう考えているかわかりませんが、ぼ、僕は、平民も貴族も、ただ魔力を持つかどうかの違いで、役割が違うだけだと思うんです。あ、いえ、貴族らしからぬ自覚の足りない言葉だと思われるなら、笑ってください」
「……」
「でも、そうでないのなら、聞いてください」
ハインツの言葉にハイデマリーは答えなかった。
その反応はハインツの言った通りに笑わなかったので、同意の意味だった。
しかし彼はやっぱり不安そうに続けた。
「ですから貴族の称号を持たずに、魔力を持つあなた方はシステムの隙間にいて、どちらでも受け入れられてしかるべきです。なによりあなた方は国を守るという責務を遂行している、それは立派な貴族の行いです」
たしかに、新参貴族と呼ばれる人々は、もとより魔法を持っていた。
それは貴族の爵位を継がないながらも分家として、平民のような仕事をしたり、実家を魔力で手伝ったりしている曖昧な立場の人間たちだった。
そして有事により集められ戦果を挙げた者たちが新参貴族となったのだ。
「それを、歴史で貶めるのは筋が通っていない。僕はそう思います。そして、どんな人であろうと立場でも、あなたはえっと、あの、気品ある素敵な女性です」
「……」
「穢れなど背負っていません、下賤の民などそもそもいません。あなたの手が血で汚れているというわけではない、ないがしろにされてもいい人ではないと思います」
「……」
「可憐な人だと思います。……それだけです、それを、つ、伝えることは意味がないと、言われると思います。やはり、偽善だと言われると思います」
ハイデマリーはハインツの言葉があまりに一生懸命だったので小さく頷いた。
たしかに言うだけというのは、あまり意味がないかもしれない。傷つけられた人を救えもしないのに、あなたをよく思っている人がいると伝えるだけのことは偽善かもしれない。
加えて、ハインツのハイデマリーに対する励ましの言葉は少し見当違いだった。
けれども、それは彼がハイデマリーのことを正しく知らないから出てくる言葉だ。
そんなことはハイデマリーにも簡単に読み取れた。
だからこそ偽善だとは思わなかった。それはきっと、とても順当な優しさという物だろうとハイデマリーは思った。
「けれど、口にしないより、するべきだと思いましたので……申し訳ありません。突然気持ちの悪いことを……」
「……いいえ、ハインツ様」
しかし言ってからハインツは自己嫌悪に陥ったらしく、自虐して青くなる。
それをハイデマリーは否定した。
「嬉しいですわ。ありがとう」
「! ……はい」
「また、そうね。次は色々とお話ししましょう。近いうちにお会いすることになりますわ」
「はい……そうなんですか?」
「それでは、わたくし用事がありますの」
そう言ってハイデマリーはバルコニーを後にする。
用事があるというのは方便ではない。
ただの事実だ、ハイデマリーにはやるべきことがある。
そして問題と同時に、解決策も見出すことができて、来た甲斐があったと充実した気持ちになったのだった。
ハイデマリーは、取り急ぎグレイディ公爵家跡取りのヴァルターへと連絡した。
グレイディ公爵は領地を離れることができないし、直接戦況に関わらないことにまで時間を割いている暇がない。
そう言った理由で跡取りのヴァルターがハイデマリーの結婚の責任者だ。
ヴァルターも忙しいので準備が整ったタイミングでオルグレン公爵領へとやってきて、効率的にオルグレン公爵やレオンハルトと交流を深め、具体的な協力の取り方を決めるという役割がある。
そんな彼をハイデマリーは早急に呼び出した。
ヴァルターがやってくると早速、話し合いの席が設けられた。
手紙でもやり取りをしておおむねの意思疎通は取れているが、顔を合わせればしたい話は山ほどあるのが貴族というものだ。
