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黒衣の角刈り男  作者: XX
11/13

第11話:中古人間ショップ

田舎ではありました。

移動式中古ファミコンショップ

 昔、父親に聞いたことがある。


「お父さんが子供のとき、ファミコン黎明期でな」


 小学校の通学路に、たまに見知らぬバンが停まってて。


 そこで看板も出さず、荷台を全開にしてそこに商品を並べて。

 中古のファミコンソフトを売ってる業者が居たもんだ。

 お父さんたちはそれを見かけると、どんなソフトを売ってるのか覗きに行ったんだ。

 楽しかったなぁ。


 そんなことを言っていた。


 ……ふーん。


 なんというか、昭和って感じだよな。

 何かの法律に違反してそうだけど、商売だけが先走ってる。

 でもそれはそれで、面白そうだよな。




 ……そんな懐かしい記憶を思い出した。


 俺の大学と下宿の通学路に、何か見知らぬバンが停まってて。

 そこで荷台が全開になっててさ。

 で、何か中に並べている。


 その様子に、父親の思い出話を思い出したんだ。


 ……この令和の時代に、こんなもの、まだあるの?


 当然だけど、興味が出て来た。


 何を売ってるんだろうか?


 覗いたら……


 小さい電子製品……SDカードか。

 それが大量に並べられてた。


 で、そのSDカードには顔写真が貼ってある。


 色々ある。


 子供の顏、女の顏、男の顏、老人の顏……


 店主に聞いた。


 角刈りで、全身黒タイツ。

 背中に亀の甲羅みたいなアーマーを背負った、スニーカーの若い男に。


「お兄さん、ここ、もしかしてこれを売ってるの?」


 するとごそごそこっちに背中を向けて作業している角刈りお兄さんは


「そうだね」


 そうにこやかに答えた。

 だから


「これ、いくら?」


 まず値段が気になったので訊いたんだ。

 売ってる割には、値段がどこにも書いて無いんだ。


「500円から100円だ。カテゴリ毎に分けているから、好きなのを選ぶと良い」


 カテゴリ?


 んん、よく見ると書いてるな。


 姉とか。弟とか。

 父親とか。妻とか。


 恋人とか。


 んん?


「これ、何?」


 カテゴリとかいうのを読むと一気に分からなくなった。

 だからそう訊くと、もっと分からない返答が返って来た。


「中古人間」


 へ?




 若い男は話してくれた。

 ここで売ってるのは中古人間であると。


 このSDカードをスマホに入れて、中の画像データを読み込めば、スマホから中古の人間が出現する。

 出現した中古人間は、その分類されているカテゴリに従ったポジションに収まり、キミと関わってくれる。


 ふーん。


 そんなこと、あるわけねぇ。

 そうは思ったけど……


 なんか、欲しくなってしまった。


 インチキでもさ、1個最大500円だろ?


 大して痛く無いんだよな。

 俺、家庭教師のバイトしているから懐はそんなに寒く無いし。


 なので


 恋人カテゴリで、好みの顏の女の子の写真が貼ってあるSDカードを3枚買った。

 1個、500円だった。


 1500円……


 俺が代金を払うと、角刈りの男性は


「では充実した中古ライフを」


 そう言い残し。

 店を畳み、バンを動かし。

 去って行った……




 下宿の8畳の部屋に帰って、俺はその買って来たSDカードをスマホに入れて中身を見ようとした。

 で、SDカードの交換をしてしまったとき。


(あ、ウイルス……)


 俺はそこでその可能性に思い当たり、血の気が引いた。

 買うときに現金で完結したから、あと腐れないし大丈夫だろうと思ったんだけど。


 その可能性、あるじゃん!


 慌ててスマホのカードを再交換しようとした。

 したんだけど……


 その前にスマホの液晶画面が輝いて、そこから人間が出現したんだ。


 黒髪ロングの、清楚系の育ちの良さそうな可愛い女の子が。


 出現した女の子は自分の身体を確かめるように見回して。

 俺に気づき


 こんなことを言って来た。


久津夫くずおさん、よろしくお願いしますね。私は舞多代ぶたよです」


 そして微笑み、いきなり俺に抱きついて口付けをしてきて。

 そのまま俺は押し倒された。




 ……すげえ。

 いきなりこんなかわいい子が恋人設定でスマホから飛び出して来た。


 しかもいきなりセクロス可って……


 裸で8畳の部屋で、彼女と一緒に寝ながら


 俺は興奮していた。

 こんなこと、本当に現実なんだろうか……?


