王妃メリルとグリオン王
国の娘達は初代王女の力を受けてから、娘にだけ5歳の時に儀式で守護神から恵みを与えられる
恵みは様々な力であり個性である
花を出す娘、風を操る娘、動物と会話する娘、似た恵みはあれど同じ恵みはない
一人の娘が居た
娘の名前はメリル、青い髪に目を隠す青い布での生活
メリルは5歳の儀式で恵みを授かったものの、その恵みを使う事無く布で隠し生活するようになった
メリルの両親はメリルに恵みをみせるよう言うが、メリルは決して恵みを見せなかったし、それから一言も話さなくなり、それを両親は気付かない
両親はメリルを捨て妹のシャルロットに期待し溺愛するようになった
メリルを居ない者としデビュタントも出さなかった。
そんな中メリルは舞踏会に呼ばれた
両親はシャルロットだけ連れて行きたかったが招待状にはメリルの名前もあり仕方なくメリルも連れて行く事に
シャルロットは着飾り、メリルは適当のドレスを着せて向かう
メリルは避けるように壁の花になる
目が見えず不慣れな場所の為両親もメリルよりもシャルロットが大切な為無視である
場の雰囲気が変わる、王が来たのだ
現王グリオンは疲れていた
父王が亡くなり安寧の為動き、落ち着き始めた時周りから王妃をと言われ仕方なく舞踏会を開く事にし、国の令嬢達を集める
結婚などしたくない、妻となった者を苦しめてしまうから
開かれた舞踏会、令嬢達が着飾り濃い化粧にグリオンは顔を蹙める
その中目隠しした令嬢に目を奪われた
海のような青い髪にラピスラズリ色のドレス
ドレスと同じ布で目を隠す令嬢
グリオンは令嬢に向かい歩き出す
グリオンは令嬢しか見ていない
令嬢達は王を見て道を開ける
自分ではない、王に見初められた令嬢は一体誰だと気になる
シャルロットは浮かれていた、自分が王に選ばれたと、しかし王はシャルロットも通り過ぎる
(私では無い、誰が王に)
シャルロットが見ると王は姉メリルの前に立ち止まった
(何故、何故臆病者の姉が王に、あり得ない)
「目を隠された青い妖精、どうか私と踊ってください」
メリルは驚き戸惑う
自分自身目が見えず、ダンスの経験も無いのだから、グリオンはメリルの手を取り踊り出す
グリオンはメリルを見る
(話せず見えず、ダンスの教育も受けてない、彼女の目が見たい)
シャルロットは怒る
(何故目が見えない、役立たずな姉を王は)
両親も怒りが募る
恵みを襲われる臆病者のが何故シャルロットが王妃に相応しいと言うのに
二人のダンスが終わるとグリオンはメリルから離れようとしない
令嬢達や貴族達も無視しグリオンはメリルを支え気遣う
グリオンはメリルの目になったように教え休ませる
帰宅の時すらグリオンはなかなかメリルから離れず帰そうとしない
そんな王を見て両親もシャルロットもメリルに怒りが溢れる
メリルさえいなければ
馬車が動きグリオンは睨む
(あの家族はメリルが見えないと言うのに無視しサポートすらしない)
グリオンはメリルに一目惚れし家族を見ると両親はメリルに関心が無く妹のシャルロットを優先し、妹シャルロットも姉メリルを無視し自分がとでしゃばる
しかしグリオンは何故メリルが特別に見えて離れたくないのか解らない
両親は怒りメリルを閉じ込めた
「連れて行くんじゃなかった」
翌日メリルを連れて行かずに舞踏会へ向かうとグリオンは挨拶そこそこに奥へと戻られた
メリルが居ないだけで、他の令嬢達にも目もくれず立ち去る王
メリル以外関心すら抱かない
王に近づきたいが王が居なければ意味が無い
グリオンはメリルが居ない事に諦め執務室に戻る
父王は王妃を失い、無気力になり私を育て自害なさった