それにレオンハルトは歓迎パーティーではあんなふうにいっていたが、オルグレン公爵家は、助力を乞う側である。
彼らは我々の元に敵が来たのなら、西側領地の貴族たちよりもずっとうまくやるというふうに豪語していたが、誰だって自身の領地が戦場になることなど避けたい。
そしてそうなってしまった場合に、できうる限り自分たちの人的損害を少なくし土地の被害を抑えたい。
そのためには、よその武力が必要不可欠だ。
それを提供してもらう、もしくはそうなった時の保険に最も適しているのは今国防を担って、新参貴族たちを統括しているグレイディ公爵家なのだ。
だから新参貴族のハイデマリーの嫁入りを受け入れたし、ヴァルターがやってきたらすぐさま対応する。
それに、ハイデマリーを罵ったレオンハルトの基準で言うと、ヴァルターは立派な歴史ある貴族だ。当然のことだろう。
ヴァルターの隣に座りながら、現金なオルグレン公爵とレオンハルトにハイデマリーは冷めた目を向けてその一挙手一投足を見つめていた。
「それにしても尊敬するよ、ヴァルター君、君のうわさはかねがね聞いている。人を動かす立場でありながら戦地へと赴いて、直接指示をすることもあるらしいじゃないか」
レオンハルトは定型的な挨拶を終えてから、まずはヴァルターのことを持ち上げた。
それはあからさまというわけでも大袈裟と言うわけでもない。
実際に隣にいるヴァルターは割と怖い物知らずで、果敢なところがある人だ。
歳の頃も丁度レオンハルトと同じぐらいだ。
「ああ、そうだな。領地を離れるのは不安なことだったと思うがよく来てくれた」
レオンハルトの言葉に続いてオルグレン公爵がにこやかに言った。
ハイデマリーが挨拶したときは、フンッと鼻を鳴らして不機嫌そうにしただけだったのが相手が違えば対応も違う。
オルグレン公爵の言葉にヴァルターは少し考えて指先を組んで、それからニコリとほほ笑んだ。
「こちらこそ、お時間を作ってくださり恐縮です。オルグレン公爵、公爵令息、改めて、ハイデマリーを……ひいては我々との協力に踏み切ってくれたことをお礼申し上げます」
ヴァルターは、オルグレン公爵たちを静かに見据えていった。
さらりとした金髪が揺れて、ゆったりと細められた瞳は物腰柔らかな印象を与えた。
彼の言葉にオルグレン公爵は深く頷く、それと同時にレオンハルトが口を開いた。
「なに、いいんだ。ヴァルター君。私としても、ソレとの結婚には到底言い表すことができないような複雑な思いがある。……しかし、それは誰にとっても同じことだろう」
……ソレ、なんて初めて言われましたわね。
ハイデマリーのことなど一切無視した配慮のない言葉がレオンハルトから放たれ、オルグレン公爵も同じように続く。
「そうだな。グレイディ公爵令息、お前もこんな者どもを派閥に入れて……いや入れざるを得ない状況の中で良く、やっていると思うぞ」
「ああ、その通りだ。こんな下賤の民をここまで貴族らしく教育し対応してやっているんだ。その精神力には恐れ入る」
「ハハハッ、たしかにな。レオンハルトよ」
二人はとても友好的に、ヴァルターに接していると言えるだろう。
ヴァルターも彼らの言葉を聞いて笑みを深める。
グレイディ公爵家は歴史の古い貴族だ。新参者とは質が違う。
そして己の領地を守るために、新参者を使い屈辱を感じながらも、分家と新参貴族に婚姻関係を持たせ、守りを強固にし、それらを使って後方支援の相手とも縁を結ぶ。
それを平然と受け入れられるなんて、なんと凄いのか、そんなふうにオルグレン公爵とレオンハルトは思っている様子だった。
「そこな女も、一見普通の貴族に見える程度にはらしいものになっている。流石、一流の高貴なる血筋が作り上げた新参は違いますな」
「そうだな、父上。ただ本物じゃない、こいつらは強欲な下賤の民だ」
