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No title時代が悪かったんだ
私の息子を名乗る少年が未来からやってきた。タイムマシーンを使ったらしい。更に、これは未来で流行している新手の自殺だと言う。過去で自分の生誕を阻止し、存在を根本から抹消する。何ともハードな自殺である。
となると、私は殺されるのだろうか?私を殺せば少年の存在は決定的になくなる。そう訊けば、少年の私に似た唇が歪んだ。
「そうしようかと思ったけど、やめたんだ」
飛び降り自殺予定者が土壇場になって我に返るような状態かな? 少年は何とも言えないシニカルな笑みを作る。
元の場所へ帰るという少年を見送った後、私は再度鍋に火を付け、グツグツと煮込みを再開した。肉と油が溶けだし、どんどん小さくなるが、大丈夫。浴槽にはまだ兄だったものがいっぱい残っているから。
血腥い家に何事も申さなかった少年を思い、なるほど、ピンと来た。この今の現状こそが少年に仕組まれたことだったのかもしれない。今の私は兄と血縁関係がないと知り、つい殺してしまったけど。もし、兄の秘密を知るのがあと10年後とかなら、まあ私は普通に、兄を愛せていただろうし。
自分の手を汚さず最小限の働きで目的を達成するなんて、確かに兄の子供に違いない。わははーと笑う私の唇の形は、やはり兄とも似ていることだし。




