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世界は俺にやさしくあれ  作者: Azum@θ
第一章 基盤編 〜安定まで〜
1/9

基盤0 はじめに


ーーあ。

ここはどこだろう、というのがヒランのたった一つの感想だった。

気を許せば自分が誰だかすらも忘れてしまうような不安定な状態、そんな不快感を伴う状況にいた。

ゆらゆらと波に漂っているような摩訶不思議な状態ーー半ば自暴自棄でその身を委ねていた。


死。死。

死がそこに迫っている。ただそれだけがはっきり分かった。その〝死〟という概念はヒランにギリギリまで顔を近づけ生臭い鼻息があたるようなそんな距離感。まるで「いつでもお前の命は刈り取れる」と言われているようなものだった。



ーー逃れられない。決して目を背けることすらもできない。逃げようとしてもいつの間にか後ろに控えている……そんな宿命をヒランはただ茫然と見やる。

数秒か数時間か、はたまた数年かも分からない時間、ヒランは悟った。

……ああ、遂にやってきた。



ーー死が。


死が迫っていると同時、ヒランの体の中である変化が起きた。

細胞が根幹から作り直され、構築される。常人では到達することはないだろう神の御業による境地。

死にたくない、そんな一心で作り出される()()はたった一つの固有能力(スキル)だったのだ。



    △▼△▼△▼△


スキルーーそれは時折人々が手に入れることができる人智を超えた超越的な力。

今の時代、頂点に君臨するもののほとんどはスキルのおかげで今の地位を手に入れたと言っても過言ではない。

だが勘違いしないでもらいたいのは、容易に手に入るワケではないということだ。


スキルを獲得できるのはほんの一部の恵まれた人のみ。

ただ恵まれているという言葉は正しいのか、条件としてとても厳しいものがある。


条件1ーーそれは命が本当の意味で死の淵に立つことを要する。

命の灯火(ともしび)が今にも消えそうなその時、〝それ〟は目覚めるのだ。

だが、自らを傷つけることにより得ることはできない。自己の体は無意識のうちに絶対的なストッパーが働き、本当の死の淵に立つことはできないのだから。


条件2ーーそれは確率。圧倒的に低い絶望的な確率の網を潜り抜けることも必要なのだ。

例え、〝死〟ギリギリのラインに立ったとしても必ずしも手に入るとは限らない。むしろ、そのままぽっくり逝ってしまう人の方が多いのだ。



故に、これまで数え切れない程の数多のチャレンジャーがスキル獲得という無謀な賭けに挑んだが、そのほとんどが惨敗だった。



能力(スキル)を得たものは、その二つの絶望的に厳しい条件を満たした豪運の覇者たちが多いのだ……。



    △▼△▼△▼△

……。

…。

この俺ーースペクティブ・ヒランは、何故かスキルを手に入れている。

この世界でスキル持ちなんて両手で数えられるくらいしかいない。俺の存在自体が珍しいという事は自覚している。一応。

俺みたいな凡庸な見た目の男が持っているなんて誰も想像できないだろうな。がはは。


……いつからだろうか。物心ついた時にはもう保有していた。

誰かに教えられたわけでもないのに、その能力が在るという脈動が確かに胸に感じられていたのだ。

今こうして一人旅をしているが、何人たりとも俺がスキル持ちだって教えていない。なぜかって?それは珍し()()()からだ。



そんな俺のスキルの名は〝天界空神(ゼウス)〟。

名前だけは一丁前なこのスキル、何も知らない人々からしたら垂涎の類のもの。「いいなぁ〜」と口を揃えて言うだろう。

だが違う。スキル獲得者には、スキル獲得者にしか分からない苦悩があるのだ……。


しかも俺のスキルは最強種と称される十二なんちゃらのスキルのうちの一つなのも余計にタチが悪い。

さらにさらに!いまだに使い方が分からないというのも俺の頭を悩ませる要因の一つ。


……いや!大抵こういうのって主人公最強スキルで俺Tueeeじゃないの!?

名前だけ立派な癖に何も使えないスキルは邪魔で邪魔で仕方がないよ!


……いっそのこと質屋で買い取ってもらうことはできないのだろうか。

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