「その通り、新参貴族と一つ屋根の下にいればたちまち、強欲な彼らに寝込みを襲われるだろう!」
とても楽しげに二人は共通の話題のハイデマリーや新参貴族のことを罵る。
二人の話をにこやかに聞いていたヴァルターは、彼らの視線が自身に向いたことによって笑みを深めて一言口にした。
「ええ、はは。たしかに言えている」
肯定の言葉を受けてレオンハルトとオルグレン公爵はさらに、得意げになっていった。
「だよな。ヴァルター君だって、彼らが跋扈している場所では気分が休まらないことが多いだろう?」
「そうだな、しばらくこちらで本物の貴族だけの気兼ねない生活を送っていっては?」
「もちろん、その女は、近づけさせないぞ」
二人は、とても穏やかにそんなふうに提案した。
その様子を退屈に見つめていたハイデマリーは、ヴァルターはもしかして理由を言わずに去るつもりなのだろうかと疑問に思った。
その途端だった、今までと同じ調子でヴァルターは「ところで」とくだらないことでも言うように、続ける。
「私も、新参貴族の血が流れているということは、やっぱりご存じなかったようで」
ヴァルターがそう告げると、レオンハルトとオルグレン公爵は、つまらない冗談でも言われたかのように反応に困った様子で固まった。
しかしヴァルターはつづけた。
「隣にいるハイデマリーは私のいとこにあたります。どうもあなた方との国の守護者たる新参貴族たちに対する認識の齟齬があるようですね」
「齟齬、というよりも、偏見からくる差別のようなものに思いますけれど」
ヴァルターの言葉にハイデマリーは補足するように言う。
その言葉にヴァルターは変わらずにこやかに答える。
「そうだね。ハイデマリー……君からの報告の通りだ。まぁ仕方ない、協力相手を見つけることは急務だった。戦況も変わってきていることだし」
「王族の方々にきちんと話をつけておいてよかったですわ」
「ああ」
ハイデマリーたちが言葉を交わすごとに二人は、段々と真顔になっていく。
その様子がやけに滑稽に見えてハイデマリーは少し笑った。
「ヴァルター様、わたくしが彼らにお話をしてもよろしくて?」
「もちろん」
「では、……オルグレン公爵閣下、レオンハルト様」
そうして許可を得てハイデマリーは彼らに目線を向けた。
今までは、碌にハイデマリーのことを見ない彼らだったが、否応なしにハイデマリーのことを見つめた。
二人にとってハイデマリーは何の価値もない、むしろ軽蔑して厄介に思うけれども排除することのできない害虫のような相手だと思っていただろう。
しかし、実際の状況はそうではない。
彼らが思っているような自分たちに都合のいい状況なんかではない。
「……わたくしは、あなたがたの家に嫁に入り、グレイディ公爵家と手を組むための道具でしかないそうお考えだったと思いますわ」
「……」
「……」
「ただ、実際はそうではありませんのよ。……もともとグレイディ公爵家を筆頭とした前線に立っている西側貴族たちは、協力相手を探していましたわ。でも悠長に情報収集をして本音を知るのに時間をかける余裕はわたくしたちにはありませんでしたの」
ハイデマリーは、主にレオンハルトを見つめて胸に閉じ込めていた事情を語る。
「そこで、わたくしの経歴に傷がつくという欠点はありますけれどこういう手段を使っただけですわ。王族の方々には緊急を要するのでいくつかの貴族に、事情を説明しないままこう言った協力関係を持ちかけることを許可いただいていますの」
と言っても、彼らはまず一番に名前が挙がったので、ハイデマリーの婚約はこれが初めてのことだ。
この任務をきちんと遂行できるか、ハイデマリーは少し不安に思っていた部分があった。
しかし思ったよりも婚約という物の力は大きく、彼らは時間をかけて精査する間もなく、今前線で戦っている者たちへの明らかなる差別意識をあらわにした。
