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一話
十年以上前に某大手出版社に応募した原稿を一部修正して短編連載として掲載しました。
ジャンルはノンフィクションです。
電車の外にはひらひらと小雪が風に舞っていた。小雪が窓ガラスにぶつかり弾けた。溶けた小雪がガラスに僅かな水滴の足跡を残す。
遠くの雲に隠されていた太陽は雲の表面にそのシルエットを映し出し、ぼんやりとした黄色い不思議な空間に見える。灰色がかった空は明るさを取り戻しつつ、雲の隙間から溢れ出た夕陽が行き場を失い、駅に近づく列車の窓ガラスに反射している。屈折した光は放射状に広がり線路と沿線の住宅の間の狭い道に列車の黒い影を投影した。
水色の屋根に覆われたプラットホームの二番線に列車が進入すると、車掌のアナウンスが片瀬江ノ島駅への到着を乗客達に知らせた。