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世界は俺にやさしくあれ  作者: Azum@θ
第一章 基盤編 〜安定まで〜
6/9

基盤Ⅴ 食事処〝食中毒〟


エルナをパーティーメンバー(仮)にすることで俺はこの街の市民権を得た。

これさえあれば住居を借りれる。俺の第一の目標達成間近だ。

やはりワクワクする気持ちを抑えられない。



俺は受付嬢に2倍の登録料金を払った。

まずい。だいぶ財布への致命傷だ。ここにくるまでに貯めてきた貯金は殆ど壊滅状態。

エルナに払う分あるかな……?


……まぁいっか。なんとかなるっしょ。



受付嬢に市民票をもらった流れで俺はもう一度尋ねる。



「ここらでいい物件ないですかね?希望は出来るだけ安い賃貸ですが……」


「ああ。それならいい物件がありますよ」


…。俺は知っている。目の前で屈託のない営業スマイルをしているがこれは裏がある……と。

こんなふうにスムーズにことが進むと俺はつい疑心暗鬼になってしまう。

かなしいなぁ。



俺の考えなどよそに、受付嬢は教えてくれる。


「この総合ギルドを出て右に向かって二つめの角を曲がって行き当たりまで行ってそこから左に……」


と、ここまで喋っておいて急に止まった。

言葉からしてまで目的地まで着いてないと思うが…?


「まぁとりあえず変な名前の料理屋を探してください」


「諦めんな」


ホントにこの受付嬢大丈夫かと心配になる。




    △▼△▼△▼△


「ここ……か?」


俺(withエルナ)は数時間彷徨った末、ようやくそれらしい店に辿り着いた。

あの受付嬢が言っていた特徴が合致するのはここだけなんだが……。


「うっわー。酷い名前ですねー」


「〝食事処:食中毒〟……なんちゅう名前や」


いや常識的に考えておかしいだろ。この名前。エルナも同じ意見だ。

いやだって飯屋に絶対あってはいけない言葉、堂々の第一位だろ、あれ。

まぁ、おかげで見つけやすかったんだけどさ……。



俺は複雑な心境で目の前の建物を見上げる。


外見はそこそこ綺麗にまとまっている。木でできた壁や屋根は、落ち着いた色合いで料理屋らしさを醸し出している。

これで名前さえまともならなぁ……。



とりあえず入ってみるか。


    △▼△▼△▼△


「いらっしゃいませー」


俺が片引き戸をあけると、挨拶が降り注ぐ。

といっても声の主は一人だ。


中を見ると、数十個の机と椅子のペア。どれも綺麗な状態でまさに〝飲食店〟だ。

これで名前さえ……(定期)


奥から出てきたのは一人の少女だ。和服姿で長い緑色の髪を後ろに括っており、清潔感がある。

おそらく店番か何かだろう。

俺は総合ギルドで伝え聞いたことをそのまま伝える。


「あのー。ここで部屋を貸してるって聞いたんですが……」


「ああ!そちらのほうでしたか!承りました。少々お待ちください」


そういってそそくさと離れていった。

彼女が離れている間、エルナが俺の裾を掴んで話しかけてくる。


「あのー。いつ払ってくれるんですか?」


やべ。存在忘れていた。

今すぐにでも借金の一部を払ってやりたいが、まだ家賃が判明していない。

そのままの状態で払ってしまって家賃の分が足りなくなってしまったら元も子もない。

故にしばし待ってもらおう。


「んぐぅ……。わかりました…」


なんとか説得できた。よかったよかった。


「お待たせしましたー!お待たせしましたかもしれません!」


と、そこでどこかで聞いたようなセリフをはきながら戻ってきた。

手には書類みたいなのを抱えている。


「えーとですね…。部屋は全て空室なので好きなところを選べますがどこがいいですか?」


ん?全て空室…?

妙だな、と俺の〝勘〟がそう騒いでいる。

ここは割と総合ギルドに近い立地。一等地だ。

なのに全て空室だと……?

と、ここで俺は総合ギルドで俺を送り出す瞬間の受付嬢の顔が思い浮かぶ。

あの顔はまるで「ふぅ。厄介な物件だけどようやく一つ埋まったわ」とでもいいたげな顔だ。


……。



絶対ワケありじゃん!!!!


「あ、じゃあいちばん奥の部屋で」


「了解しました。それでは敷金などの話に関しましては、実際に部屋の方でお話しいたしましょう」


俺は1番奥の部屋を選んだ。

理由?それは一回の食堂から出来るだけ離れるためだよ!

まだ確信はできないが〝あの食堂〟には何かある。

それも俺に害をなすような……。



とりあえず部屋を見てみよう。




    △▼△▼△▼△


「ほーう…」


そこそこの部屋だ。多少シミや汚れもあるが気になるほどではない。

てかそもそも俺は気にしないタイプだ。


「では改めまして。私はこの食事処:食中毒店主〝リステリア・モノサイトゲネス〟です」


「リステリア」


「はい。ですから〝リステ〟とでも好きなように呼んでください」


いたって普通のな…まえ…。だよな…?

なんか俺の記憶が正しければ……いや止めておこう。


それにしても今のところは普通だ。一体にどこに、ここを避けるような理由があるんだ?


「それでは料金ですが…」

「ああ!ちょっと待って」


俺はリステリアの話を遮った。

これから話してくれる料金の話も大切だが、もっと大切なことがある。

これが解決しないと夜も満足に眠れないのだ。


「リステ…ずっと気になってたんだが、なんでこの店の名前って〝食中毒〟って名前なんだ?」


言った。言ってしまった。禁断の質問。

ずっと聞きたかった。だが聞いたらやばい回答が返ってきそう、でも気になる。俺の心はずっとその論題で議論していたがようやく結論が出た。

故にタイミングを見計らいようやく聞けた。


「……それはですね。私の料理。つまり〝食〟に病みつきになるくらい……中毒になるくらい好きになってほしいという意味でつけました⭐︎」


……。いや用途違うだろ!?何「☆」で誤魔化してんの!?

真意はわかったがなんか使い方違くないか?

もっとこう他にあるだろ……。「病みつき」とかさ……。


……もしかしたらこのアホさ加減が敬遠される理由か?

アホはエルナだけでお腹いっぱいだぞ。


……あ。エルナ置き去りにしちゃった。

おそらく彼女は俺に料金を払ってくれるまで待ってくれるだろうな。

うしうし。払ってやっかぁ〜



    △▼△▼△▼△


「かんぱーい!」


「わはははは!」


ちなみにだが俺はまだエルナに借金肩代わりの報酬を払ってない。

あのあと、色々あって部屋を無事借りれた俺は祝いと称して、エルナと俺の新しい部屋で祝賀会を開いている。



少し遠くにある飲食店からわざわざデリバリーしたのだ。


……え?なんで一階の食堂を使わないかって?

なんか本能がいってくるんだ。「使うな」って。


「いやー!今日はいい日ですね!」


「わはは!そうだろうそうだろう!嫌なことなんか忘れて食いまくるぞ!」


「賛成です!」


宴会は深夜まで及んだ。

それはそれは明るくて楽しい宴会だったそうだ。



                                 happy end(嘘)










二人は忘れていた……。

エルナの借金を待ってくれるのは〝今日まで〟ということに……。

リステリア•モノサイトゲネス……?はてどっかで聞いたことがあるような?

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