牢の底で
四人組が奉行所の牢に入れられたのは、秋の夕暮れだった。湿った石畳の匂いと、鉄錆のような臭気が漂う。牢は板塀で仕切られ、奥は薄暗く、外の光は格子の隙間から僅かに落ちるだけ。
彼らが放り込まれたのは「大牢」と呼ばれる、軽罪から中罪の者たちが詰め込まれる部屋だった。だが軽罪とは名ばかりで、中には強盗や殺人の下手人も混じっている。牢の中にはすでに十数名が身を寄せ、腐った藁の上に胡座をかいていた。
その奥、一際広く藁を敷き、囲むように数人を侍らせている男がいた。髪は総髪だが手入れが行き届き、粗末なはずの衣は他よりもまだ色鮮やかだ。――牢名主、宇之吉。
宇之吉は、四人組を一瞥して唇の端を吊り上げた。
「……おう、新入りだな。入ったらまず挨拶だろ?」
筆頭格の男は顔をこわばらせながらも膝をついた。
「お、お世話になります」
「世話ぁしてやるさ。だが、その前に“手土産”だ」
宇之吉の目が、彼らの腰のあたりや荷物を探る。四人組は牢に入る前に役人に帯刀や所持金を没収されていたが、着ている羽織や股引、腰紐にはまだ使える布地が残っている。
「……な、何もねぇんだ」
「何もねぇ? その羽織はまだ使えるじゃねぇか。寒くなる前に貰っといてやるよ」
拒む間もなく、子分たちが近寄り、羽織や股引を乱暴に剥ぎ取った。抵抗しようとすれば拳が飛び、背中に膝蹴りが入る。衣を失った四人組は、藁の上で膝を抱え、薄い下着一枚で震えた。
夜が来ると、宇之吉はさらに「入牢の礼」と称して、他の囚人たちにも四人組の持ち物を分け与えた。残ったのは着古した肌着だけだった。
日が経つごとに、牢の寒さと飢えが彼らを削っていった。牢内の飯は、麦と米を混ぜた粥に味噌汁がわずか。それすら牢名主が分配を握り、気に入らぬ者には半分以下しか回らない。四人組は日ごとに頬がこけ、目だけがぎょろついていった。
そして冬の入口、ある晩のこと。
牢の隅で横になっていた一人が、夜明けに息をしていなかった。役人は帳面に「病死」と記し、死体を粗末なむしろに包んで運び出した。
その後も二人目、三人目と続いた。食事を減らされ、殴られ、冷え込みに耐えられなくなった。役人も看守も見て見ぬふりをした。――牢の口減らしは、こうして行われるのだ。
最後に残った筆頭格の男は、宇之吉の前で震えていた。
「……た、頼む。せめて生かしてくれ。もう何もねぇ」
「生かすも殺すも、俺の気分次第よ」
その夜、男は水桶のそばで俯いたまま動かなくなった。朝になっても誰も声をかけない。役人が無言でむしろを広げ、残骸のような体を包み、牢の外へ運び出した。
辻を荒らした四人組は、裁きを受ける前に、この世から消えた。罪状も名も、奉行所の記録には小さく残るだけだった。