それは、協力者として相応しくないと判断できるようなものであり、彼らの周りにいる派閥の貴族たちも総じて彼らの意見に従うだけの傀儡だ。
オルグレン公爵家と協力したとしても円滑な支援は望めないだろう。
更にオルグレン公爵家が万が一攻められた時に守る義務が発生するが、そのためにオルグレン公爵領へとやってきた武力をもった新参貴族たちと諍いになることは目に見えている。
「わたくしはあなた方を一番近くで見て、ふさわしいかどうか見極めるグレイディ公爵家からの審査員のようなものですわ」
「し、審査員……だと?」
「ええ、今、戦況をある程度知っている人ならわかる通り、グレイディ公爵家の守りが固く、戦力が分散する傾向が出ていますわ」
「……」
「……」
「その中で一番危険度の高いこのオルグレン公爵家が一番最初に名前が挙がりましたの。一般の方の被害は少ない方がいいですもの。近場の大領地のあなた方と手を結びたかった」
けれどもこんなことではそれは叶わない。それに手を結びたいと願う貴族はたくさんいる。
なんせ、グレイディ公爵家と手を結んだ領地には、後方支援としての負担はあれど、最強の後ろ盾がつくことになる。
そうなれば、一度失敗している敵国もグレイディ公爵家が後ろ盾になっている領地には責めてきづらい。
そしてその引き換えと言わんばかりに、手を結ばなかった大きな領地はリスクを抱えることになる。
次は自分の領地かと気をもむことになる。だから相手は選びきれないほどたくさんいた。その中で取った現実的な策がこれである。
「でも、結果はあなた方も予想ができるように、好ましくないわ。むしろ悪い、わたくしが判断する限り、こちらに兵力を割くことは士気の低下にもつながるほどです」
彼らの顔は次第に土気色になっていく。
「ですから、この婚約、破棄とさせていただきますわ。これは決定事項です。王族の方々に訴えても無駄に終わると伝えておきますわね」
「ば、ばかな……」
「信じられない気持ちかしら。けれども事実ですのよ。あなた方にはチャンスがあった。一番、攻め入られる危険がある状況下で、けれども一番、安全な土地になる好機がありましたわ」
ハイデマリーはつづける。彼らは必死に頭を回しているのか言葉少なだ。
「その好機を自ら投げ捨てた。けれど、オルグレン公爵閣下、レオンハルト様、あなた方もあなた方の派閥の方々も、新参貴族たちを馬鹿にして罵り見下して必要ないと考えている様子だったわ」
「……」
「ならチャンスなど、本当はいらないものだったのでしょうね。わたくしたちの協力など、必要ない、そういうことでしょう? 見下している人間に守られてはその大切なプライドも傷つく、違うかしら」
ハイデマリーが問いかけると、オルグレン公爵がなんとか言葉を絞り出す。
「そ、それとこれとは、話が違うだろう。なんだ、なんなんだ! 下賤の民の分際で偉そうなことを」
「ですから、そういう態度が守られる側の人間の態度ではない、ということですの。わたくしたちだって普通の人間ですわ。ふてぶてしくわたくしたちを見下すような人々を守る道理などどこにあるのかしら」
「っ……!」
オルグレン公爵は青筋を立てて怒りをあらわにするが、返す言葉はないらしい。
父の様子にレオンハルトは追い詰められたような表情をする。彼も状況の深刻さを理解しているのだろう。
父に対してなにかを言おうとして、しかしいい言葉が思い浮かばなかったのか必死になってハイデマリーを睨みつける。
「どうぞ、ご自身たちの誇る貴族のプライドと高貴さで敵を退けてくださいませ。わたくしたちはあなた方でなくとも、協力相手を見つけることなど簡単なことですもの」
睨んでくる親子に向かってハイデマリーは彼らの言葉を逆手にとって言い放つ。
二人は、被害者が加害者を責めるような目線をしていて、自分たちが悪いとは到底思っていないようだった。
