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世界は俺にやさしくあれ  作者: Azum@θ
第一章 基盤編 〜安定まで〜
5/9

基盤Ⅳ 仲間(期限付き)


参ったな〜。まさかの出来事の連続だ。

事の顛末はこうだ。

俺が今、住もうとしている街アルカトラズ。ここに住むためには、魔獣狩りなどをする人ーー狩人(ハンター)に登録することが必須なのだ。そこまではいい。問題はもう一つの規則。


なんと狩人に登録するためには二人以上でパーティーをつくる必要があると言うのだ。



この街に来たばかりの俺には仲間や友達と呼べる人はいない。……え?すぐに友達を作ってパーティーを組めばいいだって?HAHAHAばかだなぁ。俺にそんな社交性があると思ったら大間違いだぞ。



だからと言って諦めたワケではない。一応、パーティーメンバーを探そうと思い受付から離れる。

そして仲間にできそうな奴を探す。


……。

…、



なんということだ。もう既にパーティーが出来上がっているではないか。

一人でいる奴なんていない。みんながみんな、仲良く話しており俺が入り込む余地はない。


……なんだろう、この光景。どっかで見たことがある。


ああ、思い出した。俺の地獄の学生生活だ。



    △▼△▼△▼△


入学早々、俺は出遅れた。

教室の隅っこで本を読み(巷で噂のレフトノベル)誰か話しかけてくれないかとそわそわしていた。

もちろん、こんな奥手な奴にはほとんどの人が話しかけないのは目に見えている。


だってそうだろう。

本を読んでるいうことは自らの世界に閉じこもっていること。周りからしたら話しかけづらいのだ。


……やがて時が過ぎ、舞台は二学期へ。

この時期になっても話しかけられないことに疑問を持った俺はある一つの作戦に出た。


そう、それは趣味の用品を持っていくことだ。

この時期俺はひたすらに剣術を鍛えていた

そのため家には無骨な大剣が数本散乱していた。……そう、それをこれみよがしに学校に持っていったのだ。

かつての俺の作戦としては、剣術についての趣味が合う奴が話しかけてくれると踏んだのだ。


それでも結果は変わらない。

開幕スタートダッシュに遅れた俺は惨めな気分で重い大剣を背負って学校へといっていた。


3学期に入り……お……、が…こ


ザザザ……ザ…ザザ



……。



    △▼△▼△▼△



ぷはっっっ!

嫌な思い出を思い出してしまった。チキショウめ。

こんなところ、今すぐに逃げ出してしまいたい衝動に駆られるがそれではホームレスだ。

忍耐。忍耐……。



んなことより仲間だ。仲間。仲間仲間仲間仲間仲間……。

いっそのことプラズマに頼んでみるか?

いや、彼にも警備員という大事な職務があるだろう。無理は言えない。


いくら俺と彼が心の友(←?)であってもだ。



俺はもう一度、総合ギルドの中を見渡し、良い人材を探す。

と、その時


「……ん?」


どこからだろう。何処からか俺を射抜くような視線を感じる。

視線の出所は分からないが、俺のことをガン見しているのが直感で分かる。

獲物を狙う猛禽類のような鋭い視線。


俺をキョロキョロと見渡し、原因を探る。


「……お」


いた。酒場の机、俺のことをガン見してくる奴と目が合った。

その正体は、先ほど酒場の中で公開謝罪をしていた間抜けな少女だ。目を見開き俺を凝視するその姿は恐怖心を覚えるほどだ。

……み、見なかったことにしよう。


「……っ」


なんだあいつ。俺が視線を動かすとゴキブリのような動きで俺の目を向けている範囲へと入り込む。

変人だ。



正直、彼女なら俺のパーティーメンバーとなってくれるのではないか……?という考えが一瞬頭を掠める。

だがそれは最終手段。あんな公開謝罪をするような奴と同じパーティーになったら何が起こるか分からない。

できる限り、彼女とパーティーになるのは避けたい。



……だが当てもないのも、又事実……。

今思いついたのだが登録だけしてあとは解散でいいのではないか?

受付の人も魔獣狩りは強制ではないと言っていたし……。うんそうしよう。

俺は覚悟を決め話しかける。




「あのー突然すいません。あ、お一人で……?

ああ!いやいや!実は俺、今パーティーメンバーを探してまして…」


俺の言葉に待ってましたといわんばかりに飛び上がる間抜け少女。そして口を開く。


「ええ!そうですね!私は暇です!いいでしょう。なって上げましょうあなたのメンバーに!」


んん?やけにあっさり決まったな。何か裏があるんじゃねぇか?

俺の考察はその数秒後、現実となる。


「……そのお礼として、私の借金を払ってくれませんか…?」


うん、知ってた。




   

    △▼△▼△▼△



「私の名前は〝エルナト〟です。語幹が悪いので略した愛称で呼ばれてます」


「うし。分かった。〝ト〟」


「なんでですか!?普通逆の〝エルナ〟でしょう!?」


この少女、否、エルナは話してみると割とおもしろい。

ツッコミも申し分ない。……いや別に俺はお笑い芸人目指しているワケではないのだ。


「それでですね!私のパーティに入れる対価として私の借金の三割……っ!いやせめて四割だけでも……!」


悲壮感と切迫感が感じられる表情でそう必死に懇願する。どうやら本当に切羽詰まっているようだ。

とりあえず話はまとまった。

俺とエルナは、再度受付へ。


「あ。カモさん。仲間は見つかりましたか?」


「もうはっきり言い切ってんじゃねぇか」


そういいながら俺は隣のエルナを指で示す。

まさかエルナがいるとは思わなかったのか、受付嬢は目を見開いた。


「まさかあの〝伝説〟の人とは……珍しい人を連れてきましたね」


「ん?伝説ってなんだ?」


まさかこいつはそんな凄い奴なのか……?俺は受付嬢に尋ねた。

受付嬢は俺に顔を近づけ小声で、


「ーーいえ、そうではなくてですね、彼女はこの街で指折りのカモーー詐欺師にとってはこの上ない存在で有名な人なのです。

賭け事挑んでも大体イカサマやられ借金は増え、たまに買い物してきたかと思いきやぼったくり商品や情報教材だったり……。

あなたが思ってる以上の〝逸材〟ですよ」


「……」


言葉が出ない。間抜けだとは知っていたがまさかここまでとは……。

ま、まぁ!登録さえすればこっちのもの!あとはとんずらこいてやるぜ!


「あ、ちなみにですけど、登録料も2倍ですからね」


どうやらカモにされてるのは俺のほうだった。

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