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五話
毎週末の夕刻、稲村ヶ崎や七里ヶ浜から伊豆へ通じる海岸線の道路には渋滞を知らせる車のヘッドライトの帯が延々と続いていた。
この日も例外に洩れず同じ景色が広がっていたが気の性か何処か違う喧騒さがあった。大晦日となったこの日、人々が何の為にあくせくしてるのかは誰にも分からないが師走の最後の日である事を騒々しい渋滞音が語っていた。
天候は既に回復し、遠くには富士山と丹沢や伊豆の山々の陰影が夕焼けの中に広がり、反対側の空には月と星が輝きを増しその姿を誇示して微笑んでいた。気温はこの冬一番の寒さを記録していた。
一年前の大晦日、小田急電鉄は例年通り新年に掛けて、年越しの列車を元旦の朝まで運行していた。
初詣と初日の出の為に運行されているロマンスカーに初詣号があった。真冬の夜中の寒さを凌ぐ空間としては最高の環境が約束されている。もしも初詣号の特急券が手に入らなければ、片瀬江ノ島まで通勤電車の中で震える事になっていたかもしれない。
満席に近い状態の初詣号は新年の朝三時過ぎに片瀬江ノ島駅に到着した。