「……まぁ、わたくしたちが他の貴族と手を組んだ結果、あなた方の元に敵がやってくる確率も量も多くなることは簡単に予想ができることですけれど、ご武運を祈っていますわ」
しかし、ハイデマリーは当たり前のことをしているだけだ。
より多くの人を守るためには、協力的ではない人を切り捨てる選択だって必要になる。
ましてや、同じ人間として扱ってくれない人のことを守っても、何も得がない。
それでも守ってもらおうなんて都合が良すぎるだろう。
拒絶したのは彼らの方だ。
そういう考えの元、顎を引いて睨み返した。
引くことなどない、ハイデマリーはわかっている。
彼らには何もできないし、のうのうと自分たちのプライドを満足させるためだけに生きている彼らの威嚇など怖くもなんともないのである。
睨み返すと、二人は途端にハイデマリーの覚悟の決まった気迫に驚いたのか少し身を引いた。
それからハッと気が付いてヴァルターの方へと視線を向けた。
「ご、ご冗談を、な、なにか余興のつもりだろうな。こんな操り人形の兵士の娘を使って……こんな……悪い冗談を」
オルグレン公爵はどうにか笑みを浮かべて、ヴァルターにそう語りかける。
それは本気でそう思っているというよりも、そう思いたいという願望が含まれた言葉のように思えた。
その様子に、ヴァルターは口角を上げながらもとても冷たい目をして返す。
「冗談に聞こえるならばそれも構いません。そこまで現実を直視できない方がこの土地の命運を握っているとは……領民たちには同情してしまいますが」
「……」
「一つだけ言えることは、あなた方が後方支援としてはふさわしくないと私の目から見てもはっきりと思いましたよ。オルグレン公爵」
「…………」
「すべての契約は白紙に戻します。けれど、あなた方の望んだことのはずです。我々の実態は新参も古参も、入り混じって差別なく力を合わせて国を守る派閥です。すでにあなた方の嫌う血の混じった穢れた派閥ですから」
二人はヴァルターの言葉を覆すことはできない。
彼らは端からグレイディ公爵家のスタンスを勘違いしていて、新参貴族に侮辱的な言葉を彼の前でも吐いた。
そして正しく認識したからと言って、謝罪と訂正をするにはプライドが高く大きすぎる。
だから、奥歯を噛みしめて脂汗をかきながら俯くしかないのだ。
ぶるぶると震えて、その姿は惨めだった。
後悔しているという言葉がしっくりくるだろう。
しかし、彼らはそれでも謝罪の言葉の一つもいうことができない。
それが彼らの言うところの高貴なる貴族だからだ。
「話は終わりですね。ハイデマリー、もうこれ以上は時間の無駄だね。行くよ」
「ええ、ヴァルター様」
ヴァルターは沈黙で答えた二人に早々に見切りをつけて席を立つ。
ヴァルターに同意してハイデマリーも同じように立ち上がった。
しかしその瞬間、その行動に反射するようにレオンハルトが行動に出た。
テーブルの向こうから、がむしゃらに手を伸ばしてくる。
どうにか引き留めようと思ったのか、将又、ハイデマリーを人質にでも取ろうとしたのか。
どちらにせよ、彼の手が触れるよりもハイデマリーが、杖を抜く方が早かった。
魔法の光の粒がきらりと飛び散る。
素早く生成された岩石が彼の手の甲を打ち落とし、ドゴンと音を立てる。
レオンハルトはテーブルに突っ伏すような形になり「ウガ」と短い悲鳴を上げた。
「……」
手の甲を抑えて、なんとかハイデマリーの方を見上げるレオンハルトに、ハイデマリーは杖を突きつけて、静かに見据えた。
「……」
「……」
応接室の中には緊張感が走り、しばらくの沈黙が流れる。それから彼は震える声で言った。
「ま……待ってくれ、今一度、だけ、き、機会を……」
謝罪ではなかったものの、レオンハルトは今更、態度を変えた。