それ程母を愛していた、そして自分もメリルを求めている
「メリル嬢に贈り物を」
諦めて帰れば王からメリルへの見舞いの品に溢れていた
王はメリルしか見ていない
翌日メリルを連れて行くとグリオンはメリルから離れずに傍らに陣取る
グリオンはメリルと結婚する事を発表する
メリルは従うだけ
(私はお飾りの王妃でしかない、目が見えず話せないのだから、愛人が居ようが関係無い)
メリルは王宮で暮らす事になり、王宮の執事、使用人達がメリルに道を教え、目となり導く
家に居た時と違い戸惑う、家では誰も何も教えてはくれなかった。
そして王妃教育が始まる
すると実家から来た待女と教育係が口論になる
「お嬢様は目が見えず話せないんです、教育など無駄です」
教育係は待女の言葉に怒りを覚える
「メリル様は未来の王妃様です
見えずとも話せずとも学ぶ事は出来ます」
互いに睨み合う
そしてメリルとグリオンは結婚し王妃となったものの教育係が殺され、使用人達もミスや怪我が増えメリルは王妃宮に閉じ籠もった
(執務も最低限やれば何も問題もなく誰も殺されず陛下も自分を気にせず愛する人と過ごせる)
しばらくしメリルは体調を崩し寝込み、妊娠し王女を産み亡くなった。
グリオンは娘を抱き泣く
王医の診断でメリルは毒死と言われグリオンは怒る
(誰がメリルを殺した)
グリオンは王妃の室内を目にした
「私が王妃に与えた贈り物は!」
使用人は驚く
「陛下、王妃様は陛下から何一つ貰ってません」
その言葉にグリオンは驚く
グリオンは確かにメリルにドレスや目隠しの布やアクセサリーなどを送った
身に付けてくれないのは気に入らなかったからと思い込んでいたが違っていた
誰かがメリルの贈り物を奪い、毒を盛らせた
考えられるのはメリルの実家、ルークレイク伯爵だろう
メリルとの結婚後ルークレイク家は大人しかった
(奴等は自分の娘を殺したのか)
グリオンは娘を抱いて妻の葬儀を見守る
(メリル、君だけを愛してる、娘の名前はジェンマ宝石だ済まない私の愛しき海メリル)
葬儀が終わるとグリオンはルークレイク家に向かう
グリオンはルークレイク家を捕らえ爵位を剥奪した
「私が愛したメリルを苦しめ、私がメリルに与えた物を奪う奴等を許せるほど寛大ではない」
グリオンの冷たく言い放つ
「あ、姉は恵みを恐れる臆病者ですわ
その臆病者が王妃など」
「貴様らはメリルの恵みを知らずに貶して来たのだろう、メリルの恵みは王妃に相応しい恵みだ」
三人が驚く
(あの臆病者の恵みは一体なんだ)
シャルロットは怒る
(姉はお飾り王妃よ、陛下が姉を愛するはずが無いわ)
「姉は臆病者で王妃に相応しくありません、教育もままならず」
「死んだ教育係は優秀で立派な王妃になると言われた、王妃として産まれた娘だと誇っていた」
苦虫を噛む
あの教育係は目の見え無い、話さない姉を褒め尽くしていた
こちらが出来損ないと無意味と伝えてもだ、しかも教育係も王も姉を手放さなかった
ルークレイク家は首都から追い出しルークレイク家当主は捕らわれた
それにシャルロットは納得しない
貴族は娘が王妃になったルークレイク家に近寄ろうとしていたが、実の娘を毒殺させて、王から贈り物を奪っていたと知り離れていった
妹シャルロットも姉を心配していたと言うのに、全てが嘘だったのだ。
王妃が死んだと言え時間は止まる訳ではない
産まれた子供は娘だからと再婚を言う大臣だが、グリオンは王妃はメリルだけだと怒鳴り散らし、何かと王妃の部屋に向かい過ごす日々
グリオンから与えた物も実家からの物すらない宮は寂しく寒かった
王妃の使用人は辞めさせたり別の仕事を与えた
(メリル、君しか愛せない、君が居ない時間が長く苦痛だ)