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灰色の王  作者: ためいき
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1章【灰の記憶と誓いの刻印】

 神谷蓮は深夜の冷たい風の中、焚き火の揺らぎを見つめていた。リリスは近くで眠り、グランは黙々と武具の手入れをし、サリナは木の上から見張りを続けている。ミレイユだけが同じく起きていて、焚き火の向こうで分厚い魔道書をめくっていた。「……眠れないの?」その声に蓮は軽く頷いた。「今日、見たんだ。自分が……世界を焼き払う夢」ミレイユは本から視線を上げる。「それは……記憶、なのかしら」「わからない。でも、怖くなかった。焼ける街も、泣く人も、全部……どこか懐かしかった」その答えにミレイユは本を閉じて言った。「だったら、自分を信じるしかない。貴方が破壊を望んでいたとしても、今は違う。今の神谷蓮が、どうしたいかでしょ」その言葉に、蓮は火の中に指を差し入れるように見つめた。



 やがて、朝が来る。旅の目的地、“クル=エトス”は封印の聖地と呼ばれているが、今は荒廃し、魔物の巣となっていた。そこに潜む“灰の記憶”を回収するのが彼らの第一の使命だった。だが、その地に近づくにつれ、空気が変わっていく。生き物の気配が消え、地面が黒く焦げ、空が薄暗くなっていく。蓮は心の奥底に妙なざわめきを覚えていた。まるで……何かが呼んでいるような。ついにクル=エトスに到着した一行は、かつて聖域とされた神殿の地下に進む。その地下には、巨大な扉があった。中央には、灰色の紋章が刻まれている。それを見た瞬間、蓮の中に何かが流れ込んできた。数千の叫び、怒り、絶望、そして……約束。蓮の右手が勝手に動き、扉に触れた。次の瞬間、世界が反転した。彼は一人、白い空間に立っていた。そこに現れたのは、もう一人の“自分”だった。金色の瞳、黒いローブ、そして何より、圧倒的な威圧感。それは間違いなく“灰の王”そのものだった。「ようやく来たか。選ばれし再来者よ」蓮は問いかけた。「お前が……俺なのか?」「その逆だ。お前は俺の残り火。過去を受け入れ、新たな世界を選ぶための器」蓮は反論する。「お前は全てを焼いた!人も街も、仲間さえも!そんな奴の後継になんてなりたくない!」灰の王は静かに言った。「俺はただ、約束を守れなかっただけだ。あの時、信じた人に裏切られ、希望が尽きた。だが、お前は違う。お前には仲間がいる」その言葉と共に、白い空間が崩れ始める。蓮の意識は引き戻され、仲間たちの声が聞こえる。「蓮!しっかりしろ!」「なんて強い魔力の波動だ……あれが、“記憶の鍵”なのか?」目を覚ました蓮は、神殿の床に倒れていた。だが、右手には新たな紋章が刻まれていた。それは“誓いの印”と呼ばれるものだった。この印を持つ者は、過去の王の記憶と力の一部を継承する。リリスは震えながら言った。「貴方は……過去と繋がった。でも、同時に未来を選ぶ者になったのです」その言葉を受けて、蓮は決意する。「なら……俺はもう、逃げない」その日から、蓮の力はさらに増し、魔力の色も灰から白へと変わっていった。純粋な“再構成”の力――それは壊れた世界を修復する力でもあった。



 一行は次の目的地、“聖樹エリシア”へと向かう。そこには世界樹の巫女と呼ばれる存在がいて、蓮の力の真価を見極める鍵を握っていた。だが、道中で出会ったのは、かつて灰の王と対立した“黒の騎士団”の残党だった。彼らは蓮を“破壊者の再来”と見なし、問答無用で襲いかかってくる。激しい戦闘の末、蓮は新たな力“時の刃”を覚醒させる。それは時間を一瞬だけ逆行させる能力であり、攻撃を無効化する禁断の力だった。蓮の内なる記憶は囁く。「この力に溺れるな。すべてを逆転させれば、世界に意味はなくなる」だが、蓮は自らを律しながらその力を使いこなしていく。聖樹エリシアにたどり着いた一行は、巫女・セレナと対面する。彼女は淡い緑の髪と翡翠の瞳を持ち、世界の記憶を視る能力を持っていた。セレナは言う。「あなたは灰の王の記憶と、神谷蓮の魂の両方を持つ者。ゆえに“世界の審判者”なのです」蓮は聞く。「審判って、何をどう判断するんだ」「この世界を、再生させるか、終焉へ導くか。あなたの選択が、すべてを決めます」あまりにも重い使命。だが、蓮はもう迷わなかった。「それなら、俺はこの世界を救いたい。この仲間たちと共に」その決意に応え、セレナは“再誕の鍵”を託す。それは七つに分かれた世界の核を集める鍵であり、すべてを集めることで、世界を“選び直す”儀式が可能になるという。だが、彼らの旅路を追う者がいた。“黒の王”と呼ばれる存在。かつて灰の王を裏切った者であり、今や異世界の歪みそのものとなった災厄。彼は言う。「私はただ、選ばれなかった。それだけだ。だが、次はこの手で終わらせる」



 こうして物語は加速していく。蓮の過去が明らかになればなるほど、仲間との絆は強くなり、同時に試練も増していく。信頼とは何か。正義とは何か。再生とは何か。その問いに蓮は、戦いを通じて一つずつ答えを見つけていく。そして彼は知る。この世界に来た本当の意味を。それは“世界を変える”ためではなく、“自分自身を赦す”ためだったのだと。灰の王ではなく、神谷蓮として――この世界と向き合うために

貯めておいた2個目まではスムーズに出せました、3つ目は明日には出そうと思ってます。

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