しかしそんなレオンハルトに、ハイデマリーはほんの少しも気持ちが動かなかった。
「……あら、見下した相手に縋りつくのが高貴なる貴族なんですの?」
そう問いかけると彼は、やっぱりすぐに「なんだとっ!」といかれ狂って「そんなわけないだろっ!」とテーブルをたたいてまくしたてた。
「なら、どうぞご自分たちで戦い抜いてくださいませ。わたくしは、あなた方の嫌う下賤の民ですもの。望んだとおりここから去ります……良かったですね。これで夜はぐっすり眠れますわよ」
「っ」
「そんな暇があればだけれど」
ハイデマリーはにこりと笑って彼が、ハイデマリーとの結婚が悔しくて夜も眠れないと言ったことを引き合いにだして返した。
そしてヴァルターとオルグレン公爵家の屋敷を後にした。
ヴァルターは同じ馬車に乗ると、大きくため息をついてうんざりとしている様子だったが、ハイデマリーはヴァルターの目線に苦笑で返したのだった。
後日、ハイデマリーとの婚約が白紙に戻り、グレイディ公爵家との協力もおじゃんとなったオルグレン公爵家の派閥は大きく荒れた。
具体的には中級下級貴族たちが不満を持って公爵邸に詰めかけているらしい。
隣国に攻め入られる前に、オルグレン公爵やレオンハルトの平穏な日々は終わりを告げてしまったようだった。
そしてハイデマリーはラファルグ侯爵家をヴァルターとともに訪れていた。
婚約こそしていないものの、ハイデマリーはラファルグ侯爵家の跡取りであるハインツに目をつけていた。
領地の規模としてはオルグレン公爵家に劣るものの経済基盤は申し分ない。
ハインツ自身も戦況と国の状況、自分の役目をきちんと理解している様子があったし、度胸もあると言っていいだろう。
それにハイデマリーが注目したのは彼の気質だ。
ハインツはどこからどう見ても、気弱な人だと思う。
人間、産まれながらにもつ気質というものがあると思うが、ハインツはそれが元から優しく気弱なたちだと思う。
けれどもハインツは人のテリトリーに入ったとしても他人の意見に流されずに、迎合せずに、自分の正しいと思うことを貫くことができる。
それはなぜか。
きっと育成環境が、ハインツをそうさせたとハイデマリーは考えた。
きっと彼の育った場所は気弱だとしても正しくあることが大切で重視され、声や態度が小さくプライドを大きく持っていなくても舐められず意見を聞いてもらえる。
そして、誰かよりも優しくても搾取されるばかりではない、だからハインツは人にやさしく出来るし、状況を正しく見て自分の判断をすることができるのではないか。
そんな人を生んだ場所であるラファルグ公爵家が、自分たちの権利を主張して他人をないがしろにする場所である可能性は低いと考えた。
だからこそヴァルターに推薦した。
するとヴァルターは、期待値が高いと判断し、彼らを精査する手間を掛けることを決め交流が始まった。
もちろん、話がうまく進めば、ハイデマリーはハインツと結婚することになる。
だからこそ、ハイデマリーは彼に話をしておかなければならないことがあった。
話があるからと場を設けて、改めてハインツと向き合うと彼はとても緊張しているらしく、動きがカチコチしていて、居心地が悪そうだった。
そんなハインツをしばらく見つめてから、ハイデマリーは彼から視線を逸らして窓の外を見た。
そして、適当に話し始めた。
「あの日の夜、あなたはわたくしに言いましたわ」
「え。あ、はい」
「色々な励ましの言葉とともに、わたくしは可憐で、なにもわたくし自身の手が血に染まっていて穢れを背負っているわけではないと」
廊下から漏れる薄明かりのバルコニーで、ハインツはハイデマリーを不器用に励ましていた。
その様子を今でも鮮明に覚えている。
「い、言ったと、思いますが」
「……」
「ま、まずかったですか?」
恐る恐る聞いてくるハインツに、ハイデマリーは緩く首を振ってこたえる。