 こうなってくると、他の2枚も気になって来る。


 ……呼び出そう。


 そう思い、スマホに手を伸ばし、SDカード交換作業に取り掛かろうとすると。

 舞多代ぶたよが起きてきて


「あ、久津夫くずおさん。すごく気持ちよかったです。大好き……」


 そう言って、俺とキッスする。

 それでまたムラムラしてきたけど、それよりも他2枚が気になるから。


 グッと我慢し、カードの交換作業に専念する。


 そして呼び出した。


「アタシは祭子サイコ。これからよろしくアナタ!」


 1人は髪型はボーイッシュな感じで、引き締まった身体に巨乳が乗ったエロボディな子。


「私は原美はらみです……。精一杯尽くします……」


 そしてもう1人は小柄な女の子。

 クセっ毛のロングで、大人しそう。

 ちと幼児体型だけど、これはこれで悪くない。


 おお……

 タイプの違う恋人が、一気に3人も。


 こんなの……マガズンのラブコメじゃん!


 そう思い、俺の鼻息は荒くなった。


 よし。

 まずは4人でイチャイチャして……


 そんなことを考えて、俺は原美はらみにニヤニヤしながら


「さあ、おいで」


 そう言おうとしたとき。

 そのときだった。


「ううっ!」


 ……いきなり原美はらみが、口を押えて駆け出して部屋を飛び出した。


 な、何事!?


 俺も追いかけて部屋を飛び出す。

 原美は何かを探しているようだった。


 で、それを見つけたのか。

 一直線にそこに駆け込む。


 ……それはトイレだった。


 この下宿は風呂トイレ共同。

 だから、俺の部屋の飛び出したのか。


 何だ?

 おしっこ?

 それともウ〇コ?


 だけど


 おえええええええ!!


 嘔吐の声。

 えっと……?


 さすがに、気づく。


 これ多分、悪阻つわりだ。


 そんな馬鹿な……まだ俺は、原美はらみとヤってないのに……!


 呆然としながら、自室に戻る。


 すると、自室のノートパソコンの前で、祭子サイコ舞多代ぶたよの首を絞めていた。


「うげええええ……」


「死ねえええこの寄生虫!」


 般若の形相で、舞多代ぶたよの首を絞める祭子サイコ


「何してるんだやめろ!」


 俺は祭子サイコに組み付いて、引き剥がした。

 すると舞多代ぶたよは激しく咳き込み、酸素を貪る。


 その命に別状は無いようだ。


 一体何があったんだ?


 そう思うと、舞多代ぶたよを指差し祭子サイコ


「この寄生虫女、アナタのパソコンでアマゾーンに接続してさ! それで勝手に高額商品を買おうとしたんだよ! 殺さなきゃ!」


 目を吊り上がらせて、糾弾する。

 言われた舞多代ぶたよは手振りを交え


「愛し合う2人の財布は一緒なんです! 久津夫くずおさんの資産は全て私のモノなんです!」


 そう自分の正当性を大真面目に訴える……


 ちょっと待てや……


 原美は妊娠してるし。

 祭子サイコはヤンデレ。

 そして舞多代ぶたよは破滅系浪費女だと……?


 全員可愛いけど、全員地雷じゃないか!?


 何でだ……?


 俺は考えた。


 で、すぐに分かってしまった。


 ……そっか。

 中古だもんな。


 つまり1度は他人のものだった存在なんだよ。


 だから何かしら欠陥が無ければ、手放さない訳が無いんだ。

 特にこれだけ可愛いのに、中古で放流されたってことはさ……


 外見以外の部分で、何かしら問題があると考えるのが自然じゃ無いか!


 ……何で俺はそこに気づかなかったんだッ!

この話の主人公にはあまり非がねぇな。

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― 新着の感想 ―
ツイッターで読みますタグやった者です! コメントありがとうございました✨ 世にも奇妙な物語好きなので、わくわくしました。 短編で色々なお話が読めて、不思議だったり不気味だったりテイストもバラバラで、…
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