激突、鴉羽衆 弐
江戸奉行所の門をくぐると、鉄斎の心は引き締まった。捕縛した鴉羽衆八人は、縄でがっちりと結ばれ、頭を垂れて歩いている。夜叉之助をはじめ、全員が手配書に名を連ねていたため、町奉行の目にも彼らの重罪は一目瞭然だった。
「これが、噂に聞く鴉羽衆か……」
取り調べ役の同心が、薄く眉をひそめる。
鉄斎は静かに頭を下げ、余計な言葉は発さなかった。政之輔も横で手を合わせ、沈着に振る舞う。
最初に尋問が始まった。夜叉之助は、捕らえられた時の様子からすでに観念しているが、悪びれる様子はない。
「俺は……悪くねぇ」
顔を紅潮させ、言葉を詰まらせながらも抵抗する。
奉行所では証拠と証言が揃っており、夜叉之助の口から出る言い訳は通用しない。廃寺に残された盗品や、目撃者の証言が決定的だった。鉄斎は冷ややかに見守る。彼の体に残る闘気が、夜叉之助に重くのしかかる。
ついに奉行所の判決が告げられた。夜叉之助を頭とする鴉羽衆八人は、江戸幕府の法に従い厳罰に処される。
「夜叉之助ら、全員江戸流刑、または死罪。盗品は没収、賞金は捕縛者に支払う」
鉄斎は静かに息を吐く。遂にここまで来たのだ。これだけの手配書、これだけの悪党たちを捕まえた功績は、江戸中で語られることだろう。
その後、奉行所の金蔵で賞金の受け取りが行われた。小判五十枚。重みを手に感じながら、鉄斎は政之輔に目配せする。
「今回はお前にも手伝ってもらった。半分ずつだ」
政之輔は一瞬戸惑いながらも、すぐに深く頭を下げる。
「ありがとうございます、鉄斎殿。これでやっと、家族に少し顔を見せられます」
鉄斎は小判を数え、丁寧に二人に分ける。金の重みよりも、やり遂げた達成感の方が胸に広がった。夜叉之助たちを追い詰め、確実に仕留めた感触が、まだ体に残っている。
奉行所を出ると、江戸の街は朝の光に照らされ始めていた。町人たちの足音、行き交う商人の声、屋台の呼び声――全てがいつも通りに聞こえる。しかし、鉄斎は知っていた。今日からこの町は、少しだけ安全になったのだ、と。
政之輔が小さく呟く。
「江戸は広い……しかし、こうして悪党を退治していけば、少しは平和になるのですね」
鉄斎は薄く微笑み、頷く。
「そうだ。だが油断は禁物だ。まだまだ、手配書は消えやしない」
二人は小判を袋に収め、街の雑踏に消えていった。重厚な功績を胸に、次の悪党を待つ夜の影の中へ。江戸の闇に生きる賞金稼ぎ――鉄斎の、また新たな一日が始まろうとしていた。