「いいえ」
「あ……ええとじゃあ……?」
どういう意味か。問われてハイデマリーは、後ろめたい気持ちで答えた。
「……それ以外の言葉はおおむね、間違ってないと思いましたわ。ありがとう」
「は、はい」
「でも、その言葉は違いますのよ。ハインツ様」
「……」
「わたくしたち……わたくしの目が節穴じゃないのなら、そのうち結婚するわね」
「ハイ」
「それは放っておいたらそうなるし、言わなくてもいいことではあるのよ。……でも、せっかくあなたが必死に向き合ってくれたのだから、わたくしが嘘を背負ったまま騙すように結婚するのは嫌だったのよ」
なんとなしに事情を説明して、ハイデマリーはこんなふうに人を気遣うことがあまり得意ではないので、らしくないと感じながらも、ゆっくりと視線を戻した。
「……わたくし、時折戦いに赴くことがありますわ。強い魔法を持っているから、手は血まみれと言っていい」
「……」
「人を殺めた咎を背負っている、けれど苦悩もしていない、だから可憐で可哀想な少女ではないのよ」
「……」
「……」
続けて『ごめんなさいね』となぜか謝罪が口をついて出そうになった。
悪いとは思っていないけれども、なんだかそう言いたくなった。
けれども同時に、ハインツに対して悪態もつきたくなった。どうせそれでも結婚はすることになるだろう。と強くにまくしたてたくなった。
らしくないことをしたからだろうか、少し胸が苦しくて、やめておけばよかったかと少し後悔した。
なんにせよ、ハインツのその後、取るであろう行動をさえぎりたいような知りたくないような気持ちだった。
けれども、顔をしかめて黙っていた。
するとハインツは、震える息を吐きだして、肩をすくめて頭を下げるように顔を俯かせた。
「ごめん、なさい」
……結婚なんてお断りという、意味の、謝罪?
あまり意図が読み取れずに、ハイデマリーは首をかしげる。
けれどもすぐに顔をあげたハインツの瞳を見てすぐに違うのだと悟った。
「僕のあの時の言葉で、あなたにそんなことを告白させるてしまって、ごめんなさい。配慮が足りていませんでした。っ、自己満足過ぎて自分が恥ずかしいです」
「……」
「申し訳ありません、ハイデマリー嬢、あの、あのでも、ありがとう。こちらこそ、ありがとう、ございます。僕の気持ちを考えてそう言ってくださいって」
「……」
「あなたは、優しい人ですね。あの、僕、ハイデマリー嬢」
ハインツの反応は想定外でハイデマリーは呼ばれて、無意識に小さく「はい」と返事をした。
「あなたが推薦してくださって、父や母も嬉しくもあわただしくしていて、自身も忙しく、成り行きのままにここまで来てしまいましたが、きちんと気持ちを伝えていませんでした」
ハインツの瞳はまっすぐとハイデマリーを見つめている。
何者かなどというフィルターなどかけずに、まっすぐと見つめている。
「僕は、あなたのような気高い人に選んでいただけて光栄に思っています。その手が人を殺めていたとしても、毅然とあの状況で意見を言い、判断をして、まっすぐに彼らを見つめていたあなたが強く格好良く映りました」
少し手が震えて、うまく気持ちが言い表せそうにない。
「だから、嬉しいです。ぼ、僕も隣に並ぶのにふさわしい人になりたいです。これから、よろしくお願いします」
「……」
「……」
「…………反応が、想定外過ぎますわ。なんて言ったらいいのか、わからない」
ハインツの言葉にハイデマリーは、困り果てて返した。
ハインツはキョトンとして、それから少し照れて「すみません」と小さく謝ったのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
下の☆☆☆☆☆で評価、またはブクマなどをしてくださると、とても励みになります!




